四国がんセンター

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最新のがんセンターニュース

まえがき

新年明けましておめでとうございます。

人口減少に直面した今の社会は成熟化の局面といえますが、世の中は相変わらずめまぐるしく変化しています。明治以降を現代とすれば、文明開化・人口急増・世界大戦の混乱と復興、その後の発展と喧噪を経て、今は次の時代への胎動前夜という処でしょうか。がん医療の近未来について考えてみました。そこには2つの潮流があると思います。一つは、がんの治療に革命が訪れつつあるということ、もう一つは、がんを取り巻く社会のニーズが多様化してきていることです。

過去20年余りのがん治療は着実に進歩してきました。近年はロボット手術や高機能放射線治療装置が導入され、治療の質は劇的に改善されています。特にこの数年はゲノム診断や分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬が医療現場を席巻しつつあり、従来のがん治療成績とは一線を画したまさに革命のまっただ中にあります。ゲノム医療の開発によりがん死から免れなかったはずの進行がん患者の長期生存が希でなくなりました。既に60%を越えている全がん5年生存率の10年後は全く予想がつきません。他方、ゲノム医療は新たな副作用や複雑な問題を生んでおり、きめ細やかな対応が求められます。多くのがん薬物療法専門医と遺伝相談員を育て、連携体制を構築してきた私たちの真価を発揮すべき時が到来したと身を引き締めています。

2006年(平成18年)のがん対策基本法の成立以来、がん医療政策も激変しています。患者家族や国民の社会へのニーズに目が向けられるようになりました。がんとの共生、がんになっても安心して暮らせる社会の構築が目標となり、緩和医療の充実や相談支援体制の整備、就労支援、がん教育にまで細やかな対策が展開されてきています。2013年(平成25年)の社会保障制度改革国民会議では地域包括ケアシステムやコミュニティの再生やコンパクトシティ化などソーシャルキャピタル(社会関係資本)の充実が唱われていますが、患者ニーズの多様化に応える政策はがん医療が10年先行しています。今後地域包括ケアシステムや地域医療構想もがん医療が先行モデルとなって進められていくでしょう。患者・家族総合支援センターを持つ当院は率先して患者ニーズの多様化への応え方を提案して行きたいと思います。

がん治療の革命は文化科学発展の成果であり、社会ニーズの多様化は文化社会成熟の帰結です。まもなく「がんとの闘いに終止符が打たれる」かもしれません。「目標は達成された瞬間に失われる」とは卓見ですが、がんで死ねなくなる人生100年時代、皆さんは惚けて死にたいですか、動けなくなって死にたいですか。いまあらためて人生の終わり方の問題が浮上しています。

先日、そんな話を家内にしたら、先に惚けたもん勝ちよね、と言われました、ギャフン。今年が皆様にとってよい年になりますように。

(院長 谷水 正人 )

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がん治療最前線 IMRTについて

がんの放射線治療は、手術、抗がん剤とともに3大治療とされてきました。最近では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を中心とする薬剤の進歩は著しく、従来の標準治療を変える勢いです。放射線治療は局所治療として、これらの薬剤とは異なった役割を演じることに変わりはありません。放射線治療のこの10年の進歩は、可能な限り正確に、腫瘍に放射線を集中し、正常組織への線量を少なくする努力がなされ、腫瘍に対する効果を上げ、その副作用を減らす事が可能になっています。その代表が本日のテーマである、強度変調放射線治療(IMRT)です。

IMRTは、従来の2方向あるいは4方向などからの治療方法から言えば、簡単に100方向も越えるような治療法といえます。これらの治療はコンピュータ制御でしかなし得ないものです。当院では、新病院移転に伴い2006年よりこの治療を行ってきましたが、10年の後、2017年9月に最新のリニアックが導入され、2018年4月にその稼働開始を目指しています。これは、県内では2台目(TrueBeam STx®としては初)のもので、治療部位のずれを遠隔操作で修正できる画像誘導装置と、2.5mm幅の照射野を形作る鉛板(リーフ)を備え、2mm程度の病変(主として脳腫瘍)に対しても対応ができるようになっています。また、従来当院で行っていたIMRTに比して、治療時間の短縮(25分から8分程度へ)と、より腫瘍に限局した線量分布が容易に得られます。従来、IMRTの適応疾患は、前立腺癌、耳鼻科領域の腫瘍に対して行ってきましたが、これらに加えて、早期肺がん、転移性脳腫瘍などに対して、定位照射の手法(ピンポイント治療)を用いたIMRT治療が可能となり、その適応範囲は広がっています。たとえば、転移性脳腫瘍に対する回転型IMRT治療は、多発性脳腫瘍に対して同時に3-4回転の治療で可能となり、大幅な時間の短縮と適応の拡大が期待できます。

