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手術療法

手術には腎摘除術と腎部分切除術があり、それぞれの手術に開腹手術と腹腔鏡手術があります。

腎摘除術は、腎動脈と腎静脈を結紮して腎をすべて取り出す手術です(場合によっては副腎も取り出します)。一方、腎部分切除術は、腫瘍の部分のみを切り取り、腎臓を残す手術です。手術自体は腎摘除術のほうが容易で、腎部分切除術は切り取った部分からの出血や尿漏れなど、腎摘除術にはない合併症が発生する危険性があります。また、腎部分切除術では、残存腎への再発も心配されますが、4cm以下の腫瘍であれば残存腎への再発は1%程度と報告されています。腎摘除術か部分切除術かの選択ですが、一般的に腫瘍径が4cm以下であれば腎部分切除術の適応になります。逆に4cmを超える腫瘍であれば腎摘除術が一般的になります。最近の研究では、腎摘除術後長期間経過すると腎機能低下をきたし、そのことに起因する合併症(たとえば心血管系の病気)での死亡率が上昇することが報告されています。腎部分切除術では腎摘除術に比較し腎機能の低下は少ないため、部分切除可能な4cm以下の腫瘍はやはり部分切除術を第一に考えるべきです。最近では腎機能温存の観点から、腎部分切除術の適応は徐々に拡大されてきており、4cmを超えても技術的には可能とされる報告がみられるようになってきました。しかしまだ研究段階で一般的ではありません。単腎症例、両側同時性症例、腎機能低下症例、VHL病などの場合は4cmを超えても適応となります。一方、4cm以下の腫瘍であっても、腫瘍が腎静脈などに浸潤している場合などには腎部分切除術が不可能な場合があります。

開腹手術か腹腔鏡手術かの基準は施設によって若干の差がありますが、やはり低侵襲手術の時代ですので可能な限り腹腔鏡で行っている施設がほとんどです。ただ、腫瘍が周囲に進行している場合や、下大静脈内に進行している場合などには通常腹腔鏡手術はできません。開腹による手術方法は腫瘍の大きさや場所により切開方法が異なります(図1)。腎摘除術の場合は正中切開が、部分切除術の場合には側臥位による腰部斜切開がよく選択されます。

腹腔鏡による手術は、トロッカーと呼ばれる3-4カ所の操作用孔(5-12mm)を介し、カメラと器具を挿入して行われます。腎摘除術の場合には腎を取り出すために5cm程度の切開が必要になりますが、部分切除術の場合にはトロッカーのみの傷ですみます。

追加説明

腎がんでは転移部位を手術で切除することがあります。一般にがんが転移すると手術は行われませんが、腎がんの場合、転移巣に対しても、手術を第一に考えます。全身状態が良好で転移巣が切除可能な場合には、手術により転移巣を切除することで生存期間の延長が期待され推奨されています。しかしこれは後述する免疫療法しかなかった時代の結果で、分子標的薬が使用できるようになった現在の状況ではまだ証拠は不十分です。今後徐々に明らかにされてくるものと思われます。
腎がんは、進行してくると静脈内に腫瘍塞栓を形成することがあります。腎静脈から下大静脈や心臓まで広がる場合もあります。このような場合でもリンパ節などに転移を認めない場合には、手術により生存率の延長が期待されるため全身状態が良好であれば手術をします。しかし、腫瘍塞栓の程度に応じて血行バイパス術の併用や人工心肺装置の使用が必要となり、術中の侵襲や危険性が高くなるため、手術適応には慎重な判断が必要となります。
腎がんの治療は手術が中心になりますが、全身状態により手術が困難な場合や、手術を拒否した場合などに低侵襲な経皮的局所療法が考慮されることがあります。経皮的局所療法には、ラジオ波焼灼術(RFA:radiofrequency ablation)と凍結療法があります。ラジオ波焼灼術はラジオ波を用いて腫瘍を高温にすることで、凍結療法は逆に低温にすることでがん細胞を破壊します。これらの治療は当院では行っていないため、他院へ紹介することになります。

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化学療法(分子標的薬)

近年、がん細胞と正常細胞の構造の違いやがん細胞の増殖のパターンなどが徐々に明らかとなってきています。がん細胞において、その特徴となっている部分、すなわち増殖や進行に関係する分子をターゲットにして開発されたのが分子標的薬です。理論的には、がん細胞にだけ作用して、正常細胞への影響は少ないはずです。しかしながら、実際にはこれまでになかったような副作用が出現し、中には重篤な副作用も発症することがわかりました。2008年に分子標的薬が本邦でも認可されましたが、それまで転移のある腎がんの治療は、インターフェロンなどの免疫療法しかありませんでした。免疫療法の有効率は低く、生存に関する有益性も少ないままでしたので、分子標的薬の出現により転移のある腎がんの治療は大きく様変わりしました。現在、腎がんに対しては6種類の分子標的薬が使用可能です。
分子標的薬などの新規薬剤は、大規模な臨床試験において従来の治療と比較し有用性が確認されてから許可されます。たとえば、下記の表において、ネクサバール®はサイトカイン(免疫療法)治療歴のある人に使用され、コントロール薬である偽薬(プラセボ)を内服した人に比べ有用性が認められたので使用できるようになりました。

