1.腎盂・尿管がん
50-60歳に好発し、男女比は2:1です。90%以上が尿路上皮癌で、7%に扁平上皮癌(尿路結石の併発が多い)を認めます。症状は無症候性肉眼的血尿(症状のない血尿)や側腹部痛ですが、実際には症状のないことが多いです。
2.診断について
1)検尿
血尿や難治性膿尿(抗生剤等の適切な治療を受けているにもかかわらず改善しない尿路感染症)が初発症状であることがほとんどです。特に、血尿は重要で、肉眼的血尿だけでなく顕微鏡的血尿(顕微鏡検査ではじめて確認できる血尿)や尿潜血でもがんが発見されることがあります。“尿潜血だから大丈夫”などとは決して思わず、必ず専門医を受診しましょう。
2)腹部超音波検査(エコー)
血尿を認めた場合、まずスクリーニング検査として行われます。
3)CT検査
CTも広くスクリーニングとして用いられますが、エコーと違い放射線の被爆の問題があります。CTでは、腫瘍の広がりのみでなく、リンパ節や他臓器への転移の検索にも有用です。造影剤(静脈内注射)を使用することでより詳細な情報が得られます。
4)経静脈的腎盂造影
造影剤を静脈注射し、系時的に腹部レントゲン撮影をする検査ですが、CTの性能向上のためにその出番は徐々に少なくなってきています。
5)膀胱鏡
軟性膀胱鏡(胃カメラ同様の軟らかい膀胱鏡。従来の硬性鏡に比べ患者さんの負担は非常に軽いものとなっています。)を用いて膀胱内を観察します。腎盂・尿管癌の約半数に膀胱癌同時発症もしくは膀胱内再発が認められます。
6)尿細胞診
尿中の細胞を顕微鏡で検査します。細胞の形を五段階(classⅠ~Ⅴ)に分類します。classⅢから尿路上皮癌の存在が疑われ、classⅣ以上で癌の存在が強く疑われます。腎盂・尿管癌の35-80%を検出できると言われており、癌の悪性度が高くなればなるほど検出率も上がります。
7)逆行性腎盂造影
経尿道的に内視鏡を膀胱内に挿入し、膀胱内に開口する尿管の出口(尿管口)よりカテーテル(細い管)を逆行性(尿の流れに逆行するという意味です)に挿入することによって直接腎盂・尿管を造影、描出します。また、同時に分腎尿(片腎のみから採取される尿)を採取し、尿細胞診に提出します。このときの分腎尿の尿細胞診が陽性であれば、確定診断が得られたことになり治療に移ります。
右のCT症例における逆行性腎盂造影 赤三角の部位で腫瘍のため造影剤が抜けている。
8)尿管鏡
逆行性腎盂造影でも診断がつかなかった場合、尿管鏡検査を行います。これは膀胱鏡よりさらに細いファイバーを尿管内に直接挿入し、観察を行う検査です。このとき異常があれば生検を行うことも可能です。最近ではファイバーの性能向上のため診断価値が非常に上昇し、始めから尿管鏡を行うことが多くなっています。
以上の検査結果を組み合わせ、病期(癌の進み具合)が決定されます。
大きく分けて、転移・浸潤のない場合、転移・浸潤があるが手術でとりきれる可能性があると判断された場合に手術療法が、また、手術ではとりきれないと判断された場合に化学療法が用いられます。
3.治療
1)手術方法
限局性(尿路外への浸潤や遠隔転移がない)である場合、唯一の根治療法となります。
手術は、腎から尿管のすべてを切除します。尿管は膀胱内へ続いているため膀胱の一部も切り取ることになります。(尿路上皮癌は異時性・異所性多発することが多いため、腎から膀胱までの一連を切除することになります。)手術方法は開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、いずれの手術も全身麻酔下の手術となります。
開腹術 後腹膜的アプローチと経腹膜的アプローチに大別されます。リンパ節郭清が必要な場合は開腹術となります。(赤点線が切開部位。緑が摘出する腎~尿管~膀胱の一部)
腹腔鏡手術 リンパ節郭清が不要と思われる手術で適応となります。腎~中部尿管までを腹腔鏡により切除し、下腹部正中切開(臍と恥骨の間をまっすぐ縦に切開します)にて下部尿管の剥離、膀胱の部分切除を行います。創が小さく、術後の痛みも比較的軽いです。
→→→→→→→→ 手術の説明 
2)化学療法
抗癌剤を用いた治療です。腫瘍が進行性であった場合や、転移・再発を起こした場合に施行します。また、手術の根治性を高めるために術前に行われる場合もあります。
一般的に行われる化学療法はM-VAC療法とGC療法の2つがあります。
①MVAC
4種類の抗癌剤(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアシン、シスプラチン)を使用します。
②GC
2種類の抗癌剤(ジェムザール、シスプラチン)を使用します。この治療は比較的新しく、M-VACより副作用が少ないため、最近ではこの治療の方が多くなされています。
4.予後について
疾患特異的5年生存率 (死亡原因を腎盂・尿管癌のみに絞った場合の生存率)は次のように報告されています。
| 上皮内癌 |
90-100% |
| 表在性 |
80-90% |
| 筋層浸潤 |
40-70% |
| 周囲組織浸潤 |
20-40% |
| 隣接臓器への浸潤・転移例 |
5% |
進行するととても予後が悪くなります。
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