四国がんセンター:病院をご利用の方へ

部署案内:診療科・各診療部門案内:泌尿器科:がん情報:前立腺がん去勢抵抗性(ホルモン抵抗性)前立腺がんの治療について

去勢抵抗性(ホルモン抵抗性)前立腺がんの治療について

前立腺がんは精巣や副腎で作られた男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激を受けて増殖します。この男性ホルモンの産生を押さえたり、前立腺内への取り込みを押さえたりすることでがんを治療していくことが前立腺がんに対するホルモン治療です。しかし、前立腺がんに対するホルモン治療は永久的に効果が持続するわけではありません。初回のホルモン治療の平均的な効果持続期間は3年と言われています。効果が無くなると、男性ホルモンが低く抑えられているにもかかわらず、前立腺がんは増殖します。この様な状態になった前立腺がんを「去勢抵抗性前立腺がん」と呼びます。去勢抵抗性前立腺がんになっても、はじめのうちは内服薬の変更などでがんを抑えることができますが、この効果はそれほど持続しません。
内服薬の効果が無くなった場合、去勢抵抗性前立腺がんの治療としてドセタキセルによる化学療法(抗がん剤治療)がこれまで行われてきました。

2014年に、ドセタキセル以外の治療薬が登場し、使用できるようになりました。内服薬では、イクスタンジ®とザイティガ®、注射薬ではジェブタナ®です。内服薬はドセタキセルによる治療を行っていない方にも使用できます。ジェブタナ®はドセタキセルによる治療を行った方のみにしか使用できません。これら3つの薬剤の効果を表に示します。

ドセタキセル治療後

  ザイティガ® イクスタンジ® ジェブタナ®
生存期間の中央値 15.8ヶ月 18.4ヶ月 15.1ヶ月
対象と比較した場合の
生存期間の延長
4.6ヶ月 4.8ヶ月 2.4ヶ月
PSA再発までの期間の中央値 10.2ヶ月 8.3ヶ月 6.4ヶ月
PSAに対する有効率
(PSA50%以上低下)
29.0% 54.0% 39.2%
日本人でのデータ
PSAに対する有効率 28.3% 28.9% 29.3%
PSA再発までの期間の中央値 3.6ヶ月 4.1ヶ月 3.7ヶ月

ドセタキセル治療前

  ザイティガ® イクスタンジ®
生存期間の中央値 35.3ヶ月 32.4ヶ月
対象と比較した場合の生存期間の延長 5.2ヶ月 2.2ヶ月
画像での再発までの期間の中央値 16.5ヶ月 未達
PSAに対する有効率
(PSA50%以上低下)
61.5% 78.0%
化学療法開始までの期間 25.2ヶ月 28.0ヶ月

上記の表は、各薬剤の臨床試験での結果です。そのため、これらの薬剤を直接比較したデータはありません。どの薬剤の効果が一番良いのか、どの順番で使用すべきなのか、などは不明です。実際には、患者さんの状態や前立腺がんの状況により使用する薬剤を決めることになります。最近の報告では、薬剤の間に交差耐性(1種類の薬剤に対して耐性を獲得すると同時に別の種類の薬剤に対する耐性も獲得すること)があることがわかっており、2回目以降に使用する薬剤は効果が弱くなります。

Q:もし、この治療を受けなかったらどうなりますか?

A:現在症状が全くなく、進行の遅い前立腺がんであれば何らかの症状が出るまでに数年間かかる場合があるかもしれません。逆に進行が早ければ数ヶ月後には何らかの症状が出現してくる場合もあると思われます。現在症状がある人はさらに悪化します。痛みなど多くの症状は現在の緩和医療でほとんど取り除くことができると思われますが、血尿などコントロールしにくい症状を認めることがあります。ただ、症状を緩和する治療は日々進歩しており、つらい症状を抱えたまま日々生活することはまずありません。

治療内容

イクスタンジ®は1回4カプセルを連日服用します。

ザイティガ®も1回4カプセルを連日空腹時に内服します。ザイティガ®の場合はプレドニン®という副腎皮質ステロイド(内服)も併用します。

ジェブダナ®は3週間ごとの点滴治療です。ジェブダナ®の投与時間は1時間ですが、投与30分前までに副作用予防の内服薬や点滴があります。また、治療中はプレドニンの内服を継続します。点滴は1日だけで2日目から点滴はありません。初めの1コースは合併症の出現・程度を確認するために入院にて行いますが、2コース目以降の治療は外来で治療可能です(通院治療室で行います)。治療は通常3週毎に繰り返して行いますが、副作用などで4週毎になる場合もあります。

