四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

29年4月 第59号がんセンターニュース

まえがき

伝統とは変革の連鎖である

2017年(平成29年)4月から谷水が栗田啓先生の後を継いで四国がんセンターの院長職を拝命いたしました。身の引き締まる思いです。先日院長就任を前に職員に私の大切にしたい価値観と実現したい医療について表明しました。

1)職員の元気が患者さんの元気・安心の前提である

2)四国がんセンターは圧倒的に質の高いがん医療を実現する

職員が元気でなければ、健全な組織とはいえません。昨今の医療環境は大変厳しく、独立採算で良好な経営を維持してきた四国がんセンターも例外ではなくなりつつあります。しかしだからといって職員の志気が低下しては患者さんにも決してよい影響はないでしょう。まずは職員の志気を高め、患者さんが一層元気になれるよう、安心できるよう院長が先頭に立って尽力することを約束しました。

四国がんセンターは愛媛県がん診療連携拠点病院として地域のがん医療の質の向上と均てん化※1に貢献してきました。しかし本来四国がんセンターには圧倒的に質の高いがん医療を提供しているという自負があります。「圧倒的な質」こそが四国がんセンターの存在意義であり、果たすべき使命です。圧倒的ながん医療の実現のために職員1人1人は何ができるか、新たに何をすべきか、見直すべき余地はないか。均てん化が進んだ今こそもう一度、四国がんセンターが果たすべき「圧倒的な質」とは何か、改めて自らに問い直して欲しいといいました。

伝統とは変革の連鎖です。貞観政要(呉兢、守屋洋訳他)※2と三国志(宮城谷昌光他)※3をバイブルとし、「方法の原理」(西條剛央)※4を魔法の杖として院長が率先し、私たちがよしとする「圧倒的ながん医療の質」を追求していきます。2017年(平成29年)度からの新執行部は院長 谷水正人、副院長 山下素弘、臨床研究センター長 石井浩、特命副院長 河村進、統括診療部長 橋根勝義、看護部長 吉田真弓、事務部長 上甲尚史、薬剤部長 山本宏、です。がんを知り、がんと向かい合い、がんに負けることのない社会の実現のために、今後とも一層のご支援、ご鞭撻のほどをお願い申し上げます。

※1 生物がひとしく雨露の恵みにうるおうようにという意味
※2 唐の2世皇帝李世民は人の諫言を聞き続けた。
※3 英雄達の栄枯盛衰、時代の流れがどうあろうとも尊厳ある生き方はできる。
※4 構造構成理論の一理論、状況が変われば方法は変わる。

(院長 谷水 正人)

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イベントレポート 「がんカフェ・がん哲学外来」が始まりました

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2017年(平成29年)2月15日に「坂の上の雲・暖だんカフェ」と題して、四国がんセンター版「がんカフェ・がん哲学外来」が患者・家族総合支援センター「暖だん」で開催されました。がん哲学外来は順天堂大学医学部の樋野興夫教授により提唱され、全国に広がっています。(http://www.gantetsugaku.org/)2016年(平成28年)7月に樋野先生をお招きして、当院でがん哲学外来の講演会を企画したところ、多数の聴講者が来られ、反響の大きさと患者さんのニーズを実感しました。そのときに愛媛県でも開催をと樋野先生に励ましをいただき、12月には樋野先生自らの教導でがん哲学外来を当院で開催できました。今回は私たちだけによる単独開催の初回です。

以前、他のがん哲学外来を見学したときのある患者さんの言葉ですが、「がんになり患者会に参加して、『これからは自分のために生きるのよ』といわれて自分中心にいろいろ試みた、しかし心が次第に萎んでいった。そんなときがんカフェに参加して、『がんになったあなたにしか出来ないことがある』といわれてハッと自分を取り戻すことができた、それからは機会があればいつも参加している。」という発言がありました。また、患者さん自らが開くがんカフェ、題して「空っぽの器」、参加するひとに充たされて成立する会があるということも知りました。

