四国がんセンター:医療関係者の方へ

Special recommended references for oncologists石井 浩

中腸神経内分泌腫瘍に対するルテチウム-177の第Ⅲ相試験

中腸神経内分泌腫瘍に対するルテチウム-177の第Ⅲ相試験

2015年ウィーンで開催された欧州臨床腫瘍学会で発表されたソマトスタチン受容体陽性中腸神経内分泌腫瘍患者におけるルテチウム-177の第Ⅲ相試験(NETTER試験)の中間解析結果の論文である。本療法はα線を放出する放射線同位元素:ルテチウム-177を用いた核医学治療である。ソマトスタチン・アナログに結合したルテチウム-177が、ソマトスタチン受容体陽性腫瘍に集積し、選択的に内照射放射線療法を行う。
高分化型の転移性中腸神経内分泌腫瘍229例を試験治療(ルテチウム-177+ソマトスタチン)と標準治療ソマトスタチン単独に割り付け、治療成績を比較した。20ヵ月無増悪生存割合は試験治療群65.2%(95%信頼区間50.0-76.8%)、標準治療群10.8%(同3.5~23.0%)、奏効割合は試験治療群18%、標準治療3%であった(P<0.001)。試験治療の主な有害事象は血液毒性で、グレード3/4の好中球減少、血小板減少、リンパ球減少は各々1%、2%、9%であった。
中間解析結果ではあるが圧倒的な差がみられており、本邦でも早期の承認が望まれる。

2017年2月6日  石井 浩

ソラフェニブはB型肝炎陰性かつC型肝炎陽性の肝細胞がんにしか効かない!?

ソラフェニブはB型肝炎陰性かつC型肝炎陽性の肝細胞がんにしか効かない!?

ソラフェニブは初発進行肝細胞がんに対し、プラセボと比較して明らかな延命効果を示した唯一の薬物である。打倒ソラフェニブを旗印としたブリバニブ、スニチニブ、リニファニブの第Ⅲ相試験を統合した3,526例の個人データを用い、特にB型肝炎・C型肝炎の罹患状況とソラフェニブの治療効果との関連をメタアナリシス解析した。
B型陰性かつC型陽性のサブグループに対するソラフェニブの他治療に対するハザード比は-0.27(95%信頼区間:-0.46〜-0.06)であった。しかし、他のB型C型サブグループではソラフェニブの他治療に対する優位性は明らかではなく、特にB型肝炎陽性かつC型肝炎陰性のサブグループでは生存曲線がほぼ完全に重なった。
因みにソラフェニブとプラセボの第Ⅲ相試験、SHARP試験、AP試験で、B型陽性サブグループでのソラフェニブのプラセボに対するハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ0.76(0.38〜1.50)、0.74(0.51〜1.06)であった。
ソラフェニブはC型肝細胞がんには効くが、B型肝細胞がんに対する効果には確固たるエビデンスが未だない。

2017年1月25日  石井 浩

膵頭部領域悪性腫瘍による閉塞性黄疸:切除前に減黄は必要か?

膵頭部領域悪性腫瘍による閉塞性黄疸:切除前に減黄は必要か?

閉塞性黄疸を有する膵癌例に対し、減黄術なしで切除に望む方針と減黄術を施行してから切除に望む方針でどちらが有利であるかは未だ不明である。本論文は両方針について、全合併症、創感染、膵液瘻、腹腔内膿瘍、30日以内全死亡の症例割合を比較したミュンヘン工科大学によるメタアナリシスである。
PRISMAガイドラインに従い、関連する1,816論文から25論文(後ろ向き研究22、ランダム化試験3、計6,214例)を選択した。術前減黄術は切除ファーストに比べて全合併症はオッズ比1.40(95%信頼区間1.14-1.72)、創感染はオッズ比1.94(95%信頼区間1.48-2.53)で高リスクであった。膵液瘻、腹腔内膿瘍、30日以内全死亡の症例割合は両方針で有意差はみられなかった。
術前減黄術は術後経過を明らかに好転させるものではなく、むしろ全合併症、創感染のリスク因子となる。術前減黄術はルーティンに漫然と行うべき手技ではなく、施行前によくよくその適応を吟味すべきである。

