四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

料理の味、診療の味:2015年7月号

先生、食べてみて!

ある日の外来です。患者さんの奥さまが、手作りのお味噌を持参です。『ご飯につけて食べると食が進みますよ』早速夕飯時に出番です。「むむ、うまい…」確かにご飯が進みます。ちょっとした酒のあてにもいいなあ。。確かに美味しかったのですが、次の機会にはお断りをしました。何故って、食が進みすぎるのです!これでは、太るのが止められません。心を鬼にしてお断りをしました。あの奥さまがこれを読んでいたなら、あらためて心中をお察し願えればと思うのです_(_^_)_

お袋の味噌作り

そういえば、お袋が作っていたなあ。以前に書いたかとは思いますが、私は、今の毘沙門坂、ちょうどロープウェーの乗り場の前のあたりで産声を上げました。当時は、自宅で産婆さんの元での出産でしたね。それはともかく、当時は、戦後まもないこともあってか、我が家の2階では味噌を作っていました。内子の山奥の出の母はいろいろと手作りをしていたのですが、私の脳に刻まれている最たるものが、味噌なのです。小さな家でしたし、庭もありませんでしたが、なんと2階があったのです。でも、住居用ではなく、主に味噌作り用でしたね。季節になると、あの独特のにおいが充満していたので鮮明な記憶として脳裏に刻みこまれているのでしょう。残念ながら味のほどの記憶はないのですが、その後の私の作る味噌汁の味の原点となっているのではないかと思っています。とは言っても、今では市販のお味噌を使うしかありませんが・・

味の原点?

私の味の記憶と言えば、とても甘いちょっと焦げた卵焼き、大学生時代、帰省が終わり岡山へ発つとき、母と父がいっしょになって必ず作ってくれた巻き寿司、そして小麦粉からルーを作るカレーがダントツですね。一方、今の我が家の味、と言うより私の味はと言えば、具だくさんの味噌汁、酢豚、ロールキャベツ、ぱらぱらにならない―と言うよりぱらぱらにできないチャーハンくらいかなあ…味噌汁には、タマネギ、人参、ジャガイモ、椎茸、豆腐、時に南瓜など入れます。栄養の面でもいいと思うのですが、ある時、娘のひと言で我が思いが打ち砕かれました。『お父さん、旅館で出るような具の少ない味噌汁が食べたい』「…」しばらくは具の少ない味噌汁を作っていましたが、なし崩し的に時々多くして、今では、再び常に具たっぷりです(^-^)そうそう、女房殿の作る味噌汁も具だくさんですよ(*^_^*)

診療にもその人の味がある

診療にもその人となりがあらわれます。私は、食道、胃を中心とした消化管外科が専門です。がんセンターに来るまでは、主に呼吸器外科に携わっていたので、消化管を専門とするにあたって、昔からの先入観に惑わされず自由な考え方をしてこられたと思っています。それを認めてくださったがんセンターの先輩方の懐の広さには頭が下がる思いです。
手術の方法といえば、いろいろな人の手術を見て、手術書を読んで、それを一ひねり二ひねりして一番良いと思ったやり方を編み出してきました。がんセンターで学んだ後輩たちには、今までで一番よいと考えた方法を教えてきたつもりです。でも、私がしてきたと同じように、彼らもまた、自分なりのさらに上を行くすばらしい方法を編み出してくれるのだろうと思っていますし、いやそうでなくてはいけませんね。
後輩たちよ、頑張れえっー!
ところで‥皆さんにはどんな味の記憶がありますか?

院長 栗田 啓