四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

28年10月 第57号がんセンターニュース

まえがき

昨今のリンパ浮腫治療

当院ではがん治療後のむくみ(リンパ浮腫)の治療を専門的に行っています。リンパ浮腫は主に婦人科がん、乳がん、泌尿器科がんの治療後に発症しやすく、放置しておくと手足が太くなり見た目の問題だけでなく運動障害も生じてきます。四国がんセンターでは2004年(平成16年)4月からリンパ浮腫外来を開設しており、昨年度は年間1400人(のべ人数)の患者さんを治療しました。リンパ浮腫の治療は保存的治療が主体でしたが、ここ数年でリンパ浮腫の外科治療が進化して手術治療を行う施設が増えており、当院でもこの治療を行っています。進化したリンパ浮腫の外科治療のなかで、現在その効果を認められつつある手術法がリンパ管細静脈吻合術です。リンパ節郭清術により上流でせき止められたリンパの流れを、皮下の浅いところにある直径0.5mm程度のリンパ管と直径1mm以下の細静脈を手術用顕微鏡を用いてつなぐことで静脈にバイパスし回復させる手術です。この手術が全国で普及した理由は皮膚の上からリンパ管の位置と流れを確認できる新しい検査方法インドシアニングリーン(ICG)蛍光法が開発され実用化されたことと手術用顕微鏡と手術器具の進化によるによるところが大きいと考えます。

四国4県でのリンパ浮腫診療は、古くは1983年(昭和58年)に徳島大学病院でリンパ浮腫診療用ベッド6床によるにより治療が開始されたことに始まり、その後1996年(平成8年)には同大学の関連病院に診療の場が移り治療が行われました。2000年(平成12年)には同門の医師がリンパ浮腫治療の専門クリニック(リムズ徳島クリニック)を徳島市内で開業し現在も保存的治療を中心に積極的な治療が行われています。香川県では2007年(平成19年)に香川大学形成外科でリンパ浮腫外来が開設され、高知県では2006年(平成18年)に松本デイクリニックと第一リハビリテーション病院で、2009年(平成21年)に高知医療センターでリンパ浮腫診療が開始されました。愛媛県では当院以外でも、上述の徳島大学で治療を開始された加藤逸夫教授が退官後に2000年(平成12年)から四国中央病院で、2004年(平成16年)から今治第一病院でリンパ浮腫診療を行なっていらっしゃいます。

四国4県でのリンパ浮腫標準治療の普及と啓発を目的として、2008年(平成20年)に四国リンパ浮腫治療懇話会を4県の世話人5人で立ち上げ、第1回目の懇話会を松山市の四国がんセンターで開催しました。その後毎年1回四国4県の持ち回りで開催し、今年7月には第9回目の懇話会を行うことができました。

四国がんセンターはがん専門病院の使命として、リンパ浮腫患者さんの治療を積極的に推進してまいります。

(外来部長 河村 進)

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がん治療最前線 がん検診

7月に2016年のがん統計予測が発表されたというニュースがありました。それによると今年新たにがんと診断される人は初めて100万人を超え、がんで亡くなる人も増加し37万4000人に上ると予測されています。高齢者人口の増加等の要因により、がんは増え続けています。

がんを治すためには早期発見、早期治療が欠かせません。当院では2006年より最新鋭の画像診断装置であるPET-CTを軸にしたがん検診を行っており、年間500人前後の方が受検されています。

PET-CT検査はFDGというブドウ糖に類似したお薬を注射し1時間半ほど安静にした後、20分~30分程度の撮影を行います。多くのがんはエネルギー源として糖をたくさん消費するためFDGが多く集まり、FDGから出る放射線を検出することでがんを発見することができます。同時にX線CT検査を行うことでFDGの集積部位がより明確になり、またFDGが集まりにくいがんの発見にも役立ちます。

PET-CTをがん検診に使用する利点としては、広い範囲を比較的楽に検査できること、対象となるがんの種類が多いことがあります。当院では100人に1~2人の割合でがんが見つかっており、2011年以降では45例のがんが発見されています(肺がん11例、前立腺がん9例、乳がん5例、悪性リンパ腫・甲状腺がん・大腸がん:各3例、他に膵がん・腎がん・膀胱がん・肝内胆管がん・尿管がん)。このうち約2割はPET-CT以外の検査で見つかったものです(早期胃がん、前立腺がんなど)。

このように多くの種類のがんが見つかっていますが、すべてのがんを発見できるわけではありません。またがん以外にもFDGが集まるものがあるため、がんと区別しにくいことがあります。他の検査を併用することも有効です。またPET-CTの検診としての有効性(死亡率の減少)はまだ証明されておらず、今後の課題です。

がんドックについての詳しい情報は当院のホームページやパンフレット(総合案内等にあります)で得ることができます。受検を希望される方は予約センター(電話089-999-1112)にご連絡ください。

