四国がんセンター:医療関係者の方へ

Special recommended references for oncologists石井 浩

肝細胞がんに対するオランチニブと血管塞栓化学療法との併用療法

肝細胞がんに対するオランチニブと血管塞栓化学療法との併用療法

肝細胞がんに対する血管塞栓化学療法と血管新生阻害薬オランチニブ(TSU-68)との併用療法の第Ⅲ相試験(ORIENTAL試験)の結果がLancet Gastroenterol Hepatolに公表された。既に2014年7月にプレスリリースされ、無効中止が報告されている。本試験は大鵬薬品工業主導の日本、韓国、台湾3カ国で行われた治験である。889例がオランチニブまたはプラセボに1:1で割り付けられ、血管塞栓化学療法との併用療法で全生存が比較されたが、中間解析によりオランチニブ群がプラセボ群を上回る可能性が極めて低いことから試験中止が決定された。

2017年11月6日  石井 浩

肝細胞がんに対する経皮的ラジオ波焼灼療法と温度感受性を有するリポ化ドキソルビシンの併用療法

肝細胞がんに対する経皮的ラジオ波焼灼療法と温度感受性を有するリポ化ドキソルビシンの併用療法

HEAT試験は40度以上でドキソルビシンを放出するリポ化製剤の経静脈内投与を経皮的ラジオ波焼灼療法と併用することにより、経皮的ラジオ波焼灼療法単独と比較して無再発生存期間が延長するか検証するアジアを中心とした第Ⅲ相試験であり、日本からは東大前教授、山梨県立中央病院の小俣先生が共著者に名を連ねている。最大径3-7cm、4結節以下の肝細胞がん701例が登録され、実薬とプラセボにダブルブラインドで割り付けられた。結果は残念ながらネガティブで無再発生存期間、全生存期間にプラセボとの有意差はみられなかった。サブグループ解析では経皮的ラジオ波焼灼療法が45分以上かかった例で実薬の有用性が示唆された。

2017年10月23日  石井 浩

切除境界/局所進行膵がんの化学療法後切除:どのように症例選択するか?

切除境界/局所進行膵がんの化学療法後切除:どのように症例選択するか?

イタリア、サン・ラッファエーレ病院における切除境界/局所進行膵がん223例/14年間の経験をレビューした。ゲムシタビン併用療法を3-6ヶ月間行い、画像と術中所見で根治切除可能と判断した61例(27%)は可及的に切除した。化学療法後、画像奏効は48%、CA19-9奏効(半減)は77.8%にみられた。切除例では治療前ステージ(切除境界/局所進行)、画像奏効はいずれも予後因子ではなく、CA19-9奏効が予後因子であった(奏効例、非奏効例の生存期間中央値は各々31.5ヶ月、15ヶ月)。CA19-9非奏効例の生存期間中央値(10.5ヶ月)は非切除例(10.9ヶ月)と大差なかった。多変量解析において切除/非切除とCA19-9奏効は有意な予後因子であったが、切除境界/局所進行とCA19-9ベースライン値の予後との関連は明らかではなかった。化学療法後、膵がんを切除するか否かは画像判断よりもCA19-9判断の方が適切かもしれない。
当院においても画像診断よりCA19-9の反応性の方が好結果に繋がる印象を持っており、本論文でその意をさらに強くした。

2017年10月3日  石井 浩

ASCO2017報告:進行肝細胞がんに対するレンバチニブの第Ⅲ相試験

ASCO2017報告:進行肝細胞がんに対するレンバチニブの第Ⅲ相試験

進行肝細胞がんに対する第一選択治療はソラフェニブ療法です。ソラフェニブ療法は自覚的に苦痛の強い副作用、手足症候群による減量や中止が大きな問題になっています。レンバチニブ(E7080)はエーザイ筑波研究所で開発されたマルチ・キナーゼ阻害薬で、先行試験において手足症候群の頻度が低く、かつ良好な奏効割合や遠隔成績が報告されています。本試験は954例を両群に1:1で割り付け、全生存期間における非劣性を検証する国際共同第Ⅲ相試験です。
当初は優越性まで検証されるだろうとの見込みでしたが、ふたを開けてみると主要評価項目の全生存期間はハザード比0.92(95%信頼区間:0.79−1.06)で非劣性が辛うじて達成されました。レンバチニブは病勢進行期間ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.57−0.77)、奏効割合:24%(ソラフェニブ9%、P<0.00001 )と良好な治療成績を示しましたが、高血圧、蛋白尿がソラフェニブと比較して高頻度でした。また、肝酵素上昇やビリルビン上昇の有害事象割合はソラフェニブと同程度でしたが、肝不全の出現頻度がソラフェニブより高い傾向がみられました。
手足症候群の苦痛から解放され、より優れた抗腫瘍効果を有するが、全生存期間の延長効果は限定的で、時に肝不全が出現するレンバチニブ療法が、既存のソラフェニブ療法に置き換わるかが問題です。日本は開発のお膝元であり、規制当局とネゴシエーション済みなので承認され、来年ソラフェニブ療法はレンバチニブ療法に置き換わるでしょう。しかし、諸外国が追随するかは微妙かもしれません。日本はS-1の二の舞にならないよう、レンバチニブに関する新たなエビデンス構築に努力する責務があります。