2017年1月16日  石井 浩

ソラフェニブ不応肝細胞癌に対するレゴラフェニブの第Ⅲ相試験

ソラフェニブ不応肝細胞癌に対するレゴラフェニブの第Ⅲ相試験

去年(2016年)6月30日、第18回世界消化器癌学会(バルセロナ)で公表されたピボタル試験の論文である。切除不能進行肝細胞癌の標準治療であるソラフェニブ療法で画像進行した患者に対するレゴラフェニブのプラセボ対照二重盲検ランダム化第Ⅲ相で、21カ国152施設が参加し843例が登録された。レゴラフェニブ群の生存期間中央値は10.6ヶ月であり、プラセボ群(7.8ヶ月)に比較して有意な延長がみられた。頻度の高い重要な副作用は高血圧、手足皮膚反応、疲労、下痢であった。レゴラフェニブ治療関連死は2%であった。
ソラフェニブ登場以来10余年にわたる数多の第Ⅲ相試験の歴史で初めての成功例であり喜ばしい限りであるが、ソラフェニブと同系統薬であるところが痛し痒しである。

2017年1月4日  石井 浩

切除不能進行胆道癌に放射線療法は役に立っているのだろうか?

切除不能進行胆道癌に放射線療法は役に立っているのだろうか?

多くの先進国で胆道癌は稀少であり、胆道癌に対する放射線療法のエビデンスはほとんどない。本研究は米国スタンフォード大学放射線腫瘍科のSEERメディケア・データベースを用いた観察研究である。
対象は1998年から2011年までに切除不能胆道癌診断された2343例で、このうち451例(19%)が診断4ヶ月以内に放射線療法を受けていた。高齢、独身、低所得等が放射線療法を受けにくい因子だった(逆にいうと、家庭を持っている若い高所得者が放射線路湯法を受ける傾向にあった)。4ヶ月以上生存例の生存期間中央値は、放射線療法なし群9.3ヶ月、あり群10.0ヶ月で有意差はなかった。しかし、化学療法あり群(1053例)に限定すると、放射線療法ありのハザード比は0.82(95%信頼区間0.70-0.97)で予後改善と有意に関連していた。化学療法なし群(1290例)では放射線療法ありのハザード比は1.09(95%信頼区間0.91-1.30)であり、予後との関連は明らかではなかった。以上の傾向は傾向スコア解析でも同様であった。以上、胆道癌に対する放射線療法は化学療法との併用で生存期間延長の可能性が示唆されたが、施行件数は年々減少傾向にある。
胆道癌放射線療法をもう少し盛り上げたいという放射線療法の先生の思いを感じました。

2016年12月19日  石井 浩

胆道癌標準療法GCのコストパフォーマンスはGem単独に比較して不良

胆道癌標準療法GCのコストパフォーマンスはGem単独に比較して不良

日本(愛知医大、名城大学等)からの報告。胆道癌の標準治療であるゲムシタビン+シスプラチン併用(GC)療法の費用対効果を、ゲムシタビン単独(Gem)療法と比較した。ベースのコストはGC:1545万円、Gem:1233万円であった。増分費用対効果比(ICER:健康な1年を得るために必要な費用)は1370万円であり、これは確率論的に推定された支払い意志額:600万円よりも高額であった。日本においてGC療法のコストパフォーマンスは必ずしも良くない。
たとえば、高齢者では毒性の低い単剤療法を考慮してはどうかということと思います。