分子標的薬 コントロール薬 奏功率 無増悪生存期間中央値
(コントロール薬との差)
生存期間中央値
(コントロール薬との差)
ネクサバール® プラセボ 10% 5.5ヶ月(2.7ヶ月) 17.8ヶ月(なし)
スーテント® IFN 47% 11.0ヶ月(5.9ヶ月) 26.4ヶ月(なし)
アフィニトール® プラセボ 1% 4.0ヶ月(2.1ヶ月) 未達
トーリセル® IFN 8.6% 3.8ヶ月(1.9ヶ月) 10.9ヶ月(3.6ヶ月)
インライタ® ネクサバール® 19.6% 8.3ヶ月(2.6ヶ月) 20.1ヶ月(なし)
ヴォトリエント® スーテント® 31% 8.4ヶ月(なし) 28.3ヶ月(なし)

奏功率:腫瘍が30%以上縮小する
無増悪生存期間:腫瘍が悪化せず、薬の効果がある期間

この表を見るとスーテント®の有効率が最も高いように思えますが、そうではありません。これら6種類の薬剤を直接比較した臨床試験はありませんし、対象患者が違うため、有効率の比較を直接することが出来ません。

各薬剤について簡単に説明します。

ネクサバール®

  • サイトカイン(インターフェロンなどの免疫療法)の治療歴のある人に対して試験がなされました。
  • ネクサバール®と比較された薬はプラセボ(偽薬で薬ではありません)です。
  • 奏功率は10%でした。
  • 無増悪生存期間はネクサバール®で5.5ヶ月、対照薬が2.7ヶ月でネクサバール®の方が延長しました。
  • 生存期間には差はありませんでした。
  • 副作用は、手足症候群、高血圧、肝機能異常などが主なものです。
  • 日本ではこの薬が一番に認可されました。

スーテント®

  • 何の治療も受けていない人に対して試験がなされました。
  • 対照薬はインターフェロンです。
  • 奏功率は47%です(インターフェロンは12%)。
  • スーテント®の無増悪生存期間は11ヶ月でインターフェロンに比べ有意に延長しました。
  • 生存期間はスーテント®で26.4ヶ月、インターフェロンで21.8ヶ月とスーテント®が若干延長していますが、有意差はありません。
  • 重篤な副作用は高血圧12%、倦怠感11%、下痢9%、手足症候群9%です。
  • 重篤な血液毒性、好中球減少は15%、血小板減少は8%と報告されていますが、日本人の副作用の頻度はかなり高く、好中球減少が51%、血小板減少が55%と報告されています。また甲状腺機能低下も22%に見られます。

アフィニトール®

  • ネクサバール®やスーテント®の治療後の再発症例に対して試験がなされました。
  • 対照薬はプラセボ(偽薬)です。
  • 奏功率は47%です(インターフェロンは12%)。
  • 奏功率は1%、無増悪生存期間はアフィニトール®で4.6ヶ月、プラセボで1.8ヶ月、アフィニトール®が良い結果でした。
  • 副作用は胃炎、倦怠感、貧血が主なものです。

トーリセル®

  • 高リスクグループで治療を受けていない人を対象に試験がなされました。
  • 対照薬はインターフェロンです。
  • トーリセル®は注射薬で、1週間に1度点滴で治療します。
  • 奏功率は8.6%、無増悪生存期間は3.8ヶ月で対照薬のインターフェロンより有意に延長しました
  • 全生存期間も有意に延長しました(10.9ヵ月 vs 7.3ヵ月)。
  • 主な副作用は発疹、口内炎、高血糖などです。

インライタ®

  • インターフェロンやスーテント®などの治療歴がある人を対象に試験がなされました。
  • 対照薬はネクサバール®です。
  • 奏功率はインライタ®で19.6%、ネクサバール®で9.2%でした。
  • 無増悪生存期間はインライタ®で6.8ヵ月、ネクサバール®で4.7ヵ月であり、インライタ®群が良い結果でした。
  • 全生存期間には差はありませんでした。
  • 主な副作用は、高血圧、手足症候群、発声障害、蛋白尿でした。

ヴォトリエント®

  • 何の治療も受けていない人を対象に試験がなされました。
  • 対照薬はスーテント®です。
  • 奏功率はヴォトリエント®で高く、統計学的に有意差が認められました。(ヴォトリエント®で31%、スーテント®で25%)
  • 無増悪生存期間はヴォトリエント®で8.4ヵ月、スーテント®で9.5ヵ月で有意差はありません。
  • 全生存期間はヴォトリエント®で28.3ヵ月、スーテント®で29.1ヵ月で有意差はありません。
  • 主な副作用は、下痢53.4%、高血圧42.8%、疲労38.4%、肝機能障害35.1%、悪心33.9%、毛髪変色32.9%、食欲減退28.9%、味覚異常21.8%、嘔吐21.4%、手掌・足底発赤知覚不全症候群20.7%でした。