2017年6月26日  石井 浩

ASCO2017報告:胆道がん切除後カペシタビン補助療法(BILCAP試験)

ASCO2017報告:胆道がん切除後カペシタビン補助療法(BILCAP試験)

比較的早期の胆道がんは切除単独療法が標準治療であり、術後補助化学療法の意義は明らかではありません。本試験は術後補助カペシタビン療法の有用性を検証する英国の第Ⅲ相試験です。肉眼的完全切除後の胆道がん447例を観察群とカペシタビン療法群とに1:1でランダム化し両群の全生存期間を比較しました。62%がR0手術(病理学的局所遺残なし)、46%がN0(リンパ節転移なし)でした。ITT解析(登録された447例で解析)で全生存期間中央値はカペシタビン療法群:51ヶ月、観察群:36ヶ月、ハザード比0.80で有意差は明らかではありませんでした(P=0.097)。しかし、両群の背景因子で補正した解析ではハザード比0.71(P<0.01)、per-protocol解析(447例中プロトコール通りの治療が行われた430例で解析)ではハザード比0.75(0.028)でした。胆道がん切除後のカペシタビン補助化学療法は、標準治療と考えるべきでしょう(原文:should become standard of care)。
主たる解析がnegativeであったのに、感度解析でpositiveだったので全体的にもpositiveにするというのは、臨床腫瘍学原理主義的にはいかがなものかと思われます。しかし、実地診療を変えるには充分なエビデンスと言っていいのではないかいうことでしょうか。
本邦ではおそらく学会が胆道がんに対するカペシタビンを公知申請、1年後目標で臨床の現場に登場するというシナリオと思います。その頃にはJCOGの同様試験(術後S-1補助療法JCOG1202:ASCOT試験)の症例登録も完了し、胆道がん切除後のFU系補助化学療法のエビデンスは盤石になると思われます。

2017年6月15日  石井 浩

進行肝細胞癌に対するニボルマブの早期探索試験:CheckMate 040

進行肝細胞癌に対するニボルマブの早期探索試験:CheckMate 040

ウィルス肝炎非合併例、C型肝炎合併例、B型肝炎合併例の3群に対して第Ⅰ相試験(0.1-10mg/m2/2週間、3x3デザイン、48例/4カ国7施設)を行った。毒性は管理可能で、治療終了した46例中42例(91%)はPD中止であり、最大耐用量には到達しなかった。グレード3/4の有害事象は12例25%例に、重篤な治療関連有害反応は3例6%(類天疱瘡、副腎不全、肝障害)にみられた。
推奨用量3mg/m2で第Ⅱ相試験(ウィルス肝炎非合併+ソラフェニブ未治療もしくは不耐:56例、ウィルス肝炎非合併+ソラフェニブ不応:57例、C型肝炎合併50例、B型肝炎合併51例、214例/日本含む15カ国/46施設)の奏効割合は20%(95%信頼区間:6-28%)であった。ニボルマブに関する新たな副作用情報はみられなかった。
進行肝細胞癌に対するニボルマブの有用性をソラフェニブとの比較で検証する第Ⅲ相試験(http://clinicaltrials.gov/show/NCT02576509)が進行中であり、近日結果公表される見込みである。

