四国がんセンター:医療関係者の方へ

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膵神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス:RADIANT3全生存期間アップデート

膵神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス:RADIANT3全生存期間アップデート

2011年に公表された主たる解析(Everolimus for Advanced Pancreatic Neuroendocrine Tumors)の続報で、全生存期間のアップデートである。エベロリムス群の全生存期間中央値は44.0ヶ月であり、プラセボ群(37.7ヶ月)と比べて良好であったが、有意差はみられなかった(ハザード比:0.94、P=0.30)。プラセボ群の85%がクロスオーバーでエベロリムス治療を受けたことが有意差のみられなかった要因と考えられる。

2016年10月17日  石井 浩

ネオ・アジュバント療法+切除術とアップフロント切除術の比較:傾向スコア解析

ネオ・アジュバント療法+切除術とアップフロント切除術の比較:傾向スコア解析

2006年から2012年までの米国がん登録から臨床病期1/2(切除可能)で根治を目的とした手術が行われた膵頭部腺癌15,237例を抽出した。病歴不備等で296例を除外した14,941例(ネオ・アジュバント療法+切除術(NAT):2,104例、アップフロント切除術(UR):12,837例)が本研究のコホートであり、3:1で傾向スコア・マッチングしたNAT群:2,005例、UR群:6,015例を比較した。
NAT群の生存期間中央値は26ヶ月であり、UR群(21ヶ月)と比較し有意に良好(ハザード比:0.72)であった。UR群の背景はpT3/4割合、pN1割合、R0割合が有意に高かった。UR群の術後補助療法サブグループとの比較でも、NAT群の遠隔成績は有意に良好(ハザード比:0.83)であった。
本研究は後ろ向き観察研究であり、NAT群は補助療法のあとに切除療法を受けることが可能であった「選ばれた集団」である。したがって結果はあくまでも仮説であるが、切除可能性に対するネオ・アジュバント療法前向き試験に大きな合理性を与えるものである。とくに、侵襲の大きい手術を避けるべき患者の選択手段としてネオ・アジュバント療法は期待される。

2016年10月13日  石井 浩

転移のある前立腺癌患者に対して前立腺に放射線治療を追加することで生存率が改善する

転移のある前立腺癌患者に対して前立腺に放射線治療を追加することで生存率が改善する

2004~2012年にかけて,転移のある前立腺癌患者 6,382名をデータベースから特定、その中で538名(8.4 %)が前立腺に放射線治療を受けていました。経過観察期間中央値 5.1年で,ホルモン治療と放射線治療の併用群でホルモン治療単独群より全生存期間の改善が見られました(中央値で55ヶ月対37ヶ月、P<0.001)。ホルモン治療と前立腺全摘除術の解析もなされ、ホルモン治療単独より生存率は良く、放射線群とは有意差はありませんでした。転移のある前立腺癌ではホルモン治療単独がこれまで一般的でしたが、今後治療効果予測因子が明らかになれば、放射線や手術の局所療法も選択肢になりそうです。

2016年10月11日  橋根 勝義

ゲムシタビン不応膵がんに対するmodified FOLFOX6と5-FU/LVの第Ⅲ相試験(PANCREOX試験)

ゲムシタビン不応膵がんに対するmodified FOLFOX6と5-FU/LVの第Ⅲ相試験(PANCREOX試験)

進行再発膵がんの標準一次治療のひとつであるゲムシタビン関連レジメン後のセカンドラインに関する米国カナダの第Ⅲ相試験の報告である。ドイツで行われたCONKO-003試験で、同様のセカンドライン設定で5-FUレジメンに対するオキサリプラチンの上乗せ効果が検証されているが、用いられたOFFレジメンが一般的でないため、汎用されているmodified FOLFOX6(mFOLFOX)で追試を行った。16週後の無増悪生存割合15%の向上を80%の検出力で証明するため128例の登録目標でスタートしたが、2年半後108例で途中中止となった。結果、mFOLFOX群は対照と比べ全生存で有意に予後不良であり、グレード3/4毒性は高率であった。
本論文の考察:5-FUレジメンに対するオキサリプラチンの上乗せ効果、なぜCONKO-003試験でpositive、PANCREOX試験でnegativeなのか。オキサリプラチンの用量はCONKO-003試験のOFFレジメンよりもPANCREOX試験のmFOLFOXの方が多い。セカンドライン設定ではmFOLFOXのオキサリプラチン用量は多すぎでOFF程度でちょうど良いのかもしれない。
筆者の感想:オキサリプラチンをきっちり使うなら初回治療が好機であり、その意味ではゲムシタビン関連レジメンよりもFOLFIRINOXの方が初回治療として有利かもしれない。

2016年10月3日  石井 浩

前立腺全摘除術はロボット支援と開腹のどちらが良いのか?

