四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

おなご??:2013年4月号

おなご??

『おなごが日曜にしかこれんけんそれまでおいといてや』退院を勧めたおじいちゃんからこんな言葉が返ってきました。我思う。ええっ、おなご!?奥さんいたはずだがなあ…おじいちゃん、見かけによらず元気だなあ。私も還暦を過ぎて、たいていのことには驚かなくなりましたが、若い頃にこの言葉を聞いたときにはどきどきしたものでした。年配の方は、奥さんのことをこういうことがあるのですね。今でも病室では聞くことがありますよ。

これはわからないだろう!

たいていのことには驚かなくなったと書きましたが、いまだにえっ、何?と思うことがあります。どれも、外来での1シーンです。

  1. あるおばあちゃんです。「最近調子はどうですか?」『近頃ぽんが出にくいんよ。薬を出しておくれや』…
  2. おじいちゃんのひと言です。「顔色がいいねぇ。日焼けしてますね」『わしもあんきにしとったらいかん思うてのお。仕事しだしたんよ』…
  3. これもおじいちゃん。「おじいちゃん、ズボンが汚れてますよ。どうしたの?」『おお、ほんとじゃ。きしなに道がじゅるかってのお、ころんでしもうたんじゃが』…
  4. これは、中年のおばちゃん。外来を走りまわっている子どもたちへ向かって、『あんたら、そがいにつばえられん』…
  5. 診療の終わりに、「おだいじに」『だんだん』…
  6. これは岡山だったかなあ。救急外来でのこと。おばあちゃんでした。今でも顔を思い出します。「どこが痛いの?」『近頃けんびきがでてなあ。いてえが。おまけにきっぽになってしもおてのお』
  7. これは、我が奥さんが勤めている、ある病院の外来でのお話です。台風の時だったらしいです。「おじいちゃん気をつけて帰ってね」『おお。いにしにたーいってこーわい』…

きりがないのでもうやめますが、いくつわかりましたか?回答はありません。年配の方に聞いてみてください。

やっぱりいいなぁ

自分もそうですが、方言がなくなりつつあります。私は、学会などで全国を回っているせいか、いわゆる標準語に近くなっていて、誰も松山出身とは思ってくれません。高校まではここ、松山の地で育ちました。36才になってふるさとへ帰ってきました。もともと自分でも使っていたはずの言葉ですが、忘れるものなんですね。あれから25年たち、忘れていた地元の言葉を少しずつ思い出して、患者さんとお話しするときには、伊予弁がでますね。ただ、いにしにたーいってこーわいとは言わないなあ…でも、暖かいですね、地元の言葉って。

大切にしたいですね

方言を残していくグループが全国各地にあると聞きます。外国でも同じような試みがされているようです。たとえば、ハワイです。全世界から移民が押し寄せ、地元の言葉を話せる人が少なくなったそうです。そこで、元からある、いわゆる原住民の言葉を残していく試みがなされているそうです。その学校では、現地語以外を使うとバツがあるそうです。厳しいけれども、意気込みが伝わってきますね。私たちも、日常では使わないまでも、聞けばわかる、話そうと思えば話せるくらいにはなっておきたいですね。

だめ押しのひと言です

大学は岡山でしたが、古武道部に入っていました。当時の主将に呼ばれて檄を飛ばされたときのこと。『栗田っ。けけーけー』何を言っているのか全くわからず、ぼけっとしていたら…あとはご想像にまかせます(-_-;)…
(ちなみに、ここへこいと言う意味でした)

栗田 啓