四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

28年4月 第55号がんセンターニュース

まえがき

ごあいさつ

2015年度から第二病棟部長を拝命しております野上です。毎年、四月になりますと当院にも多くの新人職員が入職いたします。彼らを見ていると自分が新人であった頃のことが思い出され、当時の緊張感と医療への熱い気持ちを新たにするのですが、同時に感慨深いのは様々な治療の進歩です。私が医師になったのは23年前のことで、当時は腹腔鏡や胸腔鏡も保険診療外、ましてやダビンチ手術など全く思いもしない時代でした。私は呼吸器と血液腫瘍を主に診療・研究する科に入局したのですが、当時ちょうど今でも使われている画期的な吐き気止めが一般診療で使えるようになった頃でした。学生実習で見た化学療法病棟の光景といえば、それこそバケツを抱えて嘔吐している、、といった昔の抗がん剤のイメージそのものでしたが、新しい吐き気止めで吐いている患者さんがほとんどいないというのは新米医師の当時の私には驚きでした。医療が大きく変革したことを実感した最初の出来事として良く覚えています。当時は抗がん剤治療を行うことで肺がんの平均寿命が数週間~2ヶ月程度延長する、、というのが一般的な医学的データでした。一方、血液腫瘍で白血病はもちろん今でも難しい病気ですが、当時既に化学療法の進歩で治る方がおられ、研修医であった私も(もちろん指導医の指導のおかげなのですが)治る患者さん方に出会えました。若かった私はむしろ治りにくい肺がんが治る時代が来てほしいと思い、肺がん研究の道を選びました。現在、一部の肺がんでは一般的な抗がん剤と分子標的薬の両方を使うことで年単位の寿命の延長が得られるようになり、肺がんが残った状態でも抗がん剤治療を行いながら5年・10年と過ごしておられる方もおられます。一方、最近免疫チェックポイント阻害剤という全く新しい治療薬も開発され様々ながんに効果が期待されていますが、これにも多くの副作用が報告されていますので、使用に当たっては是非とも専門の施設での使用をお勧めします。

しかし、どれだけ治療法が進歩してもやはり最も必要なことは何よりも予防です。昨年末に発表された国の『がん対策加速化プラン』でも、がん検診の受診率が低いこと、禁煙の普及率が頭打ちであることなどが指摘されていますが、これは愛媛県でも同様でむしろ肺がん検診・胃がん検診などは全国平均より受診率が低いことが報告されています。是非皆様も周りの方々への検診受診を勧めてあげてください。また、この『がん対策加速化プラン』では、標準的治療の開発・普及の遅れも指摘されています。私たち四国がんセンターは、愛媛の、そして中国・四国の中心的がん専門施設として、ますますその能力・地力を発揮し地域に貢献していきたいと考えています。慢心することなく、組織の活性化、職員の自覚や改善意識の向上などをめざし、今年度新たな病院機能評価の認定更新にも望みます。今後とも地域に根ざし、信頼の得られる高い医療を目指して、継続的に努力する四国がんセンターにご期待ください。

(第二病棟部長 野上 尚之)

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がん治療最前線 臨床研究

臨床研究とは?

臨床研究は観察研究と介入研究にわけることができます。観察研究は例えば「あさがおの観察日記」です。観察結果を記述、考察し、土の中のカリウムがあさがおの成長によい影響をあたえるかもしれないという仮説をたてる研究です。一方、介入研究(臨床試験ともいいます)は、例えばカリウムの量を変えてあさがおを育成観察し、その仮説を確認する研究です。四国がんセンターは一般の病院に比べて臨床試験をたくさん行っている病院です。

標準治療とは?

標準治療とは介入研究である臨床試験の結果に基づいて、患者さんに第一選択として勧める最高の治療のことです。標準治療という呼び名(standard therapyの和訳)から平均的な水準の治療と受け止め、コストがかかってもよいから最先端の治療を受けたいと希望する患者さんが少なくありません。これは誤解で、最先端の治療が最も優れている治療とは限りません。最先端の治療はメディアに取り上げられ、最初こそ華やかですがその後の臨床試験で期待通りの結果が得られず自然消滅することも少なくありません。

ランダム化試験とは?