前立腺全摘除術はロボット支援と開腹のどちらが良いのか?

前立腺全摘除術に関して、ロボット支援手術と開腹手術のランダム化比較試験の結果が発表されました。両群163例ずつで(最終解析はロボット支援手術131例、開腹手術121例)、術後6週と12週の時点での排尿機能、性機能は両群で有意差はなく、断端陽性率(ロボット支援手術15%、開腹手術10%)も差はなかったとしています。術後合併症は、ロボット支援手術6例(4%)、開腹手術14例(9%)で有意差はないもののロボット支援手術の方が少ない結果でした。本研究の開始時点で開放手術の術者は1500症例以上経験しているのに対し,ロボット支援手術の術者は2年のロボットfellowship後に200症例しか経験していないという不利な条件下での試験ですが、同等の結果であったと言うことはロボット支援手術の有意性をある程度示しているかもしれません。もちろん論文にあるように今後長期間の観察は必要です。

2016年9月26日  橋根 勝義

局所進行膵がんに対するナノナイフ(不可逆電気穿孔法)の第Ⅰ/Ⅱ相試験(PANFIRE試験)

局所進行膵がんに対するナノナイフ(不可逆電気穿孔法)の第Ⅰ/Ⅱ相試験(PANFIRE試験)

ナノナイフは複数本の細径電極針を腫瘍周囲に穿刺し、電極針間の高電圧短時間パルス通電により、腫瘍細胞にナノサイズの穴をあけて抗腫瘍効果を得る新規の局所療法である。東京医科大学によると、2016年4月現在、米国で50台、欧州で20台が稼働中で、日本では5台導入されている(東京医科大学ナノナイフ治療のしおりより)。本論文は膵がんに対する第Ⅰ/Ⅱ相試験であり、アムステルダム自由大学からの報告である。対象は局所進行膵がん25例で、高圧通電するため金属ステント例、てんかん例、心室性不整脈例は除外された。最大腫瘍径中央値は4.0(3.3-5.0)cmで局所増悪までの期間中央値12ヶ月、生存期間中央値は手技から13ヶ月、診断から17ヶ月であった。25例中10例に23有害事象がみられた。2例でグレード4の有害反応あり、経皮的ドレナージ要する重症膵炎と輸血を要する壊死領域近傍からの十二指腸出血であった。本療法は比較的危険な治療手技といえる。

2016年9月20日  石井 浩

進行膵がんに対するゲムシタビン±IMM-101のランダム化第Ⅱ相試験(IMAGE1試験)

進行膵がんに対するゲムシタビン±IMM-101のランダム化第Ⅱ相試験(IMAGE1試験)

IMM-101は、加熱殺菌されたマイコバクテリウム・オブエンスを含む全身免疫調整剤である。2015年に米国臨床腫瘍学会と世界消化器がん学会で発表された試験が論文として公表された。本試験は2011年から80例予定でスタートし、最終的に110例が登録され、単独群に35例、併用群に75例が割り付けられた。併用群の全生存期間、無増悪生存期間は単独群に比較して良好であった。その傾向は遠隔転移例でより顕著であり、全生存期間中央値は単独群28例4.4ヶ月、併用群64例7ヶ月であった(p=0.01)。
免疫療法といえば免疫チェックポイント阻害薬が現在花盛りであるが、膵がん領域では本剤以外にも免疫調整剤が注目されており、米国ではがんワクチン(GVAX、CRS-207)の開発が進行中である(NCT02243371:STELLAR試験、NCT02451982)。

