四国がんセンター:医療関係者の方へ

Special recommended references for oncologists 2016年8月

FOLFOXかソラフェニブか:肝細胞がん化学療法費用対効果分析

FOLFOXかソラフェニブか:肝細胞がん化学療法費用対効果分析

肝細胞がんに対する標準的な化学療法はソラフェニブです。その前はドキソルビシンが暫定標準でした。FOLFOXはソラフェニブ登場以前に当時の標準ドキソルビシンとアジアで大規模な第Ⅲ相試験(EACH試験:http://jco.ascopubs.org/content/31/28/3501)で比較され、残念ながらドキソルビシンに有意な生存期間延長を示せませんでした。
今回の論文は四川大学の医療統計家の先生が書いたFOLFOXとソラフェニブの費用対効果分析です。以前このコラムで紹介(2016年4月26日)した膵がんFOLFIRINOXとゲムシタビン・ナブパクリタキセルの費用対効果分析と同じ著者で、費用対効果の閾値も2万ドル(220万円)で同じです。結果、FOLFOXをソラフェニブに切り替えたときの増分費用効果比(ICER)は93万ドル/QALY、すなわちソラフェニブでもう1年延命するのに必要なのは1億円。費用対効果の閾値より遙かに高額であり、ソラフェニブよりもFOLFOXの方がコスパがよい。
つっこみどころは、ドキソルビシンのコスパが断トツであるのが自明(FOLFOXと生存期間有意差なし、遙かに安価)であることです。

2016年8月22日  石井 浩

腹腔洗浄細胞診陽性の局所限局膵がん:Stage4bの進行がん?

腹腔洗浄細胞診陽性の局所限局膵がん:Stage4bの進行がん?

米国シアトルにあるバージニア・メイソン医療センターからの報告。この病院では以前から膵がんの切除可能性を画像診断と審査腹腔鏡(下腹腔洗浄細胞診)で決定してきました。画像で明らかな遠隔転移がみられなくても、微小な肝転移・腹膜播種が数%にみられるからで、米国では切除前に審査腹腔鏡を行う施設が少なくありません(日本では少数派と思われます)。腹腔洗浄細胞診が陽性であった場合の対応は日米で差があり、米国では遠隔転移例扱いで非切除療法が選択されますが、日本では切除術が行われることがほとんどです(日本では切除目的の開腹下で腹腔洗浄細胞診が行われる事情があります)。腹腔洗浄細胞診陽性例の切除成績は、日本の文献で生存期間中央値8-15ヶ月(23.8ヶ月の外れ値あり)で、日本の外科医は腹腔洗浄細胞診陽性を切除禁忌にしていません。
さて、バージニア・メイソンの成績です。画像で切除可能例の7.8%、局所進行例の16.1%で審査腹腔鏡下腹腔洗浄細胞診陽性(43例)でした。この43例は初回治療で化学療法を受け、経過良好の場合は引き続きケモラジ(15例)、場合によっては切除(1例)を受けていました。生存期間中央値、2年生存割合は13.9ヶ月、26%で、グロス転移を有する例(9.4ヶ月、11%)に比べて明らかに良好でした。欧米の腫瘍外科医は一般的に腹腔洗浄細胞診陽性は進行した全身癌だと認識していますが、著者らは全身治療で効果があった例ではケモラジや切除など局所療法を考慮すべきで、腹腔洗浄細胞診陽性は普通の遠隔転移癌とは異なるエンティティにすべきと主張しています。

2016年8月8日  石井 浩

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