以下の表に各薬剤の副作用をまとめました。これ以外にも頻度の少ないものが数多くあります。

頻度の高いもの
(10%以上)
重篤なもの
(G3で5%以上)
ネクサバール® 手足症候群(57%)、高血圧(34%)、下痢(19%)、脱毛(17%)、アミラーゼ(14%)、発疹(14%)、肝機能異常(11%) 手足症候群、肝機能異常
スーテント® 血小板減少(61%)、手足症候群(37%)、甲状腺機能低下(36%)、高血圧(35%)、白血球減少(33%) 血小板減少、白血球減少、高血圧、手足症候群
アフィニトール® 口内炎(44%)、発疹(30%)、貧血(28%)、疲労(25%)、下痢(24%) 間質性肺炎、高血糖、貧血
トーリセル® 発疹(59%)、口内炎(57%)、コレステロール(43%)、食欲不振(37%)、高血糖(32%) 高血糖、口内炎、間質性肺炎、感染症、胸水
インライタ® 高血圧(76%)、手足症候群(71%)、下痢(63%)、発声障害(55%)、疲労(53%)、蛋白尿(40%)、甲状腺機能低下(39%)、口内炎(32%) 高血圧、手足症候群、疲労、蛋白尿、食欲不振
ヴォトリエント® 下痢(53.4%)、高血圧(42.8%)、疲労(38.4%)、肝機能障害(35.1%)、悪心(33.9%)、毛髪変色(32.9%)、食欲不振(28.9%)、味覚異常(21.8%)、手足症候群(20.7%) 高血圧、肝障害、疲労、下痢、手足症候群

以上のように、各薬剤にはそれぞれ特徴があり、また出現する副作用も違います。また、欧米人と日本人とで副作用の出現率が異なることにも注意が必要です。

さて、問題はどの薬剤を使用するかです。ガイドラインでは各薬剤に対して行われた臨床試験の対象者をもとに推奨する薬剤を決めています。以下にヨーロッパ泌尿器科学会から出されたガイドラインを示します。一つ例をとってみると、治療を受けていない人(ファーストライン)で淡明細胞がん、高リスクグループ(poorリスク)ならトーリセルが推奨される、ということになります。ただ、このガイドラインはあくまで参考にしかなりません。実際には患者さんの状況は一人一人違うのでその都度最適な治療を考えることになります。

リスクグループについて:
全身状態や貧血、カルシウム値など5つのリスク因子の内、3つ以上のリスク因子があれば高リスクグループ(poorリスク)、1-2つあれば中間リスクグループ(intermediateグループ)、全くなければ低リスクグループ(goodリスク)となります。
組織型および治療ライン リスクおよび前治療 標準治療
淡明細胞がん ファースト
ライン治療
低リスク
または
中間リスク
スーテント®
ヴォトリエント®
高リスク トーリセル®
セカンド
ライン治療
サイトカイン
治療後
ネクサバール®
インライタ®
ヴォトリエント®
チロシンキナーゼ阻害剤投与後 アフィニトール®
インライタ®
ネクサバール®
サード
ライン治療
チロシンキナーゼ阻害剤投与後 アフィニトール®
mTOR投与後 ソラフェニブ®
非淡明細胞がん スーテント®
アフィニトール®
トーリセル®

チロシンキナーゼ阻害剤:ソラフェニブ®、スーテント®、インライタ®、ヴォトリエント®
mTOR:アフィニトール®、トーリセル®

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免疫療法

インターフェロン(IFN)とインターロイキン-2(IL-2)による治療を免疫療法といいます。2008年に分子標的薬が登場するまで、腎がんの転移に対する治療はこの免疫療法が主体でした。一般に免疫療法の奏効率は15%前後です。そのため分子標的薬の出現により、現在ではほとんど使用されなくなりました。しかし、日本人は欧米人と比べ免疫療法の効果が高く、特に、肺転移に対しては有用とされています。

転移性腎がんに対する免疫療法の奏効率について表にまとめました。

種類 症例数(例) 奏効率(%) 生存期間 無増悪生存期間
IFNα単独
(2002年報告)
463 11 13ヶ月 4.7ヶ月
IL-2単独
(1997年報告)
1712 15.4
IFNα+IL-2併用 1411 20.6
日本(IFNα + IL-2併用) 42 35.7 未達 10.4ヶ月

この表からわかるように、免疫療法は分子標的薬より明らかに有効性は劣ります。そのため、免疫療法の使用は限られています。現在、分子標的薬と免疫療法の併用試験なども進行中であり、今後新しい治療として出現するかもしれません。

(文責:橋根、2013年10月)

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