四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

28年7月 第56号がんセンターニュース

まえがき

患者・家族総合支援センター「暖だん」設立3周年を迎えて

2006年(平成18年)のがん対策基本法の成立以来、患者視点の医療対策が取り上げられるようになりました。がん対策推進基本計画に謳われている「がんと診断された時からの緩和ケア」、「すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の向上」、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」はがん患者と国民の声が反映されて掲げられたものです。がん診療連携拠点病院の指定要件にはそれらの趣旨が大きく反映されています。当院は愛媛県がん診療連携拠点病院ですが、がん医療を担う病院はがんの診断・治療の成績向上や生存率の改善に専念するだけでは済まされません。多様化する患者ニーズに応えるために、私たち医療関係者・病院に何ができるかが問われています。  

四国がんセンターに併設された患者家族総合支援センター「暖だん」(以下、同センター)は2011年(平成23年度)地域医療再生特例交付金のモデル事業として立ち上がり、2016年(平成28年)6月には設立3周年を迎えました。常設の憩いの場やがん関連図書を備えるだけでなく、患者サロン(語り合いサロン、家族サロン、ナイトサロン、女子会/男子会サロン等)やウィッグ・乳がん術後補正下着の展示・相談会などのアピアランスケア支援、がん患者のチャイルドケアサポートなど、多くの患者支援イベントがボランティアの助けも借りて開催されています。患者図書サービスでは、県立図書館との共同イベント開催にも取り組んでいます。利用者/参加者の反応からはニーズの高さを実感しています。同センターを拠点に始まった就職支援事業では、労働局・ハローワーク、商工会議所・中小企業同友会や各種企業の人事担当者との連携が生まれました。今まで交流のなかったさまざまな職域との連携共同は地域コミュニティの再生、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の再構築です。社会保障制度改革国民会議報告書(2015年8月6日)にある「21世紀型のコミュニティの再生」に私たちは病院の存在が深く関わっていることを実感しています。

私たちの同センターは他の病院や地方自治体、マスコミ等から多くの見学/取材を受けてきました。当院は幸いに病院長の英断と看護部・事務部の協力により同センターに専従職員を配置できました。職員の専任配置がなければこの3年間の活動はありえなかったでしょう。実は全国的にも多くの病院で患者支援の活動が行われていますが、医師や看護師は本来の診療業務に追加されたボランティア活動を強いられ、医療現場の疲弊は深刻です。患者支援の活動は実は収益がほとんどありません。そのため全国的にはまだ同様の施設の広がりはほとんど見られません。医療環境の厳しさを実感するとともに私たちの使命の重要性を改めて認識しています。おそらく将来的には診療報酬制度を補完する医療政策上の財政支援やNPOなどの形でソーシャルキャピタル化されていくだろうと予想されます。政治の問題であり、すこし時間がかかると思われます。がん医療は社会保障制度改革の方向性や地域医療構想を先行してきました。四国がんセンターの使命は大きいと自覚し、今後もいろいろな可能性に果敢に挑戦していきたいと思っております、乞うご期待。

(副院長 患者・家族総合支援センター長 谷水 正人)

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がん治療最前線 胃がん

胃がんの薬物療法(化学療法)には、手術と組み合わせて治癒の確率を高めるために行われる「補助化学療法」と、手術による治癒が難しい状況で、延命や症状コントロール目的で行われる「緩和的化学療法」があります。

緩和的化学療法に対して有効性が示された薬剤は年々増えてきています。フルオロピリミジン系薬剤(フルオロウラシル、S-1、カペシタビンなど)、プラチナ系薬剤(シスプラチン、オキサリプラチン)、タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)、塩酸イリノテカンなどの薬剤を、単独または組み合わせて一次、二次、三次治療と順に用いて治療することで予後が改善してきました。

最近になり、がん細胞を増殖に関わる多くの分子が解明され、それらの分子を抑制する分子標的治療薬が開発され、治療成績が著明に改善してきています。胃がんの10~20%では、「HER2」と呼ばれる分子が、がん細胞の増殖に関与しています。HER2を抑える薬剤であるトラスツズマブの一次治療における有効性が示されました。がん細胞は、血管をたくさん引き込んでその増殖速度を早めます。血管を新しく造るのに関わる血管増殖因子受容体「VGFR」という分子を抑えることで、多くのがんで増殖を抑え、予後の改善が期待できることが分かってきました。胃がんにおいては、ラムシルマブという薬剤が二次治療においてその有効性が示され、使用できるようになりました。

最近になり、免疫チェックポイント阻害剤という新規の治療薬が注目されています。はたらきが弱くなっている自身のリンパ球を再び活性化させてがん細胞を攻撃させる薬剤で、悪性黒色腫や肺がんではその有効性が示されています。胃がんも含めた多くのがんで大規模な治験が行われております。良好な結果が得られれば同薬剤が胃がんでも使用できる可能性があり、期待されています。