2016年9月12日  石井 浩

米国における肝細胞がんサーベイランスの有効性

米国における肝細胞がんサーベイランスの有効性

米国の在郷軍人病院ネットワークを利用して、肝細胞がん診断前2年のカルテ調査から肝硬変サーベイランスのインパクトを調べました。対象は887例でHCV陽性が78%で、サーベイランスは全体の46%が受けていました。サーベイランスあり群はなし群に比べて早期例割合、根治的治療割合がともに高く、サーベイランスによる死亡リスク減少は38%と顕著でしたが、病期と治療法を補正すると20%で有意差はぎりぎり(95%信頼区間:0.69-0.94)でした。
著者らはさらに拡大したコホートの中から、肝細胞がんを自然経過した518例を同定して早期発見根治治療の上乗せを除いたサーベイランスそのもののインパクトを調べています(Khalaf N, et al.Clin Gastroenterol Hepatol 2016 Aug 10)。In pressで抄録のみなので今回詳細は紹介はしませんが、「抗癌治療なし」だとサーベイランスがあってもなくても早期例なら生存期間に差はなく(BCLC病期0/A:10.3ヶ月vs. 10.5ヶ月)、進行例でもその差はわずかに2ヶ月(5.2ヶ月vs. 3.4ヶ月)でした。サーベイランスの有用性は、サーベイランスそのもののリードタイム効果ではなくて、より早期にみつけたときの根治治療のインパクトにあるということなのでしょう。逆に云うと早期発見や根治治療のできない地域や国ではサーベイランスの意義は乏しいということでしょうか。

2016年9月5日  石井 浩

FOLFOXかソラフェニブか:肝細胞がん化学療法費用対効果分析

FOLFOXかソラフェニブか:肝細胞がん化学療法費用対効果分析

肝細胞がんに対する標準的な化学療法はソラフェニブです。その前はドキソルビシンが暫定標準でした。FOLFOXはソラフェニブ登場以前に当時の標準ドキソルビシンとアジアで大規模な第Ⅲ相試験(EACH試験:http://jco.ascopubs.org/content/31/28/3501)で比較され、残念ながらドキソルビシンに有意な生存期間延長を示せませんでした。
今回の論文は四川大学の医療統計家の先生が書いたFOLFOXとソラフェニブの費用対効果分析です。以前このコラムで紹介(2016年4月26日)した膵がんFOLFIRINOXとゲムシタビン・ナブパクリタキセルの費用対効果分析と同じ著者で、費用対効果の閾値も2万ドル(220万円)で同じです。結果、FOLFOXをソラフェニブに切り替えたときの増分費用効果比(ICER)は93万ドル/QALY、すなわちソラフェニブでもう1年延命するのに必要なのは1億円。費用対効果の閾値より遙かに高額であり、ソラフェニブよりもFOLFOXの方がコスパがよい。
つっこみどころは、ドキソルビシンのコスパが断トツであるのが自明(FOLFOXと生存期間有意差なし、遙かに安価)であることです。

2016年8月22日  石井 浩

腹腔洗浄細胞診陽性の局所限局膵がん:Stage4bの進行がん?

腹腔洗浄細胞診陽性の局所限局膵がん:Stage4bの進行がん?

米国シアトルにあるバージニア・メイソン医療センターからの報告。この病院では以前から膵がんの切除可能性を画像診断と審査腹腔鏡(下腹腔洗浄細胞診)で決定してきました。画像で明らかな遠隔転移がみられなくても、微小な肝転移・腹膜播種が数%にみられるからで、米国では切除前に審査腹腔鏡を行う施設が少なくありません(日本では少数派と思われます)。腹腔洗浄細胞診が陽性であった場合の対応は日米で差があり、米国では遠隔転移例扱いで非切除療法が選択されますが、日本では切除術が行われることがほとんどです(日本では切除目的の開腹下で腹腔洗浄細胞診が行われる事情があります)。腹腔洗浄細胞診陽性例の切除成績は、日本の文献で生存期間中央値8-15ヶ月(23.8ヶ月の外れ値あり)で、日本の外科医は腹腔洗浄細胞診陽性を切除禁忌にしていません。
さて、バージニア・メイソンの成績です。画像で切除可能例の7.8%、局所進行例の16.1%で審査腹腔鏡下腹腔洗浄細胞診陽性(43例)でした。この43例は初回治療で化学療法を受け、経過良好の場合は引き続きケモラジ(15例)、場合によっては切除(1例)を受けていました。生存期間中央値、2年生存割合は13.9ヶ月、26%で、グロス転移を有する例(9.4ヶ月、11%)に比べて明らかに良好でした。欧米の腫瘍外科医は一般的に腹腔洗浄細胞診陽性は進行した全身癌だと認識していますが、著者らは全身治療で効果があった例ではケモラジや切除など局所療法を考慮すべきで、腹腔洗浄細胞診陽性は普通の遠隔転移癌とは異なるエンティティにすべきと主張しています。

2016年8月8日  石井 浩

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