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放射線治療は、他の部署と同様にチーム医療です。放射線治療専門医、専門技師、医学物理師、認定看護師等との協力により、よりよい医療の提供にスタッフ一丸となって日々、努めています。

 

(放射線治療部長 片岡 正明)

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イベントレポート 2017がんセンターまつり

2017年(平成29年)10月8日(日曜日)に、四国がんセンターで、がんセンターまつりが開催されました。「2017健康実現えひめ すべては明日の笑顔のために。受けよう!"がん検診"」をテーマにマンモグラフィ乳がん、肺がん、骨密度測定、フラワーセラピー、栄養相談等を行いました。乳がん検診、肺がん検診、骨密度測定は抽選となっており、たくさんの方々が早朝よりお越し下さいました。フラワーセラピーや肺機能検査は先着順ではありましたが、参加人数はすべて埋まり大盛況でした。フラワーセラピーでは参加された方それぞれで好きな花を選んでいただき、参加者一人一人違った物ができていました。お菓子を用いた調剤体験やスーパーボールすくいや綿菓子作りは子どもたちだけでなく、地域の方々も多く体験されていました。今回、特別講演として、「大切にしたい、自分の体。2度の子宮がんを経験して」を題に、タレントの原千晶さんによる講演会がありました。2度の子宮がんを経験し、たくさんの辛い体験や苦しい体験をしてきて、その苦しみを乗り越えた思いなどをお話していただきました。原さんからの強いメッセージを聞き、勇気付けられた方がたくさんいたのではないかと思いました。本当に貴重なお話をしていただいたと思います。

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当院では、患者さんやそのご家族とともに、地域の皆さまもご参加頂ける、がんに関するセミナーやイベントを開催しています。今回のようながんセンターまつりで、がんについて身近に相談できる場所として当院を知っていただき、がんになっても安心して暮らせるように貢献できたらと思っています。

(8階西病棟看護師 神野 裕子)

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エキスパートナース・メディカルスタッフ Part.38 保健師

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はじめまして。私は3年前から当院で保健師として働いています。当院の場合、保健師は患者さんと直接関わる機会のない職種です。バックヤードで職員の健康管理業務に従事し、安全な医療を提供するためには欠かせない「職員の健康」を支えています。

私は肢体不自由の身体障害者です。日常生活では電動車いすを使用しているのですが、プラスして介助犬を同伴して院内を動いています。病院内に犬がいるのですから、最初は驚かれます。けれど、優しい顔をしている介助犬(...と私)を見ることで患者さんやご家族の緊張はほぐれるのでしょう。笑顔になっていくのがわかります。

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また、ゴールデンレトリバーという大型犬ですが訓練しておとなしく、触っていただいたりもしています。

最近、介助犬を通じて患者さんと私との会話が生まれることが多いです。外来受診のたびに事務所を訪ねてくれたり、私の出勤時にあわせて病棟から下りてきてくれたりする患者さんもいらっしゃり、嬉しく思います。ということで、"がんセンターの保健師と介助犬"は、病院には乏しくなりがちな癒しの提供(動物セラピー)を担当中です。見かけた場合は、ユーザーの私に先に声をかけてから犬を触っていただきますようお願いします。

 

(保健師 妻鳥 和恵)

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愛される食事づくりを。 「お正月料理について」

お正月にお雑煮やおせちを召し上がる方も多いと思います。「お雑煮」といえば一年の無事を祈りお正月に食べる伝統的な日本料理です。餅の形やだし、具の種類にいたるまで、地方や家庭ごとに千差万別です。

おせち料理は五穀豊穣を司る年神様に供える縁起ものの料理を指します。一品一品それぞれに人々の願いが込められています。

病院食でも数の子や黒豆、伊達巻、栗きんとんといったメニューが提供されたと思います。

「数の子」には子孫繁栄の願いが「黒豆」にはまめに働き、まめに暮らすこと、「伊達巻」には知識や文化の発達、「栗きんとん」には縁起がよく蓄財につながるという願いが込められていると言われています。

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また元旦には祝い箸もついていたかと思います。「祝い箸」は、両方の先端が細くなっていて、「両口箸」とも呼ばれます。それは、一方は神様用、もう一方を人が使うためで、"神人共食"を意味しているそうです。おせち料理は年神様へお供えし、それを下げていただくものなので、新年を祝い、一年の恩恵を授かる意味から年神様と食事を共にするといういわれがあるそうです。