当院では、このような免疫チェックポイント阻害剤を含め多くの有望な薬剤の治験を行っておりますので、いつでもご相談ください。

(消化器内科医長 仁科 智裕)

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イベントレポート 『わたしのがんカフェ in愛媛』
がんになる前なってから “自分らしく”生き抜くために

わたしのがんカフェin愛媛

がんフォーラムや語り合いサロン等のイベントを全国的に展開しているNPO法人『わたしのがんnet』と、愛媛県がん診療連携協議会が協力し、5月21日土曜日、エミフルMASAKIで『わたしのがんカフェIn愛媛 がんになる前なってから"自分らしく"生き抜くために』を開催しました。

「がんになる前なってから」をテーマにしたトークショーが行われ、がん当事者、医療者それぞれの立場から、自分らしく生きることの大切さ、それを支える医療者の思いなどが発信されました。

また「ありがとうプロジェクトin松山」と題したワークショップも開催されました。

病気になっても、どんなときでも「ありがとう」を伝えることの意味、大切さを「ありがとうカード」の作成を通じて考えるという企画で、小さいお子様からご高齢の方まで楽しんで参加されていました。

エミフル内の別会場に、がん当事者やご家族同士が思いを話せる、語らいの場を設けました。患者会に所属しているピアサポーターさんのご協力も得て、お茶やお菓子をいただきながら和やかな雰囲気の中、お互いの苦労を労い、思いを語っていただくことができたのではないかと思います。

がん相談支援センターの出張相談では、がん専門相談員の研修をうけた看護師、ソーシャルワーカーがじっくりとご相談をお受けしました。わざわざ遠方からご相談にいらしてくださった方、相談のあと涙を流される方もいらして、「来てよかった」というお声も聞くことができました。

当日の様子

普段は白衣の私たちですが、みかん色のおそろいのハッピを着て、がん相談支援センターのチラシを配り、広報活動にも努めました。このような機会を通じて少しでも多くの方にがん相談支援センターを知っていただき、もしご自身や大切な人ががんになったとき、誰かに相談したいときに思い出してもらえるとうれしいと思います。

今後も機会があればさまざまなイベントを通じ、情報発信をしていきたいと思います。

(がん相談支援センター MSW 大西 明子)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.32 認定がん専門相談員

こんにちは、「認定がん専門相談員」です。

この認定は、2015年(平成27年)度より国立がん研究センターで開始された認定事業(2015年度認定人数:216名)によるもので、当院でもがん相談支援センターの医療ソーシャルワーカー3名が認定を受けました。この認定事業により、患者さん、ご家族のみなさんが「科学的根拠とがん専門相談員の実践に基づく信頼できる情報提供を得ることによって、その人らしい生活や治療選択ができる」体制作りを目指しています。これだけを聞くと、すごい知識と技術をもっているイメージをもたれたと思います。しかし、まだまだ産声を上げたばかりですので、今後もがんの知識や情報を更新し、信頼される相談員を目指していきたいと思っています。
日頃は、がん相談支援センターで、入院・外来・かかりつけ病院を問わず患者さんやご家族の皆さんから窓口やお電話でご相談をお受けしています。治療に関わる相談だけにとどまらず、経済的な悩み、治療と仕事・家事との両立、治療の副作用・外見ケアなどの不安に対し、医師や看護師、臨床心理士、薬剤師、栄養士、遺伝カウンセラー等のメディカルスタッフとも連携し、チームで支援を行っています。
がん相談支援センターの窓口は、2階外来フロアAブロック受付前にあります。何から相談してよいのかわからなくても大丈夫です。是非、お気軽にご利用ください。

(医療社会事業専門員 福島 美幸)

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がんセンターだより 緩和ケアセンター紹介

みなさん緩和ケアセンターってご存知ですか?

全国どこに住んでいても「質の高いがん医療」が受けられるように、全国に厚生労働大臣が指定した都道府県がん診療連携拠点病院があります。そこでは、専門的ながん医療を受けることができ、地域のがん診療の連携協力体制が整えられています。また、がん患者さんへの相談に応じたり情報提供なども行っています。そして、全てのがん患者さんとそのご家族に対して、がんと診断された時から素早く適切な緩和ケアを切れ目なく受けることができるように緩和ケアセンターが位置づけられました。

四国がんセンターでも昨年(2015年)4月に、緩和ケアの体制を強化するためにチームや外来、病棟等の連携の要として緩和ケアセンターが開設されました。当院の緩和ケアセンターでは「がんとともに生きる人々の尊厳を大切にし、がんに伴う身体的、精神的症状の緩和に努めます。患者さんとそのご家族の地域での生活を重視した療養を支援します。地域における緩和医療の普及と向上に貢献します。」という理念の基に、緩和ケアは全ての診療科で、入院中・外来通院中にかかわらず、いつでもどこでも受けることができます。身体の苦痛などの症状や不安や悩みなどの様々なつらさを和らげ、患者さんとご家族の社会生活を含めて、その人らしく過ごしていけるようなお手伝いができるよう一緒に考えていきます。