2017年5月15日  石井 浩

切除可能膵がんに対するネオアジュバント療法 vs. アップフロント切除:傾向スコア解析

切除可能膵がんに対するネオアジュバント療法 vs. アップフロント切除:傾向スコア解析

全国がん登録から症例選択し、傾向スコア解析した研究である。1,541例がネオアジュバント後切除を受け、7,159例がアップフロント切除を受けた。傾向スコアによるマッチング比較した結果、臨床ステージ3(N=486)ではネオアジュバント後切除の遠隔成績はアップフロント切除に比較して有意に良好であった(生存期間中央値22.9ヶ月 vs. 17.3ヶ月、P<0.0001)。しかし、臨床ステージ1、ないし2では双方の遠隔成績に差はみられなかった。ネオアジュバント療法が切除成績を損ねることはなさそうであるが、遠隔成績向上が示唆されたのは臨床ステージ3だけであった。
日本のPrep-02/JSAP-05試験(UMIN000009634:切除可能例に対する術前GS療法の第Ⅲ相試験)の結果が待望される。

2017年5月1日  石井 浩

ステージ4膵がんの遠隔成績は遠隔転移の部位により大分違う

ステージ4膵がんの遠隔成績は遠隔転移の部位により大分違う

SEERデータベースを用いた疫学研究である。ステージ4の膵がん13,233例を対象に、遠隔転移部位(肝、肺、骨、脳、遠隔リンパ節)別にみた生存時間解析を行った。肺転移単独群および遠隔リンパ節単独群の全生存時間および膵がん特異的生存時間は、肝転移単独群と比較してそれぞれ有意に良好であった(P<0.0001)。多変量解析では65才未満、白色人種、既婚者、女性、原発巣と転移巣の手術が、全生存時間および膵がん特異的生存時間について予後良好因子であった。
肺転移単独もしくは遠隔リンパ節単独のステージ4膵がんに局所療法を適応する理論的根拠になるかもしれない。

2017年4月17日  石井 浩

喫煙習慣は膵がんの予後不良因子:禁煙は今からでも遅くない

喫煙習慣は膵がんの予後不良因子:禁煙は今からでも遅くない

喫煙は膵がん発症のリスク因子であるが、喫煙が膵がん患者の予後因子であるかはよくわかっていなかった。本論文は米国の大規模な前向きコホート研究により喫煙状況と膵癌遠隔成績との関連を調べたものである。対象は1986年から2013年までに診断された1037例の膵がんであり、うち485例では診断前のコチニン血中濃度を評価した。コチニンはニコチン代謝物質であり、その血中濃度は喫煙曝露量と比例する。コチニンレベルによって対象を非喫煙者、軽度喫煙者、高度喫煙者に3分割した。
非喫煙者に対する喫煙者の死亡危険比は1.37(95%信頼区間:1.11-1.69)であった。また、1日のタバコの箱数×年数(pack years)は死亡危険を有意に増加させ、非喫煙者に対する60 pack-yearsの死亡危険比は1.49であった。禁煙車の生存期間は禁煙からの期間に関わらず非喫煙者の生存期間とほぼ同等であった。非喫煙者に対する高度喫煙者の死亡危険比は1.76であった。さらに、診断5年以上前のコチニン測定で高度喫煙者と判定された場合、非喫煙者に比べて2.47倍死亡危険リスクが高かった。
喫煙習慣は膵がん患者の明らかな予後不良因子である。今からでも禁煙は遅くない。

2017年4月5日  石井 浩

膵がん切除後補助化学療法ESPAC-4試験:欧州新標準はゲムシタビン+カペシタビン

膵がん切除後補助化学療法ESPAC-4試験:欧州新標準はゲムシタビン+カペシタビン

膵がん切除後の補助化学療法に関しては、欧州連合のESPAC、ドイツのCONKO、日本のJASPACが、大規模ランダム化試験として一級のエビデンスを発信してきた。本試験の前身、ESPAC-3はFUに対するゲムシタビン(Gem)の非劣性、CONKO-001は経過観察に対するGemの優越性、JASPAC-01はGemに対するFU(S1)の優越性を各々検証した。欧米人に対してS1は毒性が強いため、これらのエビデンスから欧米ではGem、日本ではS1が標準薬であった。
ESPAC-4は欧米標準Gemに対するGem+カペシタビンの優越性を検証する試験であり、仮説はハザード比0.82(P=0.032)で見事に検証された。JASPAC-01と同様、試験治療はR1例よりもRO例でより有効であった。試験治療Gem+カペシタビンの毒性は許容範囲内と考えられ、本療法は(欧州の)新標準治療である。
日本のJSAP-04(術後Gem対Gem+S1)の結果が待望される。

2017年2月20日  石井 浩

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