ランダム化試験とは患者さんをくじ引きのように無作為に治療法を割り振り、どの治療グループの結果がよいかを比べる介入研究です。治療の優劣を現在もっとも科学的に確認できる方法で、この試験で最先端の治療が標準治療に優った場合、その最先端治療が新しい標準治療になります。治療をくじ引きのように無作為に決める研究が倫理的に妥当であるかは、医学以外の自然科学や法律家など人文・社会科学の有識者がメンバーに含まれる当院の倫理審査委員会が審査しています。ランダム化試験のような介入研究に参加するか否かは患者さんの自由意志で決められます。

治験とは?

治験とは薬事法上の製造販売承認を得る目的で行われる臨床試験であり、省令や法律に従う必要がある厳格に規制された臨床研究になります。標準治療以外のこのような治験というオプションを示すことができるのは当院の強みのひとつです。このような臨床研究により、がん治療が進歩していきます。現在の標準治療も過去の患者さんが参加してくれた臨床試験の結果の賜物です。

四国がんセンターは標準治療をどこの病院よりも上手に行い、かつ臨床研究をどこの病院よりも熱心に行っている病院です。

(臨床研究センター長 石井 浩)

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イベントレポート 『苦難をどう乗り越えるか~サンフレッチェ広島の軌跡に学ぶ~』織田秀和氏講演会から

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サンフレッチェ広島はJリーグ創設初期に優勝を飾るなど実績を残しましたが、それ以後2度の2部降格を経験するなど苦難の歴史も持っています。しかし、様々な制約を乗り越え、地方のJリーグチームとして、ポリシーを持ったチーム作りを進め、現在華々しい成果を得ています。4~5年前、高校のサッカー部の1年後輩である織田社長に松山市内のホテルで偶然出会ったとき、彼がすでに強化部長の重職にあることは知っており、私個人がサンフレッチェ広島の強化戦略に非常に興味を持っていましたので、一度患者さんや職員の前で経験をお話ししてほしいとお願いしていたことが、今回院内企画として実現した次第です。

講演では、まずチーム運営から営業収益や人件費の説明があり、決して裕福なチームではないことや、ぶれないチーム作りのポリシー(日本一の育成&普及型クラブを目指す)も示され、チームプレー重視、若手の育成に重点を置くこと、現有戦力の強化や下部組織からの引き上げに努め、補強はチームに不足するパートのみに限ること、チーム方針に合うのなら一時的に苦境に落ちいっても指導者のすげ替えはしなかったこと、チーム強化の4つのキーワードとしては、チームワーク、育成(育成力)、信念(一貫性)、我慢(継続力)を挙げていることが紹介されました。さらに新しく獲得した選手や翌日オリンピック予選で大活躍した浅野選手の注目点の紹介がありました。最も心に響いたのが、『クラブは生き続ける!』として、チームはメンバーの入れ替わりが激しいものだが、それは許容し、チームの戦略や運営方針を固めておけば、賛同するメンバーは必ず集まり、チームの強化につながっていくという話です。これは現実の組織を高いレベルで維持していくことに直結するものであり、病院スタッフやご参加の会社関係者に大いに参考になったかと思います。また地方小規模クラブとしての未来志向は病気に立ち向かおうとする患者さんやその家族の方に勇気を与えるものであったと思われます。

最後に本講演会をご快諾いただいた織田秀和サンフレッチェ広島社長と、本企画の立案・実施に参加していただいた関係諸氏に厚く御礼を申し上げます。

(臨床研究推進部長 青儀 健二郎)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.31 専門看護師

みなさんは「専門看護師」をご存知ですか?

