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治療法の選択に関して

治療法はセミノーマと非セミノーマで異なります。また、ステージ毎にそれぞれ推奨される治療法があります。
セミノーマの治療(表3)で特徴的なのは、放射線感受性が非常に高いことから、選択肢の中に放射線治療が組み込まれていることです。そのため、Ⅰ(1)期の場合は予防的に、Ⅱ(2)期の場合は、5cm未満の後腹膜リンパ節転移であれば、放射線照射が選択肢の中に含まれます。照射部位は、傍大動脈から患側の総腸骨動脈領域で、照射量は他のがん腫より少なくてよく、20-30Gyの照射が施行されます。しかし、セミノーマの場合、化学療法も非常に効果的であることから、放射線治療の選択に当たっては、その効果と不利益を十分に理解した上で治療を受けることが重要です。

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セミノーマの治療

表3:セミノーマの治療

Ⅰ(1)期 経過観察
予防的放射線照射
カルボプラチン単剤で1-2コースの化学療法
Ⅱ(2)A期 放射線照射
化学療法(BEP3コース/EP4コース)
Ⅱ(2)B期以上 化学療法(BEP3コース/EP4コース)

Ⅰ(1)期のセミノーマの場合

  1. 経過観察(高位精巣摘除術のみ)
  2. 予防的放射線照射
  3. カルボプラチン単独で1-2コースの化学療法

が選択肢にあります。Ⅰ(1)期のセミノーマでは高位精巣摘除術のみでは10-15%の患者さんが再発します。腫瘍が4cm以上であることや病理結果で精巣網に浸潤があることが再発の危険因子です。術後予防的放射線照射をすることで再発率を5%以下に低下させることができます。経過観察と放射線治療を直接比較した臨床試験はありませんが、約500例の観察報告で、放射線群の再発率が低かったことが報告されています(5.7%と16.4%)。また、最近では抗がん剤の一つであるカルボプラチン単剤単独投与が放射線照射と同等の再発予防効果があることが報告されました。カルボプラチンと放射線治療は約1500例でランダム化比較試験が行われ再発率の同等性が証明されました(観察期間6.5年)。カルボプラチンの治療回数については1コースよりも2コースのほうがより再発率を低下させたとの報告がいくつかあります。これらの報告では、有害事象も1コースと2コースでほとんど差がないことから可能であれば2コース施行すれば再発率をより低下させることができるとしています。しかし、カルボプラチンによる補助化学療法は比較的新しい治療法であり、長期成績や晩期合併症についてのデータはまだ不十分です。
Ⅰ(1)期セミノーマでは再発した場合でもほぼ100%で治癒可能です。補助療法(放射線や化学療法)による二次がん発生など長期的な不利益を考えると、再発の危険因子(腫瘍サイズが4cm以下、精巣網への浸潤)がない症例は経過観察の良い適応だといえます。経過観察の最大の利点は、補助療法をしなくても再発しない80-85%の患者さんに不必要な治療をしなくてすみ、治療の関連した不利益を回避できることです。経過観察の場合には再発の早期発見のために手危機的な画像検査が必須となります。もちろん補助療法を施行した場合にも必要ですが、回数が異なります。
以上のことから当院では、Ⅰ(1)期のセミノーマに対しては経過観察を基本的に推奨し、追加治療が必要な場合にはカルボプラチンを1コース施行しています。

Ⅱ(2)A期(後腹膜転移巣が5cm未満)のセミノーマの場合

  1. 放射線照射
  2. 化学療法

が選択肢となります。放射線治療後の再発率は、リンパ節転移のサイズが2cm以下なら0-11%、2-5cmなら9-18%と報告されています。放射線治療は欧米ではよく選択されるようですが、照射線量や照射範囲に関しての比較試験はありません。放射線治療では晩期合併症の二次がん発生が問題となることや、放射線治療後に再発してもその後の化学療法によって治癒できることが多いため、照射線量を控える傾向にあります。転移巣が2cm以下なら30Gy、5cm以下なら36Gyが多くの施設で推奨されています。
化学療法に関しては、カルボプラチン単独療法やカルボプラチンと放射線治療の併用療法の報告などもありますが、一般的にはBEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)やEP療法(エトポシド、シスプラチン)が施行されます。BEP療法は現時点での精巣がんの初回化学療法における標準治療です。Ⅱ(2)A期セミノーマはIGCC分類で予後良好に分類されますので、BEP療法を3コース行います。BEP療法ではブレオマイシンの肺障害が問題とされ、40歳以上や腎機能不良例などでは肺障害が起こりやすいため、ブレオマイシンを除いたEP療法を4コース行います。予後良好群におけるEP療法4コースとBEP3コースは同等であることが示されています。