これからも皆さまに季節や行事に合わせたお食事が提供できるように努めて参りたいと思います。

(栄養管理室長 鎌田 裕子)

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お世話になって医ます 梅岡レディースクリニック・もりまつ内科

四国がんセンターは、初診患者さん全てが地域の医療施設からのご紹介です。ここでは、かかりつけ医の皆さまからうかがった、様々なご意見をご紹介します。

梅岡レディースクリニック

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今回は松山市竹原町で産婦人科診療を行っておられる梅岡弘一郎先生を訪問しました。

院長の梅岡弘一郎先生は1994年(平成6年)に愛媛大学をご卒業され、2005年(平成17年)6月に、お父様がご開業されていた病院の跡地に新たに梅岡レディースクリニックを開設されておられます。以来13年間、産婦人科医療の最前線で地域医療に貢献され、当院には多くの婦人科がんに関係する検査、治療が必要な患者さんをご紹介いただいております。


クリニックの特徴と診療モットーについて教えてください。

年間400~500件の分娩と不妊治療を中心に、産婦人科医療を行っています。クリニックのモットーは「助産院のような分娩と個々のニーズに添った不妊治療を行う産婦人科医院」で、患者さんひとりひとりの要望やニーズに真摯に向き合い、不安を取り除けるような、細やかな診療を実践しています。周産期医療が中心ですが、女性の更年期障害やがん検診などの婦人科診療も幅広く行っており、専門的な検査、治療が必要と思われたときは高次医療機関と連携し、安全、安心な医療を心がけています。

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梅岡レディースクリニック
梅岡 弘一郎 院長(右)
婦人科医長 竹原 和宏(左)

ご趣味は?

一番の趣味はスキーで、ニセコ、安比高原、海外ではカナダの「ウィスラー」(世界中のスキーヤーが憧れです!)にも2度ほど行きました。今でもスキーに行きたいのですが、開業してからはなかなか時間が取れません。最近では、息子二人と囲碁を打っています。

当院への要望は?

これまで通り、がんが疑われる患者さんでがんセンターでの精査や治療を希望される方の診療をよろしくお願いします。

がんセンターは高度で、先端的ながん医療を実践すること以外にも、がんに関する情報提供も大事です。医療者に対してのみならず、一般の方々にもがんに関する情報をどんどん発信していただくことを期待しています。

また、今後生活習慣病を持った高齢者のがん患者さんが増えていくことが予想されます。合併症に対する専門的な治療が必要な方は別として、生活習慣病を持った方でも安心してがん治療が受けられる診療体制づくりをお願いします。

お忙しい診療の合間を縫ってご対応いただきました梅岡先生からはクリニックの和やかな雰囲気の中、熱意ある言葉で当院に対する大いなる期待と鼓舞激励をいただきました。四国がんセンターとしては患者さん安全、安心な医療が届けられるよう、より良い連携をめざし診療改善を継続してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

(婦人科医長 竹原 和宏)

もりまつ内科

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松山市森松町で糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の診療を中心に診療されている長谷川敦彦先生を訪問させていただきました。当院に呼吸器および消化器疾患について多くの連携をいただいております。患者様の立場に立った診療、満足度の高い医療をされている評判の先生にお話をうかがってきました。



ここで開業された経緯とクリニックの特徴を教えてください。

2011年(平成23年)10月に、松山市森松町にもりまつ内科を開院させていただきました。兵庫県出身なのですが愛媛大学にきてから愛媛の地で過ごしたくなり、大学卒業後、愛媛大学第1内科に入局し、愛媛大学附属病院で研修医の期間を過ごしました。第1内科では主に血液疾患、感染症、膠原病等の全身管理が診療に従事し、麻酔科、放射線科、泌尿器科でも研修を受けました。また松山赤十字病院では糖尿病を中心に一般内科診療を、大洲の喜多医師会病院、西条市民病院では糖尿病、消化器疾患、高齢者医療及び一般内科診療に携わり、内科医として幅広い領域の診療をさせて頂きました。現在は糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を中心に、消化器疾患、感染症など一般内科について診療を行っています。

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もりまつ内科 長谷川 敦彦 院長(左)
外来部長 野上 尚之(右)

診療で心がけていらっしゃることはなんですか。

当院は内科ですので、発熱や咳、下痢や腹痛等で受診されたり、健康診断で異常を指摘された、血圧が高くて心配、糖尿病が気になる等、様々な主訴で来院されています。病気の内容や処方する薬、食事や生活等で気を付けることなどについて、出来るだけわかりやすく説明すること、地域のかかりつけ医としてなんでも相談できる診療を心がけています。より高度な医療が必要なときは、近隣の専門の先生方のクリニックや専門の病院へご紹介させていただいております。

当院に対するご要望はありませんか?