専門看護師とは、高度化・専門分化が進む医療現場において、そのニーズに応えるために特定の専門分野の知識・技術を深めた看護師のことで、1996年に日本看護協会が定めた資格制度です。そのひとつに、私が2015年度に認定されたがん看護専門看護師があり、現在(2015年2月)、全国に656名、愛媛県に7名、当院に3名います。

がんは国民の2人に1人がかかる病気になっています。患者さんは、がんと診断された時からさまざまな不安や悩み、がんに伴う身体症状、療養場所の選択など様々な課題に直面することがあります。がん看護専門看護師は、このような課題に直面している患者さんやご家族に対して、これまで築かれてきた生活に視点をおいて、がんと共にその人らしく過ごせるような看護を提供できるように活動をしています。

私は消化器科病棟で勤務をしています。消化器がん患者さんは、病気や治療によって食べることや排泄への機能に変化が生じることがあります。患者さんはこの状況をすぐに受け入れることは困難ですが、しばらくすると、からだに合わせた食事にしたり、「がんが少しは休めと言ってたんだね」とがんを意味あるものと捉えていらっしゃいました。このように、がん看護専門看護師は患者さんやご家族ががんになったことで気づく発見や生きる力をサポートし、多職種とチームになることでさらに自分らしく過ごすことを支えていきます。みなさんががんと共に生きていける力を一緒に見出していきたいと思っていますので、いつでも声をかけてください。

(専門看護師 廣瀬 未央)

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がんセンターだより 治療を受けながら、いきいき働くために

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みなさんは、自分にとって「働くこと」がどういう意味を持つか、考えたことがありますか?

『家族を養うため』『自分の実力試し』『趣味のようなもの』『生きるための手段』『日常生活の一部』など、働く理由は人それぞれだと思います。

がんは、日本人の2人に1人が発症すると言われています。実は、がん患者さんの3割は20~64歳までの現役世代です。治療技術の進歩で、“がんは長く付き合う病”となってきましたが、治療と仕事の両立支援が追いついていないのが現状です。働く患者の3人に1人は退職に追い込まれ、労働力損失は年間1.8兆円との計算もあります。

四国がんセンターでは、『がんになっても、安心して暮らしていける愛媛』を目指して、2013年(平成25年)度より、がん患者さんの「就労」に関する支援活動を行っています。

がん患者である求職者に対しては、ハローワーク松山のナビゲーターが病院の中で直接、求人案内や履歴書の書き方、面接対策などの就職相談対応(毎週水曜日)を行っています。164名から相談を受け76名の方が就職先を見つけることができました(2013年7月~)。

また、がん患者さんやご家族には、MSW(医療ソーシャルワーカー)から医療費の負担を軽くするための公的制度に関するセミナーを定期的に開催しています。日本の公的制度は、すべてセルフサービスです。制度やしくみを知っているかどうかが大きな分かれ目になるかもしれません。その他にも、かつらやメイク、爪のお手入れ方法などのセミナーも毎月行っています。

そして、がん患者さんの職場である企業に向けては、がんを正しく知り、傷病を抱える従業員が働きやすい職場・組織作りを考えていただくための取り組みをしています。

仕事の悩みは、医療者にも無関係ではありません。仕事を続けるためにできることはたくさんあります。自分に合った働き方を私たちと一緒に探していきましょう。

※仕事に関する相談は、がん相談支援センターにご連絡ください。

         直通:089-999-1114

(患者・家族総合支援センター 池辺 琴映)

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お世話になって医ます 矢野産婦人科 ますもと内科クリニック

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

矢野産婦人科

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松山市で産婦人科診療を行っておられる矢野浩史先生を訪問しました。

矢野産婦人科ではお産と不妊治療、婦人科疾患の診療を行っており、昨年の分娩件数は819件で、県立中央病院に次ぐ2番目の件数だそうです。また不妊治療では300-400/年の体外受精を実施され、関連する腹腔鏡手術も年間50例ほど行われているそうです。当院には婦人科腫瘍に関係する疾患の患者さんをご紹介いただいております。

診療で心がけていらっしゃることはございますか

安心して治療を受けてもらうこと、安全に治療を行うこと、そしてなにより診療、治療に満足していただくこと、を心がけて日々の診療を行っておられるそうです。不妊治療で言えば、「何が何でも妊娠していただく」との心構えで診療に当たられるそうで、矢野先生の治療に対する情熱と気概が伝わってまいりました。

当院へのご要望はございますか

“がんセンター”ということで、一般の方から見ると“がんを扱う怖い病院”のイメージがあるので、そのイメージを払しょくするために市民公開講座などがんに関する情報発信を充実させたり、高齢化社会では、生活習慣病などの合併症を持った患者さんが増加しているので、それらも踏まえがん治療を支えることができる診療体制があればよりよいのでは、とのご意見をいただきました。

