四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

27年4月 第51号がんセンターニュース

まえがき

愛ディア募集

昨年のノーベル物理学賞にわが国の3人の方々が輝きました。そのうちの一人は愛媛県出身の中村修二先生で、これで愛媛県からは2人目のノーベル賞受賞者を輩出したことになり、私までが胸を張って過ごしたくなるような気がします。ノーベル賞受賞のきっかけとなった天野浩教授の青色発光ダイオードの開発につながる研究エピソードにも興味深いものがあります。それは発光チップのもとになる結晶を作成する際に、機械の故障で失敗と思われた経験にも注意を向けることで偶然的にも高純度の結晶作成につながったというエピソードです。この話は抗生物質で有名なペニシリンの発見にも似ているように思います。そのように考えると、私たちの失敗からノーベル賞につながる発見がある??? とは言いませんが、日常の仕事でも注意して観察することで、意外な発見があるかも知れません。当たり前と思っていることの中に大切な事実が隠されていたエピソードとして、胃がんにおけるヘリコバクター・ピロリ菌があります。日本人の罹患するがんで最も多い胃がんの原因がピロリ菌と密接な関係があることを突き止めたのは、皮肉なことにオーストラリア人であるMarchall先生とWarren先生で、彼らはピロリ菌と胃潰瘍・胃がんの研究で2005年にノーベル医学賞を受賞しています。胃がんの手術も多い我が国で、胃の手術標本に細菌がいることは以前から指摘されていましたが、潰瘍や発がんと関係があるとはほとんど考えなかったようです。この菌の研究でピロリ菌の生態検査や治療法も開発され、胃十二指腸潰瘍や胃がんの罹患率の低下に貢献しています。(もう少し正確に言えば、胃がんの発生にはピロリ菌だけでなく塩分の多い食生活も関係があるようです。)

では日常どのようなことに気を付ければ新しい発見につながるのでしょう? そこが問題で、私のような外科医にとって、日常患者さんを診ているようでも病気のことと創部に関連したことにしか目を向けていないことがよくあります。昔恩師に『お前たちは病気を見るだけで患者さんをあまり診ていない』といわれた言葉を思い出します。患者さんの症状、表面上(画像)の病状の対応にばかり気を取られてはダメで、患者さん自身のことや家族の方々への医療者としての配慮することにも目を向けるように、という事だったのではないかと今頃になって反芻する今日この頃です。この言葉は、高血圧症や糖尿病あるいは慢性閉塞性肺疾患といった生活習慣病を治療する医師に向けた言葉と以前は思っていましたが、そうとは限りません。患者さんは入院でも外来診療時も、私たち医療者に目的とする疾患の治療を期待するとともに、療養上あるいは健康上のアドバイスを求めているのではないでしょうか? しかしながらそれぞれ専門性を持って役割分担化された診療のシステムの中で、一担当医ではうまく患者さんのニーズに答えきれない状況もあるのが現実です。でも当院では、患者家族支援事業としてがん患者サロン、がん患者さんの就労支援やチャイルド・ケア・プロジェクトなどの様々なプログラムがあり、病院全体でがん患者さんとご家族を支援したり悩みや問題点を共有する体制が整いつつあります。この体制をさらに発展充実させ、がんが見つかってからの治療やケアだけでなく、今後はがんの検診啓発や、がん予防といった方面でも様々な情報発信をしてゆく必要があるのではないかと思っています。そのためにもみんなで意見やアイ(愛)ディアを出し合ってより良いものにしていきたいものです。

(統括診療部長 山下 素弘)

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イベントレポート 2015年(平成27年)公開パス大会

最適なパスの形を目指して

2015年(平成27年)1月17日、四国がんセンターにて「最適なパスの形を目指して」をテーマに公開パス大会が開催されました。

クリニカルパスとは、診療の過程と目標を形にしたものであり、例えば、患者さん用では「治療の経過に沿った日めくりのパンフレット」も含まれます。四国がんセンターでは、パスの活用に以前より積極的に取り組んでおり、現在では四国がんセンター入院中の患者さんの半数以上に利用されていて、診療の標準化、効率化などに役立ています。今回の大会では、理想のパスを目指した活発な討論が行われました。