(がん検診科医長 酒井 伸也)

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イベントレポート 『就労支援』
~がん患者さんの「働きたい‼」を応援するために~

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社会保険労務士会での講演

医療の進歩により、がん治療は大きく変化し、治療を受けながら仕事を続けることができるようになってきています。しかし、「会社に迷惑をかけてしまう」という遠慮から退職を選択してしまう方も少なくありません。

当院では、ハローワークとの協力で就職相談を2013年(平成25年)7月から行っております。開始後から2016年(平成28年)3月までに27名の方が就職されました。

また、がんになったからといってすぐに仕事を諦めることのないよう、仕事の面でどのような困り事があるのかお伺いし、問題解決できるようお手伝いすることが私たちにできることだと考えています。しかし、医療者ができることには限りがあると感じており、働くがん患者さんを取り巻く人達の理解が少しでも得られるように、今夏、県内の社会保険労務士会と明屋書店の協力を得て、就労支援セミナーを開催しました。

社会保険労務士会では、がんに関する基礎知識の講演や、がんと就労に関する映像教材を使った情報提供を行い、支援の必要性について共有しました。

明屋書店では、就労継続に対する相談場面の事例を基に、問題点や職場でできる取り組みについてグループワークを行いました。「今後もっと関心を持って取り組むべき課題と感じた」 といった前向きな感想がありました。

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明屋書店でのグループワーク

このような活動が、がん患者さんの就労継続の一助になるよう取りかかり始めたところです。患者・家族総合支援センターでは、年に2回「ナイトサロン」を開催しています。仕事帰りにお立ち寄り頂けるよう18時30分から行っています。療養体験やいろいろな気持ちを語り合える場となっており、参加者からは「仕事を持つ人にとって、励みになります」といった声もあがりました。

また、休職や職場復帰、経済的な問題など、治療と仕事の両立に向けた就労相談を受けています。仕事を続ける上で気がかりや困り事がある場合は、一人で悩まず、まずは相談にお越しください。解決の糸口を一緒に探しましょう。

(医療社会事業専門員 閏木 裕美)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.33 リンパドレナージ

リンパ浮腫は、手術や放射線治療によってリンパ液の流れが悪くなったときに起こります。がんの治療を受けた全ての患者さんが発症するわけではありませんが、一度発症すると治りにくいという特徴があります。軽いむくみであれば、自己管理しながら普段の生活を送ることができますが、重症化すると生活に支障を来すことがあります。発症後は早い時期から治療を始め、悪化を防ぐことが重要です。

当院におけるリンパ浮腫外来は、医師による保険診療と、リンパ浮腫ケアの専門的な研修を修了したセラピストによるケア外来(自費診療)で患者さんに対応しています。私たちセラピストは保険診療では医師の診察の介助や日常生活指導を行っており、ケア外来ではリンパ浮腫と診断された患者さんに対し、医師の指示に基づき、患者さん1人1人にあった弾性着衣の選定や着衣方法の説明、必要な患者さんにはバンテージ(包帯法)の指導、またMLD(マニュアルリンパドレナージ)やSLD(患者さん自身が行うシンプルリンパドレナージ)指導を行っています。またセラピストは患者さんの年齢や身体的・心理的・社会的問題、ニーズやセルフ能力を考慮して、患者さん自身が浮腫のケアが行えるよう患者さんと相談しながらケアを行っています。つらいがんの治療を乗り越え、なおリンパ浮腫を発症した患者さんの日常生活の問題や不安や苦痛が少しでも改善できるよう努めていきたいと考えています。リンパ浮腫は早期からの対応が大切です。「これはリンパ浮腫かな?」と悩んでいる方は是非リンパ浮腫外来を受診して下さい。

(医療リンパドレナージセラピスト 佐伯 光子)

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お世話になって医ます 飯尾皮フ科泌尿器科 西川内科・消化器クリニック

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

飯尾皮フ科泌尿器科

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今回は、西条市で開業されている飯尾昭三先生を訪問しました。

飯尾先生は1982年(昭和57年)に愛媛大学医学部を卒業され、25年前に現在の西条市周布に飯尾皮フ科泌尿器科として開業されました。奥様が皮膚科医であり、泌尿器科疾患、透析、皮膚科疾患に関して現在も二人三脚で日々診療に携わっておられます。開業当時は19ベッドを有する有床診療所で、経尿道的手術なども積極的に行っていたそうです。しかしその後病院を取り巻く環境も変化し、7年前から入院病床は閉鎖、外来診療と透析医療に専念することになりました。入院病床がないと不便なときもあると聞きましたが、前立腺生検は旧病床をリカバリー室に当てて日帰りで行っているそうです。前立腺がんをはじめ膀胱がんなど数多くの患者さんを当院にご紹介いただいています。

診療で心がけていらっしゃることはどのようなことですか?

