四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

大きいことは悪いこと?:2010年10月号

大きな顔だなあ

目の前に、娘と私が並んだ写真があります。うーん、顔の大きさがずいぶんと違うなあ…毎年のように、レジデントや新人の看護師さん達と並んで写真を撮っていると、彼らの顔の大きさがだんだんと小さくなっているのに気づきます。身体は大きくなっているのにかかわらずです。かっこいいなぁ…うらやましい限りです。

明るくならない…

無影灯

写真だけでなく、手術現場で身につまされることがあります。外科手術では、術野(今、手術している場所のことです)を明るくするために無影灯という照明器具を使います。おまけの写真を見てください。電球の球が何個も、取り付けてありますよね。その角度をちょっとずつ変えることができます。それも二つもぶら下がっています。できるだけ影を作らずに手元を明るく照らすための工夫です。手術の時には、何人かの医者が助け合いながら、つまり、顔を寄せ合って小さな術野を見つめています。看護師さんが、この装置を少しずつ動かして、最高の明るさを作ってくれるのです。(このシリーズの二回前に登場した看護師さんは、「器械だし」の看護師さんですが、今回登場の看護師さんは、「外回り」と呼ばれる看護師さんです。)ところが…頭が大きいと、明るいはずの視野が暗くなってしまうことがあります。がんセンターが堀之内にあった頃の話です。わたしと、今は転勤してしまいましたが、二人の外科医が胃の手術をしていました。術野がいつもより暗いなぁ…イライラ…三人が一斉に、「暗いなぁ!ライトを調整して!」外回りの看護師さんがあちらへこちらへと照明の角度を変えてくれるのですが、一向に明るくなりません。三人とも、ちょっと頭に来て「ちっとも明るくならないじゃあないか。」そこで業を煮やした看護師さんの一言。「先生達の頭が大きすぎるからでしょう。これ以上無理です!」「…」とほほ、逆切れかよう…(-_-;)

大きいことはいいことなのだ!

ところで、昔の歌舞伎役者さん達は、皆、顔が大きいと思いませんか?彼らは、舞台の上でできるだけ目立つために、大きな顔が必須だったそうです。顔を白く塗っていますよね。あれは、顔をさらに大きく見せるためなのだそうです。照明も暗かった昔には、存在をアピールするためにも白塗りの顔が必要だったのでしょうね。ただし、これは顔を目立たせるための技、手技に際してはかえって弊害です。幸いなことに?最近の人たちはだんだんと頭が小さくなり、私一人の頭が大きくても明るい視野が保証されていますのでご安心を!(^_^)v

さて

先ほどの暗かった視野ですが、斜めから見たり横から見たりして、三人が頭をずらしながら、うまくいきましたよ。以降、この三人の手術を「巨頭会議」と言っていました。私を除いてお二人それぞれ、病院の院長として活躍されておられます。あの頭には、きっとたくさんの脳みそが詰まっていたんだろうなぁ…

栗田 啓