四国がんセンター:医療関係者の方へ

Special recommended references for oncologists 2016年6月

切除可能境界例に対するmFFX療法・カペシタビン化学放射線療法の逐次術前補助療法:A021101

切除可能境界例に対するmFFX療法・カペシタビン化学放射線療法の逐次術前補助療法:A021101

米国国立がん研究所(NCI)がスポンサーとなる臨床試験グループ、Allianceの膵癌術前療法試験です。切除可能境界例とは、切除可能例と局所進行(切除不能)例の境界例のことです。技術的に切除可能であっても、動脈浸潤等で予後不良が予想されることから非手術になることが多い病態です。
膵がんに対しても抗腫瘍効果の著しい治療が近年登場してきていることから、術前療法で切除可能になるのではと注目を集めている領域です。また、膵がんは小さくみつけても、オカルト転移が少なくないことから、手術療法単独の限界は明らかです。そこで補助療法の出番になりますが、膵がん切除術は侵襲が大きく、術後補助療法を受けられる集団は限られています。その点でも術前補助療法は手術とセットで受容できる集団が多いことから、その有用性に関心が高くなっています。
本試験治療は最も強力な多剤併用化学療法のひとつであるmodified FOLFIRINOX(mFFX)療法、化学放射線療法の逐次療法のあとで手術を行い、術後もゲムシタビン補助療法を加えるフルコースになります。登録23例中22例が治療開始となり、14例がグレード3以上の有害事象を経験しつつ、15例が膵切除を受けました。手術15例中14例にR0手術が可能で、2例で病変は完全寛解でした。治療22例の生存期間中央値は21.7ヶ月でした。
従前なら非切除となる集団ですが、今の非手術療法だとこの集団で生存期間中央値21.7ヶ月はそれほど良好な結果とはいえません。しかし、何と言っても手術のメリットは長期生存ですので、本試験では今後の経過観察の結果に期待したいところです。

2016年6月27日  石井 浩

腎がん手術後のスニチニブあるいはソラフェニブによるアジュバント療法

腎がん手術後のスニチニブあるいはソラフェニブによるアジュバント療法

完全切除がなされた腎がん(T1b, G3-4以上)に対するスニチニブ、ソラフェニブ、プラセボ投与の二重盲検試験です。1943例が3群に振り分けられ、1年間内服治療をします。非再発生存率の中央値は、スニチニブ群で5.8年、ソラフェニブ群で6.1年、プラセボ群で6.6年、各群間に有意差は認めませんでした。スニチニブとソラフェニブ投与群で高血圧や手足症候群の有害事象が多く、45%で投与中止になっています。また減量して開始しても30%で投与中止になりました。腎がん手術後の初めてのアジュバント試験でしたが、チロシンキナーゼ阻害薬はアジュバント使用で効果は認めませんでした。

2016年6月23日  橋根 勝義

膵癌切除後補助化学療法S-1 vs. ゲムシタビン:JASPAC 01試験

膵癌切除後補助化学療法S-1 vs. ゲムシタビン:JASPAC 01試験

CONKO-001試験の結果から、膵癌切除後補助療法の標準治療は世界的にゲムシタビン単独療法と考えられていました。JASPAC 01試験は、簡便性、安全性に優れるS-1がゲムシタビンに遜色ない非劣性の遠隔成績を証明するための試験でした。結果は非劣性どころか全生存期間のハザード比が0.57、驚異の圧勝で、日本における膵癌診療が大きく変わるピボタル試験になりました。本試験は打ち切り例がほとんどいなく、その生存曲線は極めて固いエビデンスを物語っています。
ところで、こんな大差で有効中止になっているのに、なぜ観察期間中央値が6年半を超えるまでに最終解析と論文公表が遅れたのでしょうか。その答えは論文中に示されています。徹底的に監査を行い、「日本の論文=研究不正」の疑いの芽を一年かけて徹底的に摘む時間が必要だったようです。

2016年6月20日  石井 浩

進行肝細胞がんの対するソラフェニブ vs. 定位放射線療法:費用対効果解析

進行肝細胞がんの対するソラフェニブ vs. 定位放射線療法:費用対効果解析

切除不能進行肝細胞がんの標準治療はソラフェニブ療法である。しかし、局所進行例に対しては放射線療法が良い治療成績を示すことが観察研究や単アームの臨床試験で示されている。このため、日本では(エビデンスレベルが低いにも関わらず)保険収載されており、その費用はおよそ60万円である。
本論文は台湾で行われたソラフェニブと定位放射線療法の費用対効果分析であり、データはソラフェニブのエビデンスを確立させたSHARP試験とトロント大学で行われた定位放射線療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験が用いられた。モデルのソラフェニブ薬剤費は180万円、定位放射線療法費は70万円である。
彼らの計算による増分費用効果比(ICER:定位放射線療法をソラフェニブに切り替えたとき、健康な1年を得るのに必要な差し分の費用)は1300万円/QALYであり、費用対効果の閾値:740万円より高い。よって台湾における進行肝細胞がん定位放射線療法のコスパは高い。
費用対効果の閾値は、イギリス、日本、アメリカで350万円、500万円、670万円とする資料があり、台湾で740万円は?と思います(中国本土では220万円とする論文を既に紹介しました)。つまり、費用対効果解析は所変われば品変わる代物で、インターナショナル・ジャーナルに英文で掲載するべきものなのか、ちょっと訝しむところがあります。

2016年6月6日  石井 浩

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