矢野産婦人科では10年くらい前より中四国地域では先駆けて、医学的な適応のある卵子凍結保存を行っておられるそうで、現在は愛媛県内でOncofertility(がん・生殖医療)のシステムを立ち上げに尽力されています。“がん”の診断がついた時点から治療開始前の短期間で行うため、スピードと大変デリケートな技術が必要なわけですが、若い女性の白血病や乳癌の患者さんで、希望される方は治療後の妊娠分娩の可能性が開かれます。今後この分野でも当院と連携を取って行っていきたいとのお話でした。

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矢野産婦人科 矢野 浩史 院長(右)
婦人科医長 竹原 和宏(左)

大変和やかな雰囲気の中、これから先の医療を見据え真摯に産婦人科医療に携わっていらっしゃる矢野先生の姿を拝見しました。

(婦人科医長 竹原 和宏)


ますもと内科クリニック

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今回は四国がんセンターのお近くで開業されていらっしゃる、ますもと内科クリニックの舛本俊一先生を訪問させていただきました。
 舛本先生は堀之内の頃の当院で肝胆膵内科医長としてご活躍され、我々もご指導いただきました。地域に根ざした垣根のない医療を目指されてフジグラン重信駐車場内に開業され、現在ご活躍です。


診療で心がけていらっしゃることはございますか

 気軽に診察を受けられる医院を目指して開業しました。一人でできることには限りがありますが、誠心誠意診察するように心がけています。常に患者さんにきこえるような話ができる医師を目指しています。

医院の特色はありますか

悩みの相談から消化器疾患、癌の相談、また在宅診療まで求められれば何でも対応するようにしています。平日19時まで、土曜日曜も開院していますので気軽に受診して下さい。また、かかりつけ医として24時間体制でサポートできるようにしています。患者さんが困らないよう他の医療機関とスムーズに医療連携ができるように心がけています。

ご趣味はございますか

四国遍路をまわるのが趣味です。時間があれば歩き遍路をしたいと思っていますが、なかなか叶いそうにありません。 

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ますもと内科クリニック 舛本 俊一 院長(右)
ICU医長 大田 耕司(左)

診療の合間のわずかな休憩時間にお伺いしたにもかかわらず、大変気さくに冗談も交えながらインタビューに応じていただきました。インタビュー終了時にはすでに待合室に患者さんがいらっしゃり、地域の方からとても信頼されていらっしゃる様子を垣間見ることもできました。この度は貴重なお時間を頂戴しありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(ICU医長 大田 耕司)

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診療科紹介 消化器内科

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消化器内科の消化管化学療法チームでは、主に食道・胃・大腸に出来る「がん」や消化管間質腫瘍の患者さんを対象として、化学療法(薬物療法)を中心とした治療を担当しています。4月よりスタッフ4名(仁科、梶原、中舎、日野)とレジデント1名で診療に当たっております。うち2名はがん薬物療法の専門医を取得しております。

消化管領域における薬物療法の治療成績はこの10年で劇的に改善してきました。大腸がんにおいては、切除困難であった状態が薬物療法で切除できるようになり、治癒を目指せるような症例も増えてきています。そのため、外科や放射線科と密接に協力しながらよりよい集学的な治療が行えるように努めております。

予後が改善してきた反面、薬物療法に伴う副作用対策、就労しながらの治療の継続支援も重要になっており、看護師・薬剤師・栄養士・ソーシャル・ワーカーなどのメディカルスタッフとともにチームワークをもって対応しております。

最近になり免疫チェックポイント阻害剤という新規の治療薬が注目されています。はたらきが弱くなっている自身のリンパ球を再び活性化させてがん細胞を攻撃させる薬剤で、悪性黒色腫や肺がんではその有効性が示され保険承認されています。食道がん、胃がん、一部の大腸がんにおいても大規模な治験が行われており、良好な結果が得られれば同薬剤が使用できる可能性もあり期待されています。当院では、このような免疫チェックポイント阻害剤の治験を多数行っており、いつでもご相談ください。

(消化器内科医長 仁科 智裕)

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