四国がんセンター

名誉院長エッセイ<季刊>患者の言い分、医者の言い分

言い間違い その一:2010年4月号

長嶋茂雄さんのこと…

長嶋茂雄さんのことは、皆さんご存知ですね。彼には、長嶋語録集が作れると言われるくらいのたくさんのエピソードがあります。私が大好きなことばの一つにこんなのがあります。ピッチャーを呼んでアドバイス。「いいか、変化球でカウントを稼いで、最後の決め球はカーブだ!」??迷言ばかりでなく、選手の名前を言い間違えたり、覚えていなかったり、もあったそうです。

手術場にも長嶋さんが

手術の時には、いろんな小道具を使います。代表的なものに”鉗子”というものがあります。ものをつかむ金属でできた道具です。先端が、まっすぐのものから角度のついたものまで何種類もあって、その曲がり方が微妙に違っていて、それぞれの場面で使い分けます。ところがややこしいことに、それを作り出した医者の名前がそれぞれについているのです。たとえば、ケリー鉗子とか長谷川鉗子とかです。人の名前をよく覚えることができる人と苦手な人とがいるのは皆さんご存知ですよね。外科医者も例外ではありません。手術では、医者は手術の場面に集中していて、道具を出してくれるのは通称”器械出し”と呼ばれる看護師さんです。外科医が出した手に、指示した道具を手渡してくれるのですが、自分は長谷川鉗子を頭に描いているのに「ケリー鉗子!」と言ってしまうことが時にあります。もちろん、手に取ってみれば感触でわかりますから、「あ、違った、長谷川鉗子だ!」まだ、すぐに名前が出てくればいい方で、そこは、覚えるのが苦手な人名です。ひどい?時には「うーん、、、、あれ、出して!」

器械出しに救われる

これを、瞬時に理解して”正しい"道具を出してくれるのが、ベテランの器械出しです。そういえばこんなことがあったなぁ。ずいぶんと前のお話ですが、あれは、堀之内にがんセンターがあった頃のことです。私が、執刀していました。「コッヘル鉗子!」でてきました。間違いなくコッヘル鉗子が…ところが、わたしが欲しかったのは別のものだったので、「違う!…あれ、思い出せないぞ▲●★■あれじゃぁ!」しばらくの時間が流れたあと、さしだした手になにやら柔らかいものが。「ん?なんじゃこれは。」おそるおそる手ににぎったものをみてみると、器械出しの看護師さん、よほど困ったのでしょうね、そこには看護師さんの手が…これには一同大爆笑(^-^)。一気に場が和んで、それからの手術はスムーズにすすみました。

もう一つ

私の好きな、長嶋語録をもう一つ。彼、こんどは、バッターに対して、「次の球は強打とみせかけてヒッティングだぁっ」

栗田 啓