参加者は100名を超え、公開パス大会と名前の通り、愛媛県下はもちろん、遠くは沖縄を含む全国の病院から参加や発表があり、関心の高さがうかがわれました。また、四国がんセンター在職時にはパス活動の牽引役であった名古屋大学の舩田千秋先生による「電子カルテにおけるクリニカルパスとセットオーダーの言い点悪い点」と題した教育講演は、最新の話題が非常にわかりやすかったと好評でした。講演に引き続き行われたシンポジウムでもパスの利点に関するさまざまな意見が飛び交い、非常に活発な議論が行われました。さらには、大会の新たな試みとして、委員会活動の啓発を目的に、四国がんセンタークリニカルパス推進委員会の院内パス改善への取り組みを紹介するなど、非常に盛りだくさんの内容と成りました。

今回の大会でのトピックスの一つは、看護師が主体で運用する看護ケアパスが四国がんセンターで始動し始めたことです。今後、各部門に広がり、チーム医療の更なる質の向上が望めると期待されています。もう一つは、パスの施設間での共同開発の話題です。四国がんセンターで使用している電子パスを、松山市民病院の電子カルテシステムに導入することに成功した発表でした。これは日本初の成果であり、パス領域における新たな展開の第一歩であると感じました。

紙のカルテから電子カルテの時代に変わりました。パスについても、ニーズに合ったより良いものに改善してゆく必要があります。患者さんにとっても医療者にとっても理想となるパスを目指してゆく意味で非常に有意義な大会でした。

(クリニカルパス推進委員会副委員長 羽藤 慎二)

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がん治療最前線 整形外科・リハビリテーション科

最近、がん治療においては、生存の延長だけでなく、できるだけQOLを保ち、よりよい生活を送ることが重要視されています。

がんの進行や治療に伴い、がん患者のActivities of daily living(ADL 日常生活動作)やQuality of life(QOL 生活の質)は低下することが少なくありません。進行がんでは、ADL・QOLを維持するのは困難で、早期がんも、治療に伴う機能障害が長期間続くことがあります。この問題に対処するため、多くの病院でがんのリハビリテーションが行われるようになりました。

当院では、2011年(平成23年)4月にリハビリテーション科が設立され、理学療法士(PT)4名(2015年4月~ 5名)、作業療法士(OT)1名、言語療法士(ST)1名によりがんのリハビリが行われています。基本的には入院中の方を対象にしており、患者さんの体調に応じてベッドサイドやリハビリ室での訓練を行っています。現在、乳がんや肺がんの周術期リハ、化学療法後の廃用症候群骨転移に伴う障害に対するリハビリなどを行っています。がんによりADLが低下した患者さんは多いですが、離床をすすめることで肺炎や体力低下などの廃用症候群が予防されます。また、社会復帰を希望されている方もおられ、患者さんのニーズに合わせたリハビリを行うよう努めています。

がん治療には多職種が連携し、チーム医療を行う体制を確立することが重要です。がん患者さんのADL・QOLを向上させるためには、多くの職種が携わる必要があります。当院では、一部のがんでは、療法士が主治医や看護師と協力し、カンファレンス等を通じてお互いの意思疎通を図る取り組みを行っています。

がんのリハビリは多くの病院で行われるようになりましたが、がん患者のADLやQOLを改善する取り組みは、まだ十分とはいえません。また、エビデンスに基づいたリハビリの方法もあまり解明されていません。今後は、有効なリハビリの方針が確立されれば、がん患者さんのADL・QOLのさらなる改善が期待できると考えられます。

また、2015年(平成27年)4月より、理学療法士が、1名増えたことで、さらにより多くの患者さんのご要望に柔軟に対応できるようにして行きたいと思います。

(リハビリテーション科医師 中田 英二)

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がんセンターだより 愛媛県がん診療連携拠点病院相互訪問調査

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愛媛県のがん診療の86%はがん診療連携拠点病院(以下拠点病院)が関わり(全国地域がん登録2012年報告による)、がん診療における拠点病院の重要性が増しています。しかし、がんの診療体制は未だ患者さんやその家族の視点に立った医療体制の質的な整備が依然として不足しており、拠点病院が十分機能していないとの指摘があります。2014年(平成26年)の新たな拠点病院指定の指針では「PDCA(注1)体制の構築が求められました。それを受けて愛媛県では拠点病院(四国がんセンター、愛媛大学医学部附属病院、愛媛県立中央病院、松山赤十字病院、済生会今治病院、住友別子病院、市立宇和島病院)の相互訪問を実施しました(2014年11月から2015年2月)。今回はその報告です。