2016年12月5日  石井 浩

膵がんに対する術前減黄の遠隔成績に対する影響

膵がんに対する術前減黄の遠隔成績に対する影響

日本の多施設共同観察研究で、膵がん切除後遠隔成績の予後因子を検討しています。本論文ではとくに術前減黄について述べています。膵がん切除932例中、407例(44%)が術前減黄処置として内視鏡的ドレナージ(EBD)を受け、166例(18%)が経皮的ドレナージ(PTBD)を受けました。術前減黄なし群、EBD群、PTBD群の生存期間中央値は各々25.7ヶ月、22.3ヶ月、16.7ヶ月で、PTBD群のみが有意に成績が不良でした。また、PTBD群は23%で腹膜再発を来たし、術前減黄なし群(11%)、EBD群(10%)に比較して有意に腹膜再発割合が高率でした。
先の論文で肝門部胆管がんの術前減黄に対するPTBDの擁護を紹介しましたが、本論文は下部胆管閉塞を来す膵がんではPTBD避けるべしが結論です。

2016年11月14日  石井 浩

肝門部胆管がんに対する術前減黄に経皮的ドレナージはありか?

肝門部胆管がんに対する術前減黄に経皮的ドレナージはありか?

胆道がんの術前減黄は安全な根治切除のために必要な手技である。減黄ドレナージ手技には経皮的(PTBD)と内視鏡的(EBD)のふたつのアプローチがあるが、経皮穿刺の侵襲と播種のリスクを伴うPTBDは忌避されやすく、近年の内視鏡技術の向上からEBDが積極的に推奨される傾向にある。しかし、肝門部胆管がんではEBDが困難でPTBDを選択せざるをえない状況もしばしばみられる。本論文はアメリカとオランダの2施設で術前減黄を行った278例の肝門部胆管がん症例の後ろ向き観察研究である。
術後合併症で33例を除外した245例を対象とし、88例のPTBD群と157例のEBD群を比較した。補正なしの生存期間中央値はPTBD:35ヶ月、EBD:41ヶ月(P=0.26)であった。傾向スコアで補正したハザード比は1.05で差はなかった。初回再発部位としての手術創播種はPTBD群3例(3.4%)、EBD群4例(2.7%)であった(P=0.71)。
世間的に「ドレナージは内視鏡」という風潮の中で、経皮穿刺をいやがる欧米においてPTBD再評価の論調がでたことに驚きである。

2016年11月7日  石井 浩

肝細胞がんに対するレンバチニブの第Ⅱ相試験

肝細胞がんに対するレンバチニブの第Ⅱ相試験

進行再発肝細胞がんの標準的薬物療法はソラフェニブ療法である。レンバチニブはエーザイが開発している日本発のマルチキナーゼ阻害薬であり、今回第Ⅱ相試験成績が論文公表された。日本と韓国で46例が登録され、奏効割合は37%、全生存期間中央値は18.7ヶ月と従来のソラフェニブと比較して抜群によい治療成績であった。ソラフェニブとの直接対決の第Ⅲ相試験結果がほどなく公表される予定である。刮目して待ちたい。

2016年10月27日  石井 浩

肝細胞がんに対するソラフェニブ±シスプラチン動注療法のランダム化第Ⅱ相試験

肝細胞がんに対するソラフェニブ±シスプラチン動注療法のランダム化第Ⅱ相試験

筆者がグループ事務局を務めるJCOG肝胆膵グループの施設が中心となって施行した第Ⅱ相試験です。進行肝細胞がん例を対象として、試験治療(ソラフェニブ+シスプラチン動注併用療法)と標準治療(ソラフェニブ単独療法)を2:1にランダム割り付けし、主要評価項目である全生存期間を比較しました。試験治療66例の生存期間中央値は10.6ヶ月であり、標準治療42例の8.7ヶ月に比較して有意(ハザード比:0.60、P=0.031)に良好でした。試験治療は第Ⅲ相試験治療の有力候補である。
Lancet Oncologyに本論文のニュースが掲載された。試験概要の紹介とともに、「化学療法とのコンビネーションは魅力がない」「免疫チェックポイント阻害薬の方が魅力的」「日本人データで非アジアで再現されるか疑問」など、米国の研究者数名の辛口コメントが並んでいる。

2016年10月20日  石井 浩

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