四国がんセンター:医療関係者の方へ

Special recommended references for oncologists 2016年9月

前立腺全摘除術はロボット支援と開腹のどちらが良いのか?

前立腺全摘除術はロボット支援と開腹のどちらが良いのか?

前立腺全摘除術に関して、ロボット支援手術と開腹手術のランダム化比較試験の結果が発表されました。両群163例ずつで(最終解析はロボット支援手術131例、開腹手術121例)、術後6週と12週の時点での排尿機能、性機能は両群で有意差はなく、断端陽性率(ロボット支援手術15%、開腹手術10%)も差はなかったとしています。術後合併症は、ロボット支援手術6例(4%)、開腹手術14例(9%)で有意差はないもののロボット支援手術の方が少ない結果でした。本研究の開始時点で開放手術の術者は1500症例以上経験しているのに対し,ロボット支援手術の術者は2年のロボットfellowship後に200症例しか経験していないという不利な条件下での試験ですが、同等の結果であったと言うことはロボット支援手術の有意性をある程度示しているかもしれません。もちろん論文にあるように今後長期間の観察は必要です。

2016年9月26日  橋根 勝義

局所進行膵がんに対するナノナイフ(不可逆電気穿孔法)の第Ⅰ/Ⅱ相試験(PANFIRE試験)

局所進行膵がんに対するナノナイフ(不可逆電気穿孔法)の第Ⅰ/Ⅱ相試験(PANFIRE試験)

ナノナイフは複数本の細径電極針を腫瘍周囲に穿刺し、電極針間の高電圧短時間パルス通電により、腫瘍細胞にナノサイズの穴をあけて抗腫瘍効果を得る新規の局所療法である。東京医科大学によると、2016年4月現在、米国で50台、欧州で20台が稼働中で、日本では5台導入されている(東京医科大学ナノナイフ治療のしおりより)。本論文は膵がんに対する第Ⅰ/Ⅱ相試験であり、アムステルダム自由大学からの報告である。対象は局所進行膵がん25例で、高圧通電するため金属ステント例、てんかん例、心室性不整脈例は除外された。最大腫瘍径中央値は4.0(3.3-5.0)cmで局所増悪までの期間中央値12ヶ月、生存期間中央値は手技から13ヶ月、診断から17ヶ月であった。25例中10例に23有害事象がみられた。2例でグレード4の有害反応あり、経皮的ドレナージ要する重症膵炎と輸血を要する壊死領域近傍からの十二指腸出血であった。本療法は比較的危険な治療手技といえる。

2016年9月20日  石井 浩

進行膵がんに対するゲムシタビン±IMM-101のランダム化第Ⅱ相試験(IMAGE1試験)

進行膵がんに対するゲムシタビン±IMM-101のランダム化第Ⅱ相試験(IMAGE1試験)

IMM-101は、加熱殺菌されたマイコバクテリウム・オブエンスを含む全身免疫調整剤である。2015年に米国臨床腫瘍学会と世界消化器がん学会で発表された試験が論文として公表された。本試験は2011年から80例予定でスタートし、最終的に110例が登録され、単独群に35例、併用群に75例が割り付けられた。併用群の全生存期間、無増悪生存期間は単独群に比較して良好であった。その傾向は遠隔転移例でより顕著であり、全生存期間中央値は単独群28例4.4ヶ月、併用群64例7ヶ月であった(p=0.01)。
免疫療法といえば免疫チェックポイント阻害薬が現在花盛りであるが、膵がん領域では本剤以外にも免疫調整剤が注目されており、米国ではがんワクチン(GVAX、CRS-207)の開発が進行中である(NCT02243371:STELLAR試験、NCT02451982)。

2016年9月12日  石井 浩

米国における肝細胞がんサーベイランスの有効性

米国における肝細胞がんサーベイランスの有効性

米国の在郷軍人病院ネットワークを利用して、肝細胞がん診断前2年のカルテ調査から肝硬変サーベイランスのインパクトを調べました。対象は887例でHCV陽性が78%で、サーベイランスは全体の46%が受けていました。サーベイランスあり群はなし群に比べて早期例割合、根治的治療割合がともに高く、サーベイランスによる死亡リスク減少は38%と顕著でしたが、病期と治療法を補正すると20%で有意差はぎりぎり(95%信頼区間:0.69-0.94)でした。
著者らはさらに拡大したコホートの中から、肝細胞がんを自然経過した518例を同定して早期発見根治治療の上乗せを除いたサーベイランスそのもののインパクトを調べています(Khalaf N, et al.Clin Gastroenterol Hepatol 2016 Aug 10)。In pressで抄録のみなので今回詳細は紹介はしませんが、「抗癌治療なし」だとサーベイランスがあってもなくても早期例なら生存期間に差はなく(BCLC病期0/A:10.3ヶ月vs. 10.5ヶ月)、進行例でもその差はわずかに2ヶ月(5.2ヶ月vs. 3.4ヶ月)でした。サーベイランスの有用性は、サーベイランスそのもののリードタイム効果ではなくて、より早期にみつけたときの根治治療のインパクトにあるということなのでしょう。逆に云うと早期発見や根治治療のできない地域や国ではサーベイランスの意義は乏しいということでしょうか。

2016年9月5日  石井 浩

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