四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

医者のひとりごと その八:2005年07月号

インフォームドコンセントっていったい…

インフォームドコンセントの言葉、方法は医者の数だけあると言ってもいいくらい少しずつ違います。言っていることの本質に違いはないのですが、もっともあったら大変ですが・・、かける時間、詳しさの程度、たとえ話、言葉遣いの違いなど様々です。かかる時間はほんと、さまざまですね。詳しいのはいいのかもしれませんが、2時間近くの長丁場になると患者さんも疲れてしまいますよね。情報をできるだけ伝えてあげようと一生懸命なのです。わかってあげてください。でも、逆に医者もわからないとね。かとおもうと、説明用紙になにやら書きながら、機関銃のように息つく暇なくしゃべって説明する医者もいます。患者さんの話では、そのときは分かったつもりだったけど、後で見直すと何が書いてあるのか分からないって話も聞きますね(-_-;)。わたしが卒業したてのころは、やたら専門用語を使ってまくし立てる先輩がいましたが、いまでは受け入れられませんよね。そうそう、友達口調で話しかける医者もいますね。患者さんにとってはとても気さくでいい先生と評判がいいんだそうです。自分もやって見たいなぁ・・いやいや、わたしにはできそうもない。

時間がかかる…

話をできるだけわかりやすく、しかもできるだけ短時間ですることは至難の業です。わたしは、手術の話の場合、だいたい1時間かけますが、前にも書きましたよね、覚えていますか、途中で居眠りを始めた患者さんのこと。わたしの中ではあっという間に1時間がたっているのですよ。そんなに退屈だったのかなぁ。以前、こんな医者仲間がいましたよ。とても話し好きなのです。インフォームドコンセントの時もしかりです。わかりやすくと思ってのことと思いますが、同じ話の内容が何度も繰り返されます。そのうち患者さんも明らかに話を切り上げたがっているのがまわりにも伝わってきます。腰も浮き気味です。「さて・・」と彼。「さっきのことですが…」浮きかけていた腰をまたおろさざるを得ませんでした。居眠りをしてしまった方は極端としても、はて、自分が逆に説明を受ける立場になったときにどうなんだろう?1時間集中できるかなぁ。

患者さんに救われる

最近は、ご自分で治療に参加してるぞっていう意気込みの方を多く見かけるようになってきました。外来でお薬の処方をします。一日に飲む量を増やすことがありますし、また、飲む間隔を変えることがあります。わたし自身は、ちゃんと説明したつもりになっています。もちろん、しないはずはないのですが、次の外来日に患者さん曰く、「先生、この前薬の量が変わっとったけど、間違いじゃと思って前のとおりに飲んどったょ。」「はあ・・」もう一度仕切り直しです。そうかと思うと、その日のうちに電話があることもあります。「先生、薬の量が変わっとるし、日にちも足りんがな。」「いやいや、話したように、一日の量と、飲む日が変わったのょ。」「そうじゃったかいの。」えっ…言ったはずだけどなあ、言うの忘れてたかなぁ(-_-;)。
100%信用しないでくださいね。でも、99%ぐらいは信用してほしいなぁ。

がんばる

人の命を時として奪ってしまうがん。一つのドラマがあります。仲のよいご夫婦でした。ご主人が胃がんで手術をうけました。術後、外来で診察室に入ってこられるときに、いつもコロンの香りが印象的でした。身だしなみってこんなふうにするものなんだ。でも、何年かたってがんが再発してしまいました。抗がん剤の治療を始めました。診察室に入ってくるのは彼一人でしたが、いつも奥さんが一緒に来られていたようです。つらいことも多かったと思います。一緒に笑い、泣き、見守り、励まして、二人で戦っておられました。なくなられてから奥さんがお手紙に書いてくださいました。ある日奥さんに言ったそうです。「まだ死にたくない。」この前にも書きましたが、この一言もすべてを物語っていますよね。最近とみに涙もろくなっているせいもあるのですが、涙が止まりませんでした。こんなにも憎いがん、なんとかやっつけたい。

栗田 啓