四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

医者のひとりごと その一:2003年10月号

インフォームドコンセントっていったい…

ある日の午後、胃がんの患者さんとご家族にこれからの手術についてお話をしていたときのこと。イラストを交えていろんな情報をお伝えしたつもりでした。「あなたのがんは、すでに胃の壁を破っておなかの中に顔をのぞかせている状態ですが、きちんとした手術をすれば十分に治る可能性を持っています。それには、胃を三分の二ほど切り取って…云々。」1時間ほどたったでしょうか、お話を聞く側に疲れ?がみえはじめたころ、「だいたいわかっていただけましたか。」
患者さん曰く、「それでワシの病気はがんですかいの」「えっ」「むずかしい話は聞いてもわからんけに、先生におまかせしますわい」「はあ」ああ、そうか。がんとはなんぞやからはじめないといけなかったのだなあ…反省です。

時間がかかる?

治療のお話には時間がかかります。最近は、治療の方法が増えてきているのです。たとえば、食道がんを例にとりますと、一昔前までは手術が天下の宝刀で、よっぽど進んだ状態でない限り手術をおすすめしていました。ところが、最近、海外発信のエビデンス(科学的に裏付けられた証拠を持った治療法)で、全部が全部ではありませんが、手術も、放射線と抗がん剤を使った治療も治る可能性に違いがないのではないかといった見方が出てきているのです。医療サイドとしては、両方の立場からお話をする義務が出てきました。私たちの手間はまだよしとしても、患者さんサイドは大変です。ただでさえ長ーい外科の話に加えて内科からも聞かされるのですからたまったものじゃありませんよね。それに、最後には、「どちらがいいと決まっていないのであなたが選んでください」とくる。「どっちにすりゃあいいんだ…」、ごもっともです。でも、できるだけ情報をお伝えするのが私たちの努めでもあるのです。ご理解ください。

患者さんに救われる

私たちのがんセンターにはいろんながんの方がいらっしゃいます。なかでも乳がんの数は全国の病院の中でも有数です。早い病期(病気の進み具合を段階であらわしたもの)の方々がいらっしゃる一方で、中には進行した状態の方もいらっしゃいます。がんといわれて、最初のショックから複雑な過程を経て立ち直って治療を受けられるのですが、皆さん明るいのです!もちろん100パーセントではありませんが…この明るさに私たちは救われるのです。とかくしめりがちな状況の中で、持ち前のバイタリティーにはほっとしますし、また、励まされるのです。カラ元気ではないと信じています。

がんばる

がんセンターでは、日々多くの方が治療を受けていらっしゃいます。とにかくがんばっているのです。精一杯頑張っておられるのに、おもわず「がんばろうね」って言ってしまい、はっとすることがあります。そうだ、いまも精一杯頑張っているのになんて言いぐさだと、言ったあとで反省しきりです。力が及ばないことに地団駄を踏んでいる自分が歯がゆく、思わず言葉になっているのかもしれません。ごめんなさい。これ以上がんばりなさいなんて酷ですね。またまた反省です。

栗田 啓