当院ではボランティアグループ「ふれ愛」の皆さんが20年に渡り活動して下さっています。その活動に患者さんといっしょにティーサービスを楽しむという定期的な会が以前から開催されていました。今回はボランティアグループ「ふれ愛」のティーサービスとのコラボレーションという形で「坂の上の雲・暖だんカフェ」をスタートさせることが出来ました。機が熟していたと思います。お寺のお坊さんにも協力者になっていただけました。今回は17名のがん体験者の方や家族の方が参加して下さいました。皆さんの生き生きとした笑顔に包まれ、参加者が同じ立場で話すことで確かに癒やしや気づきがある、自分にしかできないことは何かを考えたり、活力を取り戻したりできるということを実感しました。今回の開催は愛媛新聞にも掲載されました。
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201702237517

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「坂の上の雲・暖だんカフェ」はこの4月から毎月1回の定期開催を予定しています。同時にがん哲学外来(個別相談)の機会も(毎回とはいかないかもしれませんが)用意します。次回は4月19日13時30分から15時です。がん患者さんとその家族、悩みを抱える人、悩みを支える人、協力・参加を申し出てくださる全ての人々を歓迎します。患者・家族総合支援センター「暖だん」のちらしやホームページからも案内しています。

愛媛県ではがん患者家族の会「おれんじの会」などピアサポーターの活動も活発です。医療者にもいいたいことが気軽に言える「がんカフェ」と医療者にはいえないことが存分に言える「町なかサロン」と様々な形があって、がん患者さんが活力を取り戻し、「がんになっても安心して暮らせる愛媛」が叶っていくとしたらこんなにうれしいことはありません。

(院長 谷水 正人)

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がん治療最前線 プレシジョン・メディシン

プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)とは、日本語にすると精密医療という意味になります。抗がん剤治療の領域では、がん細胞を遺伝子レベルで分析し、それぞれの患者さんに最適な抗がん剤を選択して治療を行うことです。

正常な細胞の遺伝子にいろいろな異常が起きてがん細胞になることが知られています。そのため、がん細胞は正常な細胞が持っている遺伝子とは異なる特有の遺伝子を持っています。細胞の設計図が書き換えられたことで、がん細胞は正常の細胞とは異なる性質を示すと考えられています。

最近、がん細胞の遺伝子を調べることで、それぞれの患者さんに適切な治療法が選択できるようになってきました。がん細胞の特定の遺伝子に異常がある人とない人では、一部の抗がん剤の効果が大きく異なることが明らかにされています。遺伝子を検査する技術は年々進歩しており、複数の遺伝子を同時に検査する技術が診療の現場にも応用されるようになってきました。日本では、SCRUM-Japan(Cancer Genome Screening Project for Individualized Medicine in Japan:産学連携全国がんゲノムスクリーニング)という、国立研究開発法人国立がん研究センターが全国の医療機関、製薬企業と協力して個別化医療を実現するために実施するがん患者の遺伝子スクリーニング事業が開始されています。肺癌や消化器癌の遺伝子異常の頻度や特徴を明らかにして、特定の遺伝子異常を標的とした臨床試験(治験)を促進することを目的としています。標的となる遺伝子異常の頻度が数%であることが多く、現時点では遺伝子検査を行っても対応する抗がん剤の臨床試験が見つからないケースがほとんどですが、短期間で薬の開発から臨床試験に移行することもあるため、時間の経過とともに新薬が開発される可能性もあります。ただし、必ずしも新薬が良い薬とは限らないため、きちんと臨床試験で検証する必要があります。

四国がんセンターはSCRUM-Japanの拠点施設としてプレシジョン・メディシンを実施できる体制を構築し、より早くより良い治療を患者さんにお届けすることを目指しています。

(消化器内科 梶原 猛史)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.35 パス認定士について

2016年(平成28年)11月24日、日本クリニカルパス学会の資格制度として第1回パス認定士33名が誕生しました。四国がんセンターからも2名が認定され、医療スタッフと連携を図りながらパスの作成・運用・管理・開発など多岐にわたり活動をしています。

今回『パス』という言葉を初めて聞いた方や、聞いたことがあるけどよく分からないという方に簡単に説明しますと『標準的な医療のスケジュールを示したもの』です。科学的根拠のもと、医師をはじめ看護師、薬剤師、栄養士、診療情報管理士など多職種が関わりながら、治療毎のスケジュール表を作っています。現在、入院される患者さんの半数以上にパスについてのパンフレットをお渡しし、治療の予定や入院生活での注意点を日めくり形式で説明しています。

