四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

あかちゃんができました!:2012年1月号

外来でのある会話です

外来での診察の時には定期的に手術後の再発チェックの検査をします。「次の外来の時に、2年目のチェックをしようね。」『先生、実は、妊娠してるんですけど、検査大丈夫でしょうか…』「ええっ、おめでとう!で、今何ヶ月なの?」『3ヶ月です。』「じゃあ、検査は半年後だから、レントゲン検査はやめとこうね。胃カメラの検査もそう急ぐことはないから、あかちゃん、生まれた後にしよう。血液検査とおなかのエコーの検査は、あかちゃんに悪い影響はないからしておきましょう。おなかのあかちゃん、大事にね。」患者さんが診察室を出て行った後、しばらくして、あっ、本人にお大事にって言うの忘れたなあ。。。

突然の告白

胃がんになる患者さんは、年配の方、それも男性が多いのですが、時に若い女性もなります。若年層の女性に抗がん剤の治療をする時には避妊を指導するのですが、そのほかの場合には特に何も言いません。なので、このように、突然の告白!?がほとんどです。多くは妊娠してからですが、時には出産してから外来で伝えてくれることもあります。こんな具合です。
診察室へ入ってきて初っぱなに、『先生、子供ができたんですけど、連れて入っていいですか。』「それは、おめでとう。どうぞ!」この時期の赤ちゃんは人見知りしないこともあって、皆かわいいですねぇ。それが、1年たつとよちよち歩きでこけないかと心配になり、2年たつとがさごそと動き回りうるさくなり、かと思うと、3年目には、お母さんのおなかを触る場面で、目をまん丸くして心配そうにのぞき込んで、、、私は、この時わざとだまっています。子供の想像力にまかせるのです。あとで、お母さんとどんなお話しをするのでしょうね?!ところが、4年目からはなぜかいっしょに入ってこなくなります。年々変わっていく子供たちの様子もまた、再発が遠ざかっていく証拠なんだと思っています。

男は違うなあ

男性の場合はというと…手術の時には独身だった彼が、外来で、結婚したい相手ができたと報告してくれ、翌年の年賀状には奥さんの名前が添えてあり、そのうち子供ができましたと、報告してくれます。でも、子供はまず入ってきませんね。女性との大きな違いですね。なぜでしょうかね??
手術の時、26歳だった彼の場合は、ちょっと違っていました。手術後に抗がん剤の治療をしました。5年たったときに彼から相談されたのは、まず、結婚していいかでした。「全然問題ないよ。大丈夫だよ。」それから2、3年たったでしょうか。『子供を作ってもいいでしょうか。』「男性だし、年数もたっているので、絶対とはいえないけど、まず、大丈夫だよ。」2年後の年賀状には、子供ができましたとの報告。その翌々年には2番目の子供の報告。元気に育っているとのこと。ほっ(*^_^*)。主治医は内心、ものすごーく心配だったのです。

命をつなぐ

がんの手術を乗り越えて命をつなぐ赤ちゃんを授かる。すばらしいことですよね。外科医冥利に尽きますね。ご本人の命はもちろんですが、新しい命にもつながる仕事でもあるんだなと実感しました。

最後に

がんの治療は思ったようにはいかないことも多いのです。ご本人の意に沿わないこともあります。外来の”一風景”として読んでくださいね。

栗田 啓