方法

県拠点の四国がんセンターともう1つの拠点病院の幹部職員(院長・看護部長・事務部長等)が組となって調査対象となる拠点病院を訪問しました。訪問先の拠点病院の幹部職員が同席する中、現場の担当者からがん診療の状況について説明を受けました(写真)。がんの標準治療計画表(クリティカルパス)の整備・適応状況、抗がん剤投与規定(レジメン)の運用状況、緩和ケアチーム活動、キャンサーボード(多職種合同症例検討会)等の現状について説明を受け、会議録・参加者名簿・カルテ記録・診療報酬算定、緩和ケアマニュアル、緩和ケアスクリーニング票、相談支援記録等を確認しました。続いてがん相談支援センター、外来化学療法室、がん登録室の現場を見学しました。最後に各病院がそれぞれ工夫しているPDCA活動について意見を交換しました。

結果

設備・人員体制の面では差がみられるものの、抗がん剤治療・放射線治療、手術治療の体制が整備され、エビデンスに基づいた標準治療(ベストプラクティス)がすべての拠点病院で実践されていることが確認できました。緩和ケアチーム活動・がん相談支援においおては、看護師・ソーシャルワーカーを中心とした精力的な取り組みがそれぞれに工夫されていました。しかし麻薬処方の体制や緩和ケアチーム対応数には拠点病院間に差が認められ、患者さんに必要な支援が行き届いていない可能性があるという指摘がありました。がん登録はすべての拠点病院で専従の診療情報管理士が複数人配置され体制が充実していました。病院のPDCA活動では、各病院で様々な質改善活動が行われていました。総じて愛媛県では拠点病院のがん診療がうまく機能していることが確認できました。訪問した施設もされた施設もそれぞれ自院の改善すべき点・伸ばすべき点を改めて認識するよい機会になりました。

今回の調査結果はがん診療連携協議会で共有・還元していく予定です。県拠点である四国がんセンターとしては愛媛県のがん診療体制を心強く思うとともに、拠点病院間の連携を進め、がん診療の向上に貢献していきたいと思います。

注1) PDCAはPlan Do Check Actのサイクルをいい、業務の質改善の方法論。


(外来部長 河村 進)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.27 臨床工学技師

皆さんは「臨床工学技師」と聞いて、病院でどういった仕事をする職種なのかと思われるのではないでしょうか。臨床工学技師とは「医師の指示のもと、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」と法で定められている国家資格です。生命維持管理装置とは、「人の呼吸、循環または代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされる装置」と定義されており、人工呼吸器や透析装置等がそれに該当します。すなわち患者さんの診断・治療に関わる様々な医療機器の専門家として、当院では私を含め現在2名体制で勤務しています。

当院における臨床工学技師の業務は多岐に渡り、患者さんに身近な輸液ポンプ等の医療機器の保守点検・整備や、手術室で使用する機器点検・操作、人工呼吸器や透析装置の操作、腹水濃縮、内視鏡治療の介助、末梢血幹細胞採取時の機器操作...等々、様々な部署で多くの診療科の診断・治療に携わります。最近では手術支援ロボットの導入に伴い「ダ・ヴィンチ手術」にも介入し始めるなど、業務は日々広がりを見せています。

近年、医療はより高度化し、それを支える医療機器も多種多様に発展しています。臨床工学技師はそのような様々な医療機器を介し、患者さんへの安心安全な医療提供に対し、チーム医療の一員として貢献しています。医療的な知識・技術に加え、工学的なアプローチで今後益々発展していく医療機器に向き合い、最良のがん医療提供の一助となれるよう日々努力しています。

(臨床工学技師 清水 俊行)

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お世話になって医ます 乳腺クリニック・道後 浦岡胃腸クリニック

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

乳腺クリニック・道後

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乳腺クリニック・道後を訪問してきました。

乳腺クリニック・道後は松山市の中心勝山町に一昨年愛媛県で初めての乳腺疾患専門クリニックとして開院されました。院長の井上博道先生は以前松山赤十字病院の乳腺外科部長として勤務されており、乳腺外科一筋の医師人生を送ってこられた方です。当然以前勤務されていた松山赤十字病院とは連携をされていますが、当院との結び付きも強く、多くの乳がん患者さんをご紹介いただいています。