地域の特色で高齢者が増加しており、PSA(前立腺特異抗原)上昇のため前立腺生検が必要な患者さんも増えています。泌尿器科の病気に関して見逃さず、基幹病院で適切な治療が受けられるように紹介しています。

当院との連携に関して何かご要望はありますか?

img_20161031.jpg 飯尾皮フ科泌尿器科 飯尾 昭三 院長(左)
第一病棟部長 橋根 勝義(右)

連携が始まった当初は、情報提供書のやりとりなど煩雑に思えましたが、現在は患者さんの方もよく理解しており、ファックス紹介もスムーズにできています。また治療後のフォローも問題ありません。

休日のゴルフが最近の日課で、そのほかにもテニスや5歳と3歳のお孫さんと遊ぶことを楽しみにしておられるとのこと、日々の診療ではほとんど動くことがないそうなので趣味をかねて健康維持につとめていらっしゃるそうです。これからもよろしくお願いします。

(第一病棟部長 橋根 勝義)


西川内科・消化器クリニック

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今回は松山市の「西川内科・消化器クリニック」を訪問し、医療連携をうまく行っていく上でのご意見を伺いました。西川先生は1993年(平成5年)1月から1999年(平成11年)9月までの約7年間、四国がんセンターの内視鏡室の責任者として勤務されておられました。私も含め当院の消化器内科医師を指導していただいた先生です。がん診療だけでなく、食道静脈瘤の治療では日本の第一人者です。日本消化器内視鏡学会の評議員であり、クリニックを開業された後にも研究にも熱心で、2008年(平成20年)には日本消化器内視鏡学会の地方会の会長も務められています。

クリニックの特徴を教えてください。

患者さんに楽に内視鏡検査を受けていただきたいとの思いで開業し、「精度の高い内視鏡を身近に」を基本理念としています。学会が推奨する体に負担をかけない手法、内視鏡の技術操作で苦痛を最小限に抑える手法で内視鏡診療をしています。上部、下部を合わせると年間1700件の検査を行っており、20例以上のがんを早期に発見しています。

四国がんセンターに期待すること及び連携時の要望はありますか?

糖尿病などの生活習慣病や循環器疾患などの併存症を持った患者さんも多く、そのような患者さんでも対応できるような体制を作って欲しいです。がん治療に関して、患者さんはがんセンターに大きく期待されていますからね。

img_20161031_2.jpg 西川内科・消化器クリニック 西川 芳之 院長(左)
消化器内科医長 仁科 智裕(右)

趣味や好きなスポーツはありますか?

サイクリングですね。早朝に近くの坂道を上がったりしています。健康維持にもすごく役に立っていますよ。それ以外にはオートバイです。山をツーリングしたりしています。

四国がんセンターでは患者さんやクリニックの先生方の期待に応えるために、よりよい連携が行えるように、院内の体制をしっかりと整えていくようにします。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(消化器内科医長 仁科 智裕)

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診療科紹介 骨軟部腫瘍・整形外科

四国がんセンターが現在の南梅本町に2006年(平成18年)に移転し、2007年(平成19年)4月から整形外科の常勤体制が開始されました。一般的に整形外科の扱う疾患では骨折などの外傷、変形性関節症、腰痛などの脊椎疾患がメジャーですが、筋肉や脂肪、骨、末梢神経などに発生した腫瘍を扱う骨軟部腫瘍という領域があります。呼吸器や消化器などの内臓に多いのは癌腫と呼ばれるがんですが、骨、筋肉、末梢神経からは肉腫という特殊ながんが発生するため、肉腫の治療は整形外科の骨軟部腫瘍領域の疾患として担当しています。このような事情は一般的には認知されていませんので、担当している疾患が判りやすいように、今回骨軟部腫瘍という言葉を診療科名に追加しました。また内臓に発生した癌腫が骨に転移したもの(骨転移癌)も骨軟部腫瘍の一つです。骨転移癌が進行した場合、疼痛や骨折、麻痺などを引き起こすことがあり、当科で対応しています。発生頻度では肉腫より骨転移癌のほうが圧倒的に多く、骨折や脊髄損傷などで障害を来した場合日常生活に多大な影響を及ぼします。当院では放射線科医、リハビリスタッフ、看護師、がん治療担当医と協力して、骨転移癌による有害事象を可能な限り防ぐため、骨転移登録システムを立ち上げ骨折や麻痺の予防に努めています。このようなシステムは全国的にも注目されており、その運用が当院で可能な要因として、当院ががんの治療に特化しているため各部署が共通の目標に向かって集中できる体制にあることが考えられます。当科受診やご相談などございましたら、当院のがん相談支援センターへお気軽にお問い合わせください。

(骨軟部腫瘍・整形外科医長 杉原 進介)

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