四国がんセンター:病院をご利用の方へ

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「遺伝」という言葉に暗いイメージをいだく人が多いのではないかと思います。おそらく遺伝する疾患が見つかった場合、不等な差別を恐れて隠そうと考える人が多いでしょう。実際にそういった社会問題が起きていると聞きます。しかし、遺伝子の変異は誰にでも起こりうることであり、すでに起こっているかもしれないことを理解していただきたいと思います。例えば、受精という生物の発生過程は非常に不安定で、多くの新たな遺伝子変異が起こることが知られています。ある報告では、受精したばかりの卵は50から60%に何らかの遺伝子変異が存在するとされています。なかでも大きな変異があるものは、着床できなかったり、自然流産の形で淘汰され、最終的には生命に差し迫った影響を及ぼさない軽微な変異を持つもののみが生まれてきます。この場合、遺伝子変異は生まれつき持った遺伝子の個性となります。変異はその後、遺伝という形で子孫に受け継がれることを考えれば、遺伝の問題が特別ではなく、誰にでも等しく起こりうることが分かるでしょう。

遺伝子検査を行うとき、世界共通のデータベースに遺伝子配列を照らし合わせます。このデータベースに登録されている遺伝子配列を「野生型」といいます。「正常型」とは呼びません。そして、疾患と明らかに結びつくことが報告されている変異を「病的変異」と呼びますが、それが明らかでない、あるいは報告例がない変異を「多型」と呼びます。つまり遺伝子の個性という言葉に相当するでしょう。遺伝子の「多型」は誰にでもありえることです。

ヒトゲノムプロジェクトをはじめとする近年の分子遺伝学の進歩には目をみはるものがあります。これによって得られた情報は将来医療に役立てられると思われます。しかし、欧米諸国に比べて日本では遺伝子情報を生かした診療体制はまだまだ不十分です。日本における家族性腫瘍診療の体制は、今後我々で模索しながら作ってゆかねばならないでしょう。四国がんセンターにおける我々の活動が、その一助になれば幸いです。