私はパス認定士として働くなかで、直接ひとりひとりの患者さんに関わることは難しいですが、パンフレットを見て「治療経過がイメージできた」「日々の目標や予定などがよく分かって良かった」など、患者さんに喜んでいただくとやりがいを感じます。

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これからも安全で安心な医療の提供にむけて、『縁の下の力持ち』としてパスの推進活動に努めていきたいと思います。パンフレットについてご不明な点がありましたらいつでもお近くの医療スタッフにお声かけください。

(地域クリニカルパス開発研修室 清水 弥生)

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がんセンターだより 看護体制について

今、少子高齢者社会を迎え、医療・介護制度は大きな変化を必要とされています。また、すべての団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向かい急性期医療の確立と在宅医療の充実が求められます。今後も、地域医療構想の動向や在宅ケアの在り方について考え、取り組んでいかなければなりません。2016年(平成28年)12月には「改正がん対策基本法」が成立し、愛媛県がん診療連携拠点病院として、質の高い看護職の育成が急務であると考えます。このような状況を踏まえ、前年度、がん看護専門研修において患者さん・家族を生活者として捉え、「看護は医療と生活を結びつける役割」を骨子として、看護師が役割を果たすために身につける6つの能力を掲げました。自院の人材育成は素より、愛媛県下の看護職のがん看護実践力の向上をめざして、看護部の教育研修内容を新しく作成しました。

また、新たに愛媛県がん診療連携協議会の中にがん看護専門部会を設立。目的として「愛媛県内におけるがん看護に関わる看護師の資質向上と、がん看護実践レベルの均てん化を図る」を挙げています。

今後、この専門部会を中心として地域の拠点病院・推進病院の協力を得ながら、東中南予の医療機関、訪問看護ステーション、介護施設の看護師等が参加出来る教育環境の整備と看-看連携の強化、顔の見えるネットワーク作りを図って行きたいと思います。

看護部は専門職としての能力開発に努め、患者の視点に立った質の高い看護実践を追求し、愛媛県がん診療連携拠点病院としての自覚を持ち活動して参ります。

(看護部長 吉田 眞弓)

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お世話になって医ます iクリニック内科・呼吸器内科 愛媛県厚生連健診センター

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

iクリニック内科・呼吸器内科

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今回は、今治市のiクリニック内科・呼吸器内科を訪問させて頂きました。

院長の居倉博彦先生は1995年(平成7年)に愛媛大学をご卒業され、呼吸器専門医として呼吸器疾患を中心とした内科診療をされるだけでなく、放射線診断専門医でもあり画像診断を得意とされております。そして最新鋭の画像診断装置も導入され、同じく放射線診断専門医である居倉美穂先生と共にソフト面でもハード面でも大病院にも引けをとらない体制で質の高い画像診断が行われております。

その結果、「昨年の一年間だけでも数多くの早期肺癌を見つけ、手術を行ってもらうことができました。」というお言葉が印象的でした。

「心のこもった対話を通して、患者さんの辛さや苦しみに少しでも寄り添う」

両先生とも非常に温厚なお人柄で、日々の診療においても患者さんの訴えにしっかりと耳を傾け、気持ちに寄り添って診療されていることが想像されました。

また、クリニックの大きな窓から差し込む光や水のカーテンはとても心地よく、さらに患者さんが少しでもリラックスして検査や治療が受けられるよう随所に様々な工夫をされるなど、先生方の気配りが感じさせられました。

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居倉 博彦 院長(中)、居倉 美穂 副院長(右)
臨床試験支援室長 上月 稔幸(左)

四国がんセンターとの連携に何かご要望はありますか?

連携においても、スムーズな対応と丁寧な診療情報提供を頂いております。 また、循環器疾患を合併されている患者さんも近隣の医療機関と連携を取りながら、状態を評価した上で対応して頂けるとお伺いし、心強く感じました。

地域の方々が安心して過ごせるよう、患者さんにとって理想の医療を実践されていることを感じさせられました。当院も居倉先生の診療姿勢に応えられるよう努力して参りますので、今後とも宜しくお願いします。

(臨床試験支援室長 上月 稔幸)


愛媛県厚生連健診センター

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今回は「予防は治療に勝る」を掲げて長く地域の健康づくりに多大な貢献をされている愛媛県厚生連健診センターを訪問し、センター長の山泉雅光先生にお話を伺いました。当院とは電車で2駅、車で8分程度と距離が近く、乳腺・肺・消化器と多くご紹介頂いています。

