四国がんセンター

四国がんセンター広報誌がんセンターニュース

27年10月 第53号がんセンターニュース

まえがき

前立腺がんの今昔~ロボット支援手術までの道のり~

この度4月1日付で第一病棟部長に就任致しました。私は1993年4月から当四国がんセンターで泌尿器科の診療を行っています。泌尿器科での重要課題は急増する前立腺がんです。国立がん研究センターの2015年がん統計予測では、男性がんの中で前立腺がんは罹患率トップになるとされています。生涯で前立腺がんに罹患する確率は10%、10人に一人が前立腺がんになる時代なのです。前立腺がんが急増している理由には2つあります。社会の高齢化と食生活の欧米化です。さらに現在では一般的になってきた前立腺がん検診の普及もあげられます。当院に赴任してきた頃愛媛県ではまだ前立腺がん検診はありませんでした。そこで当院では1993年から前立腺がん検診を始めました。西条市から始まり、川内町や重信町など計6市町村へと拡大していきました。初めてのことばかりで各地域の保健師さんなどにお世話になりながらすすめていました。その甲斐あって現在では愛媛県下どの市町村でも前立腺がん検診を受けることができます。

前立腺がんの治療も大きな変貌を遂げ、手術に関しては開腹手術から腹腔鏡手術、さらにはロボット支援手術へと移行しています。腹腔鏡手術の歴史はまだ浅く、日本では1990年の腹腔鏡下胆嚢摘出術が初めての手術です。その後腹腔鏡は泌尿器分野でも急速に広まり、2000年には前立腺手術も開始されました。当初腹腔鏡下前立腺全摘除術は難易度の高い手術でしたが、2006年に保険適応となり一般化されるまでになりました。腹腔鏡の進化はさらに続き、ロボット支援手術の登場になります。現在ロボット支援手術が保険適応となっているのは前立腺全摘除術のみです。このことはこれまでの泌尿器科での腹腔鏡手術発展の成果だといえるでしょう。当科ではこれまでに1000例以上の前立腺全摘除術を行っており、腹腔鏡手術はもとよりロボット支援手術も安全に行うことが可能です。

さて私は1963年生まれですが、この年愛媛では第1回愛媛マラソンが開催されました。始まった頃の愛媛マラソンは競技色が強く、制限時間も4時間以内だったため参加者も700人規模の小さな大会でした。2010年の第48回大会より、市民マラソンに生まれ変わり、現在では10000人規模の大会になりました。愛媛マラソンは全国マラソン100選で常にトップクラスに選ばれるほど人気が高く、2014年の第52回大会からは抽選制になりました。2015年は運良く当選し、初めて愛媛マラソンを走ることができました。厚生労働省が「健康づくりのための運動指針2013」を発表しているように、運動は多くのがんで発がんリスクを低下させます。また、運動能力が高いと、がんのみならず心疾患の死亡リスクも低くなることから、死亡全体のリスクも低くなることが知られています。適度な運動は、健康で長生きするためのキーポイントなのです。

最後に、前立腺がんに限らず多くのがんは増加し、今や2人に1人は生涯でがんにかかると言われています。患者さんが安心して治療に専念できるよう、また入院生活が快適であるように病棟マネージメントに努めてまいります。

(第一病棟部長 橋根 勝義)

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がん治療最前線 乳がん患者さん化学療法時の脱毛予防

抗がん剤治療を受けておられる患者さん方は、様々な副作用で悩まされることが多いと思われます。以前その筆頭にあがっていたのが吐き気でした。しかし、最近では吐き気止めの薬の進歩により、吐き気で苦しむ患者さんは以前に比べて激減しました。一方、未だに解決していない問題として脱毛があります。特に女性の場合、脱毛による精神的苦痛は大きいと思われ、ある調査によると女性が抗がん剤治療で最も苦痛に感じていることは、脱毛であるとのことです。事実、脱毛を嫌って抗がん剤治療を拒否される乳癌患者さんもおられます。抗がん剤治療による治癒率向上が期待される場面で、脱毛を理由に抗がん剤治療を受けられないのは大変残念なことです。そこで、何とか脱毛を防ぐ方法がないものかと模索していたところ、主にヨーロッパで抗がん剤治療の際に使用されている脱毛予防の器械PAXMANが今年から日本で使用できるようになることを知りました。

PAXMAN

そこで、私たちは日本で最初にこの器械を購入しました。それも3台。ただし、この器械の日本での使用許可は抗がん剤治療の際の脱毛予防のものとしてではなく、頭痛の治療目的という(意味不明?)ものであるため、当院では臨床研究として乳癌患者さんを対象に希望者を募って、特に手術前後での抗がん剤治療時に使用開始することにしました。専用のキャップをかぶっていただき、抗がん剤点滴の30分前から頭皮を冷やし、抗がん剤点滴中さらに、終了後90分間頭皮を冷やし続けます。こうすることで、頭皮に流れる血液量を減らすのと、頭皮の毛根細胞の活性を落とすことにより、抗がん剤の毛根細胞に及ぼすダメージを減らせるのが狙いです。ヨーロッパでの使用結果の報告をみても、脱毛予防効果は完全なものではないようで、まだ完成した方法ではないと思われますが、ある程度の効果は確かにあるようです。ご興味のある乳癌患者さんは乳腺科の医師にご相談下さい。

