腎がんに対する抗がん剤や放射線治療はほとんど無効です。一方、その発生や進行が、宿主の免疫能と非常に関係することが示されており、現在まで様々な免疫療法が行われてきました。本項目では、最も一般的に使用されているインターフェロン(IFN)とインターロイキン-2(IL-2)によるサイトカイン療法について説明します。
サイトカイン療法の適応は、有転移症例や切除不能腎がんです。有転移症例では、原発巣の切除が生存期間の延長に寄与することが前向き無作為化試験で証明されています。(図15)したがって、切除可能であれば、原発巣の治療を施行した上でサイトカイン療法を施行するのがよいと考えられています。サイトカイン療法により腫瘍が50%以上に縮小する効果は、10-20%の症例に限られているのが現状です。しかしながら、サイトカイン療法が生存期間の延長に寄与することは2つの前向き無作為化試験で証明されており、分子標的薬が出現するまでは、有転移症例に対する標準的治療に位置づけられていました。
1) インターフェロン
インターフェロンの抗腫瘍効果の仕組みは2つ考えられています。1つは、リンパ球などの免疫担当細胞を活性化し、そのリンパ球が腫瘍細胞を破壊するという作用で、もう1つは、インターフェロン自体が腫瘍に直接作用して破壊するという作用です。
現在治療に用いられているインターフェロンにはαとγがあります。多く使用されているのはαの方で、その中にも遺伝子組み換え型と自然型があり、効果が異なるという報告もあります。
インターフェロンαの効果については、進行腎がんに対する治療として、「インターフェロンα投与群とメドロキシプロゲステロン投与群の2群における前向き無作為化試験」、および「インターフェロンα+ビンブラスチン併用投与群と、ビンブラスチン単独投与群の2群における前向き無作為化試験」において、インターフェロンα投与群の方が、近接効果、非進行生存率、全生存率の全てに関して優れた結果でした。すなわち、インターフェロンα療法が進行腎がんに対して有効であることが証明されています。
投与方法は、1日1回300~1000万IUを皮下あるいは筋肉注射です。週2から5回投与するのが一般的ですが、副作用の個人差が大きく、症例によって用量を調節します。なお、治療の便宜を図るため、自己注射が保険で認められており、外来治療が可能です。
インターフェロンαの投与によって、インターフェロン本来の生理作用として、多くの患者で、いわゆるインフルエンザ様症状がみられます。ただし、この症状は次第に“馴れ”が生じ、徐々に発熱がなくなり、解熱剤なども不要となることが多いです。また、その他にも多彩な生理作用を有することで、多くの有害事象が知られています。これらの副作用の発現時期にはある程度特徴があり、また、インターフェロンの投与を中止することで軽快するものがほとんどです。なお、小柴胡湯との併用による間質性肺炎の報告があり、併用禁忌となっています。副作用と発現時期について(図16)に示しました。
2) インターロイキン2(IL-2)
インターロイキンの抗腫瘍効果の仕組みは、インターフェロンと違い、リンパ球などの免疫担当細胞を活性化し、そのリンパ球が腫瘍細胞を破壊するという作用が主で、腫瘍への直接作用は考えられていません。
インターロイキン-2の効果については、前向き無作為化試験は行われていません。欧米での第Ⅱ相試験での奏効率は14%でした。特筆すべきは、5%のCR(完全に腫瘍が消えてしまうこと)を得られた患者、および治療後の腫瘍切除によってCRとなった患者は、長期生存が得られているということです。このことは他のサイトカイン療法や最近開発された分子標的薬にはない特徴とされています。ただし、欧米で行われているインターロイキン-2の治療は、非常に高用量のインターロイキン-2の投与で得られた結果であり、我が国の保険適用限度である1日210万単位の数十倍を使用しています。投与量に比例して有害事象も強くなるため、欧米での高用量の投与法では外来や一般病棟での管理は困難であり、集中治療室で行うことが多いようです。
毒性軽減のため、投与量の減量や投与方法の変更についても考慮されてきました。投与量については、高用量と比較して、低容量では、奏効率、奏効期間ともやや劣る結果でした。投与方法については、静脈注射、皮下注射のうち、皮下注射において副作用が少なかったとの報告があります。
日本での投与方法は、1日1~2回合計70万~210万単位を2時間かけての点滴投与です。残念ながら我が国では皮下注射は認められていません。少ない量から開始し、副作用を確認しながら、徐々に投与量を増加していきます。連日投与が理想ですが、副作用の個人差が大きく、症例によって投与量や投与日を調節しなければなりません。
副作用として発熱、悪寒、関節痛といったインフルエンザ様症状がみられます。インターフェロンと異なる点は、“馴れ”が生じることはなく、回数を重ねても発熱は同様に出現することです。また、毛細血管漏出による症状として、体液貯留・体重増加・うっ血性心不全・浮腫・低血圧・呼吸困難、血管外漏出症候群などが起こることがあります。抑うつ、自殺企図にも注意が必要です。(図17)
3) その他の治療
サイトカイン療法の奏効率は15%前後にとどまっているため、奏効率の向上のため、様々な併用療法も試みられています。1つは、インターフェロンαとインターロイキン-2を併用する方法で、高い奏効率を示した報告もあります。また、抗がん剤との併用療法として、インターロイキン-2+インターフェロンα+5-FUの3剤併用療法が報告されており、奏効率30%以上と良好な成績を示しているものもあります。しかしながら、これらの成績は施設によってばらつきがあり、いまだ確立された治療法はないのが現状です。転移性腎がんに対する免疫療法の奏効率について(図18)にまとめました。
4) 今後の展望
腎がん有転移症例、切除不能症例に対して、2008年から分子標的薬が使用できるようになりました。これによってサイトカイン療法の位置づけは大きく変わりました。欧米での治療ガイドラインでは治療の第一選択薬はいずれも分子標的薬になってしまい、サイトカイン療法は今やオプションになっています。今後も新しい分子標的薬の出現が予定されており、サイトカイン療法はますます出番がなくなってしまいそうです。しかしながら、欧米と比較し、本邦での腎癌有転移症例の予後はよいとされ、欧米とは違った治療戦略ができるかもしれません。
|