これら3薬剤の治療中、これまで行ってきたホルモン治療(ゾラデックス®、リュープリン®、ゴナックス®)は継続します。また、骨病変の治療としてゾメタ®やランマーク®を開始していればこれらの治療も継続します。

内服薬や点滴の治療は、

  1. 合併症により治療継続が困難となった場合
  2. 治療にもかかわらず、病状が悪化してきた場合

に中止となります。ジェブタナ®初回治療で入院中は合併症(主に骨髄抑制)の確認の為に頻回に採血が必要になりことがあります。時に連日の採血となる場合もあります。イクスタンジ®とザイティガ®は外来治療ですので原則2週ごとの採血になります。

費用

  イクスタンジ® ザイティガ® ジェブタナ®
薬剤のみ(1ヶ月分) 約38万円 約44万円 約59万円

ジェブタナ®は点滴治療を1回受けた場合で計算しています。

薬剤費は健康保険の適応となります。患者さんの負担割合に応じてこれら薬剤費の1~3割を負担していただきます(実際には薬剤費以外にも検査料、診察料、入院費用等も必要になります)。また、自己負担限度額を超えた場合には高額療養費制度が適応されます。詳細につきましては当院2階にあるがん相談支援センターや、それぞれの健康保険の窓口等にお問い合わせください。

合併症

(合併症の頻度は日本人に対するものを記載していますが、日本人での頻度が不明なものは海外の臨床試験のデータを記載しています)

イクスタンジ®によるもの

  1. 高血圧(14.9%)
  2. 便秘(14.9%)
  3. 疲労(12.8%)、食欲不振(12.8%)、体重減少(10.6%)、心電図異常(10.6%)
  4. けいれん発作(0.2%):頻度は非常に少ないのですが、注意が必要です。
  5. その他、海外では筋・骨痛、頭痛などの報告があります。

ザイティガ®によるもの

  1. 肝機能障害(13%程度)、重篤な障害も報告されており、注意が必要です。
  2. 低カリウム血症(8.4%)、高脂血症(7.4%)、高血圧(4.2%)
  3. 疲労(24.6%)、ほてり(15.2%)
  4. 悪心(13.4%)、嘔吐(6.9%)、便秘・下痢(約8%)
  5. 末梢性浮腫(12.0%)
  6. 頻度は非常に少ないのですが重大なものに、心不全などの心障害が報告されています。

ジェブタナ®によるもの

  1. 骨髄抑制:非常に重要で、高頻度に起こります。
    骨髄抑制の中で白血球減少が100%に出現します。白血球減少が確認されると白血球を増やす注射を使用しますが、この時期の感染症は致命的で注意が必要です。また、感染症がなくても発熱する場合があり、点滴による治療が必要になります(発熱性好中球減少;54.5%)。また、貧血(29.5%)や血小板減少(4.5%)が重度な場合には輸血が必要になります。
  2. 疲労(54.5%)、悪心(47.7)、下痢(45.5%)、食欲不振(36.4%)、この中で重篤なものは、疲労:6.8%、悪心:6.8%。下痢:4.5%、食欲不振:4.5%でした。
  3. 肝・腎機能障害(38.6-93.2%)、重篤な腎機能障害は4.5%、1.0%で腎不全の報告があります。
  4. 末梢神経障害(手足のしびれ)22.7%と報告されていますが、重篤なものは報告されていません。軽度の味覚異常が27.3%に認められています。
  5. 浮腫(手足のむくみ)13.6%と報告されていますが、重篤なものはありません。
  6. 消化管出血(1.0%)プレドニン内服により発症しやすくなります。みぞおちの痛み、黒色便などありましたら医師にお伝えください。頻度は非常に少ないですが、消化管穿孔(穴が明くこと)や腸閉塞などの報告もあります。
  7. 感染症(16.1%)、敗血症や肺炎などの感染症が起こることがあります。重症の場合には致死的な合併症になる恐れがあります。息苦しさなどありましたら医師にお伝えください。また、肺炎チェックのために抗がん剤投与前には適宜胸部レントゲン写真を撮ります。
  8. 不整脈(1.0%)点滴中は十分注意して行っていますが、異常があればすぐにお伝え下さい。
  9. その他頻度は少ない(1%未満)が重篤なもの:アナフィラキシーショック、肝不全、急性膵炎、間質性肺炎、などの報告があります。

採血などにより、異常の早期発見に努めますが、何かあればすぐにお知らせください。患者さんからの情報が合併症の早期発見のために重要です。早期発見できれば適切な対応策がとれ、重症化せずにすみます。

健康被害が生じた場合について

この治療によって健康被害が生じた場合の特別な補償制度はありませんが、病院で誠意を持って治療に当たらせていただきます。治療費は保険を使用した場合の一般診療で行われます。

(文責:橋根、2016年2月)

このページの先頭へ