四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

元気だなあ:2014年7月号

先生!今年はジャンダルムに登ったがよ!

かわいい?おばちゃんの患者さんです。可愛く土佐弁を操りながら外来で嬉しそうに話してくれました。気分もすてきな方なのですが、登山が大好きで、手術するまでは毎年夏になると日本アルプスの名だたる山々へ登っていたそうです。胃を切りとる手術をした年は、さすがに登ることはかないませんでした。ところがです。1年たった頃、『先生、もう山登ってもえいろうか』「楽なところならいいと思いますよ」それから、また毎年アルプスの山々に登りはじめたのです。だんだんときつい登りにも挑戦していきました。穂高連峰にジャンダルムと言う頂があって、かなりな難所として知られています。この会話の前の年に、ジャンダルムを目指したけれどあいにく天気が悪くてあきらめたと言う話を聞いていました。今年は、ついに登頂したとほんとに嬉しそうに話してくれました。外来がぱっと華やいだことをよく覚えています。

実は私も

実は、私も山登りが好きで、と言っても山歩きのたぐいですが、夏休みには、お花畑を目指して、何とか高原と名の付くところによく行っています。最近では、奥志賀高原、八ヶ岳高原、上高地、乗鞍高原、旭岳、白馬大雪渓、栂池高原、高地ではありませんが、礼文、ワッカ原生花園などですね。厳しい環境の中で花咲くけなげな立ち姿にはいつも心が洗われます。どこも、近くまで公共交通機関で行くことができるところで、頂上を目指して‥といったストイックな歩きではありません。

他にも元気な患者さんがいらっしゃいます

胃の手術後とは言え、ほかにも元気な方はたくさんいらっしゃいます。そうそう、こんどは胃を全部切り取った気持ちの可愛いおばちゃんです。テニスが大好きで、毎日のようにラケットを振っています。「元気だなあ。こんなに暑いのによくやれるねえ」彼女、にっと笑って『先生、コーチがイケメンでねえ。教えてもらうのが楽しみでたまらんのよ。あのコーチがやめたらどうしょう・・追っかけていこうか』なんて調子です。この方は、胃だけでなく、胆嚢、脾臓、それに膵臓の半分も切りとっているのですが…
男性では、ゴルフが多いですね。夏には真っ黒に日焼けして、「その日焼け、どうしたの」『週に2回はコースをまわっとるんよ』内心、よくお金があるなあと思いつつ「脱水にならんように気をつけんと」『ほうよ、このあいだ、ふらふらになってのお、病院に運ばれるとこじゃったわい』やれやれ、本当に気をつけてね。
動きは余りありませんが、釣りが大好きな方もいらっしゃいます。こちらも真っ黒に日焼けです。ある日の検査結果です。「ありゃ、肝機能が悪うなっとるよ。思い当たることはないですか」『なんでかのお。釣りの時にビールは飲むんじゃが。』「どのくらい飲むの」『釣れん時は、退屈じゃけん5、6缶は飲むかのお』「350?」『いや、500よ』胃を全部切り取っていても、飲める人は飲めるのですねえ‥おっと、感心している場合ではありません!「そりゃあ飲み過ぎよ。350を2本までにしときなさいよ」それでも飲み過ぎなような気もしますが(^_^;)

ご主人は?

話を山登りが大好きなおばちゃんにもどしましょう。「ご主人と一緒に登るの?いいですねえ」『あのひとは足腰が弱いきに麓において登るがよ。主人は釣りが好きじゃき』一人で登るんだそうです。気をつけてね。
ちなみに、私の山歩きはうちの奥さんとです。たまにはけんかもしつつね(*^_^*)

院長 栗田 啓