当院と乳腺クリニック・道後とが密接に連携させていただくことによって、松山市街地にお住まいの患者さん方のご負担が軽くなります。

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乳腺クリニック・道後 井上博道院長(左)
がん診断・治療開発部長 大住省三(右)

当院は松山市街地から遠く、松山市街地にお住まいで車を運転されない方や、ご高齢の患者さんの通院が困難とよく言われます。そのような患者さんには、自転車や市外電車などで通院できる乳腺クリニック・道後に術後の経過観察やホルモン剤の処方をお願いさせていただくことができます。お住まいが市街地の中でなくても、松山市街地に職場がある当院通院中の患者さんの中には、受診の日に半日仕事を休んでおられる方もいらっしゃると思います。そのような方で乳腺クリニック・道後であれば、1時間程職場を離れることで通院を済ませられるという方には是非申し出ていただきたいと思います。

(がん診断・治療開発部長 大住 省三)

浦岡胃腸クリニック

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松山市石手にある浦岡胃腸クリニックを訪問して、院長の浦岡正義先生にインタビューをしてきました。浦岡院長先生は愛媛大学医学部で学位を取得された後、松山赤十字病院、松山市民病院で消化器ないかの内視鏡医として研鑽を積まれました。そして内視鏡医として更なる高みを志し、1988年(昭和63年)に現在のクリニックを開業されました。当時としては珍しい胃腸専門クリニックでしたが、現在では県内屈指の内視鏡検査数を誇るクリニックです。

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クリニックの特徴を教えてください。

1日に多いときで胃カメラ約40名と大腸カメラ約20名をしています。大腸カメラは冬に受けると検査の準備が寒くてつらいことが多いので、大腸カメラ専用の個室があります。部屋とトイレには暖房がついており、冬でも暖かくて恥ずかしい思いをせずに準備をすることができます。検査を終えた後はゆっくりと過ごしてもらえるように静かでゆったりした応接室があり、雑誌などを読みながら過ごすことが出来ます。

四国がんセンターに連携で希望することはありませんか?

患者さんががんと診断されたら、できるだけ早く四国がんセンターでの受診が出来るようにして欲しいです。患者さんはがんと診断されてとても不安ですから、一日でも早くみてもらいたいでしょうからね。

趣味や好きなスポーツはありますか?

30年ほど趣味でテニスを続けています。今も1週間に2回ほどレッスンを受けたり、気のあった仲間たちとテニスをしてリフレッシュしています。


浦岡胃腸クリニック 浦岡正義院長(左)
手術室医長 野崎功雄(右)

お忙しい中インタビューに応じていただいた院長先生は、優しく微笑みながら、静かな語り口で分かりやすく説明してくれる「信頼できる先生」という印象でした。四国がんセンターは、紹介患者さんを一日でも早く診察できるように地域連携の努力を更に続けてまいります。

(手術室医長 野崎 功雄)

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診療科紹介 病理科 がん診療を支える病理診断

身体から取り出された臓器や細胞の形態変化を肉眼や顕微鏡で観察して行う診断を病理診断、それを担当する医師を病理医と言います。がんの組織は正常から逸脱した組織です。その特性は組織構築や細胞像に現れます。それを直接調べることはがん診療においてもっとも信頼度の高い検査法です。

病理診断機能は医療に欠かせないものですが、がん診療においては特に重要です。問題になっている病変が何であるかの診断の確定、治療前の方針の決定、術中の切除断端の判定、手術標本での予後の予測、再発の検査や、タンパクや遺伝子の発現などを用いた治療効果予測などがん診療の要所々々に我々が関与しています。

当院では3人の病理専門医と7人の細胞診スクリーナーを含む9人の検査技師が病理診断を行うために働いています。直接患者さんの前に出ることはありませんが、四国がんセンターを我々が支えています。

img_20150408.jpg臓器を切って、選んだ部分をパラフィン(蝋)に埋め、薄く切って、H&E染色(赤と紫に染める)を行います。それを顕微鏡で観察し、診断します。


(病理科医長 寺本 典弘)

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