(がん診断・治療開発部長 大住 省三)

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イベントレポート

真夏の夜の癒しコンサート~夕べのしらべ~

8月3日18時30分~ 当院2階待合ホールでQuartet Explloce(クァルテット・エクスプローチェ)の4人をお招きしてチェロ演奏会を行いました。真夏の日差しが照りつける暑い1日でしたが、聞き覚えのあるショパンのノクターンやバッハのシャコンヌなど、クラッシックファンでなくても聞き入るチェロの重厚な響きが暑さを圧倒するような演奏でした。入院患者さん、病院職員など約100名がチェロの演奏に聞き入りました。

Quartet Explloceの皆様はコンサートツアー中にもかかわらず、当院でのコンサートを快く引き受けてくださいました。4人の皆様はクラッシク音楽界では期待の新進気鋭の方々です。知らないということは幸せなのか、怖いことなのか??日本を代表するような素晴らしいかたがの集まりでした。あつかましく演奏会をお願いしましたが、今回はとても幸せでした。「良かった。素晴らしい!」「まさかここで、無料で聞けるとは」という声も頂きました。一緒に記念撮影をされていた患者さんもいらっしゃいました。テレビで○○交響楽団とか△△フィルハーモニー交響楽団という交響楽団を見ると、4人のお顔が拝見できるかもしれません。1時間という短い時間でしたが、本物(皆様よくご存知のアントニオ・ストラディヴァリウスも奏でられていました)に触れることができました。

いかがですか?たまには崇高でいて癒されるクラッシク音楽に包まれるのも気持ちが良いものです。まだ、聞かれたことが無い方は、だまされたと思って一度お聞きになってください。すっかりファンになるかもしれません。

最後になりましたが、快く演奏会をお引き受けくださったQuartet Explloce の4人の皆様と、ご紹介いただいたNPO法人アン・ディ・ムジークの方々に感謝をいたします。

来年も、この演奏会を開くことができ、皆様と一緒に癒しのひと時を過ごすことができれば幸いです。

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2013年末、大学時代から気心の知れた4人で結成され、explode(爆発)、積極的に様々なジャンルのプログラムを取り入れる意味でexplore(探険)、この2つの思いにローチェ(celloをもじった業界用語)を組み合わせてExplloceと命名されたそうです。

(地域医療連携係長 宮内 一恵)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.29 医学物理師

‟医学物理士”についてご存知ない方が多いのではないでしょうか?

医学物理士とは‟放射線診療が適切に行われるように医療の現場において放射線物理の専門家として関与する医療職”です。医学物理士は放射線治療に携わることが多く、その具体的な業務内容は、患者さんへの放射線治療を行う前に計画通りの適切な照射が行われることを実測して確認することや治療計画の品質管理業務や放射線治療装置の品質管理・品質保証業務を放射線治療専門技師や品質管理士と連携して行うことなどです。言わば、放射線治療を下支えする縁の下の力持ちのような存在です。私はと言えば診療放射線技師と医学物理士の業務とを平行して行っているため‟半人前の医学物理士”と言ったところでしょうか。

医学物理師

日本における医学物理士の数は837名(2015年3月31日現在)です。ちなみに米国ではその数は約5000名です。欧米諸国と比べて日本における医学物理士は人数のみならず認知度も低く、医療の現場で活躍する機会も少ないのが現状です。しかし、平成26年1月に都道府県がん診療連携拠点病院における放射線治療の診療従事者の一人に医学物理士を配置するように厚生労働省から推奨されました。それを機に大学病院クラスの施設を中心に活躍の場を獲得しています。ご存知のように四国がんセンターは都道府県がん診療連携拠点病院に指定されています。「うちには医学物理士がいますよ」と胸を張って言えるようになりたいものです。

(副診療放射線技師長 古志 和信)

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お世話になって医ます 大城外科胃腸科 おおしろ外科こもれび診療所

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

大城外科胃腸科

大城外科胃腸科外観

在宅医療でお世話になっています余戸の大城外科胃腸科を訪問してきました。大城外科胃腸科は辰雄先生のお父様が1973年(昭和48年)に開業され、2003年(平成15年)からお父様と一緒に診療されています。現在は、奥様と3人で診療されています。先生は九州大学をご卒業され、外科に入局、がん診療を中心に研鑽を積まれました。テキサス大学内科腫瘍学に留学もされています。

インタビュー時に、すでに資料を準備していただき、それを元に診療所の説明をしてくださいました。資料は第22回愛媛がん性疼痛研究会で発表された資料で、10ページにもおよぶ膨大なものでした。また、患者さんの情報を画像・検査データーの経過を含めてA4 2枚に整理され、患者さんとご家族の説明に使用されていることをお示ししていただきました。目で見てわかりやすいように工夫されており大変感心いたしました。

患者さんの診断から始まり、治療、緩和ケアまで関われる地域のホスピタルを目指しておられるということです。そのため、あらゆる種類のがん患者さんを外来・在宅で診ておられます。「診断からend-of-lifeまで;継続的なケア体制によりwell-beingを目指す」を座右の銘として診療をされています。

連携室に対する要望はありませんか?