施設の特徴について

1958年(昭和33年)度から巡回診療を開始した共済連の福祉活動を前身とし1975年(昭和50年)に厚生連として独立され、愛媛県内を島嶼部を含め広く巡回健診をされています。乳がんデジタル検診車や肺がんCT検診車などにて今でも泊りがけになることもあるそうです。施設での健診として人間ドックにも力を入れておられ、なんとその日のうちに検査結果を聞いて帰るスケジュールとなっていました。ご紹介の迅速さの謎が解けると共にその意気込みを感じました。またドックではニーズに即して、乳がん検査は乳腺超音波検査を胃がん検査は経口・経鼻内視鏡検査をオプションとして選べるようにされていました。

当院との連携に関して

当院が掘之内から梅本に移転して近くなり、紹介し易くなったと仰って頂きました。紹介状の作成が難しい市町村検診要精査の方などは、ご本人から電話で問い合わせがあれば当院のご予約をお取りできる現状をお伝えしました。

 img_20170502_4.jpg愛媛県厚生連健診センター 山泉 雅光 センター長(右)
乳腺科医長 高橋 三奈(左)

先生ご自身の事について教えて下さい

八幡浜のご出身、愛媛大学放射線科医局で愛大生時代はテニスをされていたそうですが、今は専ら家庭菜園を愉しんでおられる様です。

最後にお忙しい中施設内も案内して頂きました。2007年(平成19年)に建てられた人間ドック棟はゆったりとくつろげる空間で、調理実習室やトレーニングルームもあり、セミナーや健康まつりなど楽しく健康管理に取り組める工夫がなされていました。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

(乳腺科医長 高橋 三奈)

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診療科紹介 頭頸科・甲状腺腫瘍科

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頭頸科・甲状腺腫瘍科は頭頸部領域に発生するがん(舌・口腔がん・咽頭がん・喉頭がん・唾液腺がん・甲状腺がんなど)の治療に取り組んでいる科です。

頭頸部がんの最適な治療法は発生部位・組織型・進行度によって様々です。

当科では手術、高精度の放射線治療(IMRT:強度変調放射線治療)、分子標的薬治療(EGFR阻害剤やTKI拮抗剤)や免疫チェックポイント阻害剤(臨床治験段階)などの治療法のなかから最善の選択をして、チーム一丸となって頭頸部がん治療に取り組んでいます。

診療においてはとくに以下の【3つの柱】を大切にしています。

まず【常に最新・最良の治療をめざす情報力】です。

がん治療の世界は近年、新薬の導入や新しい治療法の開発により日進月歩です。

その中でどの治療法が最良かを常に検証していかなければなりません。当科は四国で唯一のJCOG(日本臨床腫瘍グループ)頭頸部グループのコアメンバーとして日本の頭頸部癌において標準治療の確立やガイドライン作成に携わっています。また、新薬の臨床治験に参画し、次世代の治療の確立と検証に力を注いでいます。

次に【がん治療への専門的なチーム力】です。今は二人に一人ががんになる時代です。がんになった方には仕事・家族がおられ、様々な事情をかかえています。がん治療を継続する上で、スタッフ全員がそれぞれ専門家の視点からお役に立てるように努力しています。複雑な治療を要する頭頸部疾患を扱うためには、形成外科医や歯科医、腫瘍内科医、放射線科医など他の専門医との密接な協力関係が大切です。当科では治療初期から口腔ケアや栄養管理・疼痛管理・がんリハビリ・感染症対策などを積極的に導入し、合併症の軽減と治療の完遂に努めています。循環器疾患や脳血管疾患など当院にない分野のケアが必要な場合には多くの専門の先生方や御施設と密に連携を取りながら治療を進めています。

最後に【圧倒的な技術力の追求】です。手術のクオリティは厳しい修練や長い臨床現場で培ってきた経験値がものを言います。確立された手術法に最新の技術を融合させていく創意工夫も大切です。質の高い頭頸部外科医として、日々精進を重ねていくことをスタッフ一同が肝に命じています。

今後も頭頸部がん・甲状腺がん治療のスペシャリストとして、地域の皆様に信頼される医療を目指して参りますのでどうぞよろしくお願いいたします。

(医長:門田伸也 医師:橋本香里 花川浩之 岡愛子)

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