Ⅱ(2)B期以上(後腹膜転移巣が5cm以上、あるいはリンパ以外の転移)のセミノーマの場合

  1. 化学療法

が標準治療で、他の選択肢はありません。化学療法はIGCC分類により決定されます。予後良好群であればBEP療法3コースあるいはEP療法4コースが施行され、予後中間群であればBEP療法4コースが施行されます。

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非セミノーマの治療

非セミノーマの治療について説明します。非セミノーマはセミノーマと違い放射線感受性はありませんので治療選択肢の中に放射線治療は含まれません(表4)。

Ⅰ(1)期の非セミノーマの場合

  1. 経過観察(高位精巣摘除術のみ)
  2. 後腹膜リンパ郭清術
  3. 化学療法(BEP療法2コース)

が選択肢としてあります。Ⅰ(1)期の非セミノーマでは高位精巣摘除術のみでは約30%に再発が見られます。また、後腹膜リンパ郭清を行った場合、約30%にリンパ節転移が認められます。再発を予測する最も重要な因子は、病理結果での脈管侵襲の有無であることが報告されており、脈管侵襲がある症例では50-75%に転移が出現しますが、無い症例では15-20%です。その他の予後因子としては、病理結果の組織型で胎児性がんが優勢であることなどが報告されています。
後腹膜リンパ郭清術や化学療法を追加することで95%以上の高い非再発率が得られますが、約70%の患者さんは追加療法なしでも再発しないため、過剰治療を行ったことになります。また、再発転移が起こったとしてもほとんどの場合化学療法で治癒可能であるため、再発リスクの低い患者さん(脈管侵襲がない)では、経過観察が推奨されます。この場合、5年以上の長期観察が必要で、定期的な画像検査が必須となります。
経過観察を希望しない場合には、後腹膜リンパ郭清術か化学療法を行います。後腹膜リンパ郭清を行った場合、30%にリンパ節転移が認められ、その場合には郭清のみでは30%が再発するため、BEP療法を2コース追加します。
脈管侵襲のある高リスク患者さんではBEP療法2コースが推奨されます。2コースのBEP療法では妊孕性や性機能への影響は少ないとされていますが注意は必要です。高リスク患者さんで化学療法を希望されない場合には、経過観察か後腹膜リンパ郭清術が選択肢になります。

表4:非セミノーマの治療

Ⅰ(1)期 脈管侵襲なし 経過観察
後腹膜リンパ郭清
脈管侵襲あり 経過観察
BEP2コース
後腹膜リンパ郭清
Ⅱ(2)A 2cm未満でマーカー陰性 後腹膜リンパ郭清(経過観察)
予後良好 BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良 BEP4コース
Ⅱ(2)B以上 予後良好 BEP3コースまたはEP4コース
予後中間/不良 BEP4コース

Ⅱ(2)A期の非セミノーマの場合

  1. 化学療法

が標準的治療法ですが、腫瘍マーカーが正常で後腹膜リンパ節転移が2cm未満の場合、後腹膜リンパ郭清術や経過観察も選択肢となります。経過観察では再発率が高いため6週毎の厳重フォローが必要になります。後腹膜リンパ郭清術を施行した場合、約10%にはリンパ節転移を認めないことが報告されていますが、残りの約90%には病理学的にリンパ節転移が証明されます。この場合郭清だけでは不十分で、化学療法を追加します。通常BEP療法を2コース行います。
化学療法はIGCC分類で予後良好群であればBEP療法を3コース、あるいはEP療法を4コース行います。IGCC分類で予後中間あるいは不良群ではBEP療法を4コース行います。

Ⅱ(2)B期以上の非セミノーマの場合

  1. 化学療法

が標準治療で、他に選択肢はありません。化学療法はIGCC分類により決定され、予後良好群であればBEP療法を3コース、あるいはEP療法を4コース行い、予後中間あるいは不良群ではBEP療法を4コース行います。

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