いつでも気軽にお声がけください。

(緩和ケアセンター看護師長 中岡 初枝)

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お世話になって医ます 公益財団法人 愛媛県総合保健協会

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

公益財団法人 愛媛県総合保健協会

がん診療において、最も重要なことの一つは早期発見です。そこで、今回は県内でがん検診の中心的役割を担っている愛媛県総合保健協会を訪問し、最上博先生にお話を伺いました。最上先生は、堀之内の頃の当院で放射線診断科医長としてご活躍され、我々もご指導いただきました。

施設のあゆみ、特徴について

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結核予防会、予防医学協会、がん予防協会の健診3団体が1998年に合併し、今日に至っており、現在では愛媛県内のがん検診の約半数をカバーされているそうです。当初よりデータ管理を重視されており、肺がんのデジタル検診を他の施設に先駆けて開始、その後マンモグラフィをフルデジタル化。現在、施設内だけでなく、がん検診全車のデジタル化がなされているとのことです。

また、精度管理にも力を入れておられ、読影は開業医・勤務医の協力を得て、常勤医師が2次読影を行っているとのことで、特にマンモグラフィでの陽性反応的中率は全国で上位3本の指にはいる精度を誇っているそうです。放射線技師は女性10名、男性5名で、マンモグラフィは全て女性技師が担当されているとのことでした。

最近の動向について

がん検診の受診率は全体で25~30%前後であり、啓蒙活動の必要性を指摘しておられました。最近、芸能人の方の乳がんがマスコミで大きく報道されたことで、その後一時的に受診率が急増したとのことでした。

当院に対する要望について

当院からの返信率は高く、早くて、特に不満はないとのことです。紹介から検査までの期間をできるだけ短くしていただければよりありがたいと言うことでした。

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先生個人のことについて

毎日、約2.5kmを徒歩で通勤されているそうです。おいしいお酒を飲むためだよと謙遜されていましたが、ご自身の健康にも人一倍気をつかわれているご様子でした。

(放射線診断部長 菅原 敬文)

公益財団法人 愛媛県総合保健協会 最上 博 副診療所長(右)
放射線診断部長 菅原 敬文(左)

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診療科紹介 原発不明がん診療科

原発不明がんとは、「組織学的には明らかながんでありながら、全身検索にも関わらず原発巣が明らかにならない」腫瘍のことをいいます。頻度は全悪性腫瘍の3-5%を占め、原発巣が分からないことから、患者さんおよび家族の方に不安を与えやすいとされています。

当院においても、2014年(平成26年)5月から窓口を統一して、他施設からのご紹介も含めた原発不明がんの患者さんの受け入れと加療を行っています。この3月までの2年弱で35人の患者さんを診察していますが、当院に紹介後、本当の意味で原発が検索しきれなかった患者さんは約2割であり、当院に紹介前の他の患者さんは十分な検索がなされていない場合が多いようです。

原発巣の検索は画像診断と組織診断で行います。画像による診断では、特にPET-CT検査は原発不明がんの原発巣を探索する方法として保険適応があります。原発巣の確定診断は生検などの病理組織学的診断で行いますが、診断が付きにくい場合は、様々な免疫学的染色による追加検査を行いますし、臓器特異蛋白質の有無により、原発巣を推定する方法も試みられています。リンパ節、皮膚転移の組織生検や、胸腹水から細胞を集めて特殊な方法で処理した上で検査も行います。画像診断で予想された臨床診断が、組織診断で覆ったケースも経験し、診断の難しさを実感しています。

治療は薬物療法が中心となります。がん組織の診断の確定にこだわるのは、ある特定の組織型において、それに応じた薬物療法がよく効くというグループが存在しており、患者さんの予後改善につながる可能性があるからです。その一方、日本臨床腫瘍学会の「原発不明がん診療ガイドライン」では、原発巣の検索にも関わらず原発不明がんと判断せざるを得ない患者さんに対しては、検索開始から1か月経過した場合には、プラチナ製剤とタキサン製剤の併用化学療法を開始してもよいと記されていますが、診断が長引くために治療が遅れることを避けるためです。    

原発不明がんは、様々なスタッフが力を合わせないと、診断・治療は困難となります。当院では原発不明がん外来を2016年(平成28年)4月より開設しましたが、医療スタッフがチームを作って力を結集して、様々なケースを集積し、原発不明がんに苦しむ患者さん・家族の方たちのお役にたてる体制を築いていきたいと考えています。

(臨床研究推進部長 青儀 健二郎)

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