大城外科胃腸科副院長と当院医師
大城外科胃腸科 大城 辰雄 副院長(右)
肝・胆・膵内科医長 灘野 成人(左)

抗がん剤で治療している段階から患者さんにかかわり継続的な体制をとりたいので、なるべく早い段階で診察を開始したいです。

自宅での看取りを年間30人、訪問診療100件/月は先生のお人柄、努力の賜物であると実感させられました。化学療法の段階から患者さんをお願いいたしますので、これからもよろしくお願いいたします。最後に2冊の本(花田先生の緩和ケア、がん患者100の質問)をいただき、ありがとうございました。病院で活用させていただきます。

大城外科胃腸科のホームページはこちらのリンクから

(肝・胆・膵内科医長 灘野 成人)

おおしろ外科こもれび診療所

おおしろ外科こもれび診療所外観

緩和医療において在宅医療は、切っても切れない関係にあります。患者・家族の様々な希望に対応するためには、在宅緩和ケアは必須で、緩和ケア病棟だけでは完結しません。そこで今回、おおしろ外科こもれび診療所を訪問して、お話を伺って来ました。


クリニックの特徴を教えてください。

在宅専門ではありませんが、通院できる間は通院してもらいながら、通院が困難になれば、往診に切り替えて、診療を継続するようにしています。砥部町と松前町のクリニックとチームを作っています。疾患は、がんとそれ以外の疾患が半々くらいの割合です。痛みと熱はしっかり取る、しんどい思いはさせないがモットーです。

年間の看取りは20人前後です。患者・家族が直接受診することもあります。小学校の校医もしており子供も診ています。最近は、登校拒否や多動障害の患者を診ることも有ります。婦人科系やメンタルへルス系疾患も扱っています。漢方薬も積極に処方して治療を行っています。

四国がんセンターに希望することはないでしょうか?

抗がん剤治療の時から緩和ケア内科が関わっているが、緩和ケア登録をしたら最後のような印象を持っている患者さんが多いように感じます。がんセンターの中での連携をもっと上手くやってほしいです。また、いろいろな薬剤調整や指導を在宅でも実施しやすい形でお願いしたいです。

おおしろ外科こもれび診療所院長と当院医師の写真
おおしろ外科こもれび診療所 大城 良雄 院長(左)
緩和ケア科医長 成本 勝広(右)

大城良雄先生は、もともと外科を専門としていたそうで、「何でも診ますよ」というスタンスでやっているそうです。幅広く、そして必要であれば専門医に紹介するというかかりつけ医として活躍されているようです。開業当初は自転車で、最近は車で往診に行くようになったそうですが、まさに地域のかかりつけ医という感じです。呼ばれても1時間くらいで帰ってこれる事が解り、趣味のゴルフもまた始めたそうです。どうぞお体に気を付けながらますますのご活躍をお祈りします。こらからもよろしくお願いいたします。

(緩和ケア科医長 成本 勝広)

おおしろ外科こもれび診療所のホームページはこちらのリンクから。

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診療科紹介 肝胆膵内科

肝胆膵内科スタッフ集合写真

肝胆膵内科の最近の話題は、薬剤溶出性ビーズを用いた血管塞栓化学療法(TACE)、奏効率が極めて高い抗C型肝炎ウイルス薬、膵癌に対するジェムザール+アブラキサン療法の新たな導入です。

ビーズTACEは従来のTACEと比較して副作用が軽く、巨大な癌や多発する癌にも安全に行えるようになり、肝がんの治療範囲が広がりました。

また新しい抗ウイルス薬は、インターフェロンを用いず、副作用も軽度です。一般的にがん専門病院の守備範囲ではありませんが、当院では発癌予防の観点から力を入れています。

そして、ジェムザール+アブラキサン療法は、一足先に承認されたフォルフィリノックス療法とともに有効性が高い一方、副作用コントロールが難しい治療です。しかし、肝胆膵チームの一員である筒井薬剤師をはじめ、病棟、通院治療室スタッフの協力により、私たちはこれらの治療を安全に導入しています。

最近の傾向は超音波内視鏡ガイド下生検、内視鏡的ステント(胆道、十二指腸)の増加です。経皮的アプローチやバイパス手術に比べ、患者さんの負担は極めて軽くなりました。これらの処置は内視鏡科の西出先生、消化管内科の松本先生と連携して行っています。

私たちのホームグランドである8階西病棟は、明るく元気な看護師さん、好感度抜群の薬剤師さんをはじめ、たくさんの仲間に恵まれているのが自慢です。これからもチームワークと笑顔で診療にあたっていきますのでよろしくお願いします。

(肝胆膵内科 浅木 彰則)

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