医療連携ではいつもスムーズに対応して頂いています。またご紹介させて頂いた患者さんの詳細な診療情報提供書を頂いておりますため、その患者さんが受診されたときにどのような症状かが把握できたうえで日常の診療ができますので、大変助かっています。近隣に緩和ケア科もある高度ながん専門病院があることは患者さんにとっても、開業医にとっても心強い限りです。

(外来部長 野上 尚之)

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診療科紹介 消化器外科

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消化器がんには、大腸・胃・肝臓・膵臓など、がん死亡率の上位を占める疾患が多くあります。そして消化器がんのほとんどは、切除が唯一根治を望める治療であり、がん診療における消化器外科の役割は大きいものと考えております。当院の消化器外科では現在、上部消化管外科、下部消化管外科、肝胆膵外科の3チーム9人スタッフ態勢で診療を行っています。それぞれのチームに愛媛県内では数少ない内視鏡外科学会技術認定医・食道外科専門医・肝胆膵外科高度技能医などが在籍し、専門性の高い診療を提供しています。また、患者さんごとに最適な治療法を慎重に検討し、また時には手術のみでは難しい症例に対しては集学的治療を適応するようにしております。そのため、消化器内科、放射線診断科、呼吸器外科、乳腺外科など他の診療科と合同で開くカンファレンスは大変重要です。

今後も、最新の診療ガイドラインに準じた標準的な治療をより高いレベルで提供し、より一層患者さんの期待に応えられる科となるよう精進しますので、皆様方のご協力・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

(消化器外科 御厨 美洋)

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医者のつぶやき リレーエッセイ 第二回 病理医の誕生

前回、『ワルの誕生』の話の続きをすると書いたが、実はあるスポーツの話をする気でいた。しかし、2回続けて医学の話をしないのもまずいので、今回は病理医の話を書くことにする。

私の肩書きはがん予防疫学研究部長と書かれているが、別の正体は病理診断を生業とする病理医だ。体から採取した病変に様々な加工を加え、鋭いメスで1mmの1/25に薄切された標本を見て、私たちは病理診断を行う。体全体に関わる病気の情報は、身長の約4万分の1の厚さの標本に集約され、顕微鏡のステージの上で拡大され、診断が決まる。その診断は多くの場合、『確定診断』と呼ばれ、ほかの診断より一段重い意味を持つ。薄い小さな標本の上に、病態ひいては人の運命の秘密が、沢山の偽のヒントに紛れて隠れている。私たち病理医は、その隠された秘密を解き明かすことを許された専門家である。

さて、病理診断と同じようなものにプロレス観戦がある。プロレスでは『おまえの会社を乗っ取ってやる』、『俺より男前なのは許せない』など。もっともな理由から、ばかげたものまで様々な闘う理由が事前に提示されるが、どんな理由であれ、最終的にはリングの上で闘うことで問題が解決される。もとより打ち合わせはあるが、リングの上は特撮ではなく、体が衝撃を受けて起こる変形や音、流血や骨折そのものは実際に起こっていることで、事実だ。プロレスの楽しみ方は様々だが、一部の哲学するプロレスオタクは、嘘と打ち合わせに満ちたリングの上を顕微鏡学的に詳しく観察し、隠された真実を読み取とることを生業とする。そして、その目の真摯さは病理医に似ている。

生まれてから大学院までプロレスを見倒した私は、卒後病理医となった。

さて、早くも紙面がつきたので、晴れて哲学するプロレス者から哲学的な病理医になった私の話は、以下次号。

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※図の説明 
『炎症性偽腫瘍』という腫瘍の顕微鏡像。偽(ニセ)腫瘍と呼ばれるが、低悪性ながら真の腫瘍である。『筋線維芽細胞』が腫瘍細胞で、それ以外の細胞が周りを取り巻いて、腫瘍細胞を攻撃したり、逆にその増殖に協力したりしている。嘘と真実と裏切りが入り混じり、実にプロレス的である。一つ一つの細胞が腫瘍細胞かそうでないのかの区別は病理医にとっても難しい。

(がん予防・疫学研究部長 寺本 典弘)

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