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膀胱がんとは

 

1.膀胱がんについて     2.膀胱がんの診断について     3.進行度(臨床病期について     4.治療について

 
 

1.膀胱がんについて
①膀胱の場所(解剖、組織について)

膀胱の場所

膀胱や尿管、腎盂の内腔は尿路上皮という細胞で覆われています。この尿路上皮とよばれる細胞から発生したがんが尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)です。

②疫学
人口10万人あたり毎年約17人発生し、それほど多いがんではありませんが、年々少し増加の傾向にあります。男女比では女性より男性に多く、女性の約3倍多いといわれています。多くは50歳以上に発生しますが、若年者にもときにみられます。

③原因
原因の明らかな膀胱がんは少なく、ほとんどの膀胱がんは自然発生です。その機序についてはまだ十分にはわかっていませんが、最近遺伝子レベルでの変化が明らかにされつつあります。危険因子として、喫煙があげられ、喫煙者は非喫煙者に比べて4倍程度発生率が高いといわれています。また芳香族アミンなどの染料と膀胱がんとの関係も深く、このような化学物質を扱う職業の人に好発することが有ります。
 

2.膀胱がんの診断について
①症状
初期症状として多くみられるのは血尿です。肉眼で確認できる血尿(肉眼的血尿)のこともあれば、顕微鏡ではじめて確認できる程度の血尿(顕微鏡的血尿)のこともあります。血尿は痛みなどを伴わない場合が多く、初期では突然出現し、自然に消失します。腫瘍が進行してくると、頻尿、排尿痛、残尿感といったもののほか、尿路感染、尿管口の閉塞による腎機能の低下なども起こります。

②検査
膀胱がんの発見のための検査、及び診断後、がんの広がり具合をみるための検査があります。これらの検査により膀胱がんがどの程度進行しているかを確認し、治療方針の決定をします。

A. 膀胱内視鏡検査 (ファイバースコープ)
膀胱の中を内視鏡で観察します。膀胱がんの診断には最も大切な検査です。尿の出口(尿道口)から柔らかく細い内視鏡(軟性膀胱鏡)を挿入します。通常検査に要する時間は数分です。
 
 
 
 

B.レントゲン検査
尿路(腎盂、尿管、膀胱)を明瞭に映すために造影剤を点滴しながら写真を撮ります。膀胱内のがんの大きさや腎盂、尿管のはれ(水腎症といいます)がわかります。  
 

C.CT・MRI検査
原発巣の深達度やリンパ節転移の有無の診断に有用です。

 

 

 

D.組織検査について
内視鏡で確認された腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で診断します。(多くの場合、後述される治療の一環として入院後なされます)
 

3.進行度(臨床病期)について

進行度

1.上皮がん
膀胱粘膜壁にそって悪性度の高いがん細胞が存在している状態です。表在性のがんですが、無治療でいると進行していきます。

2.表在性膀胱がん
がんの病巣が、膀胱の粘膜にとどまっているものです。約70%の膀胱がんはこのタイプで、通常転移や浸潤はありません。

3.浸潤性膀胱がん
粘膜を貫いて膀胱の筋層にまで達したがんです。膀胱外の臓器(直腸など)へ浸潤しやすく、また転移しやすい特徴があります。

4.転移性膀胱がん
膀胱以外に、リンパ節あるいは肺、骨などの他臓器への転移を認めるがんです。
 

4.治療について
進行度(臨床病期)に応じて治療法が決定されます(このため正確な診断が必要です)。

①上皮内がんの治療
上皮内がんは膀胱粘膜内のがんですが、隆起性病変を作らないため表在性膀胱がんと違って内視鏡的に完全に切除するのは不可能です。以前は膀胱を全て摘出する(全摘)必要がありましたが、現在はBCGを膀胱内に注入する治療が第一選択です。
BCGは弱毒化した(抗原性を失うことなく病原性を少なくした)結核菌で結核予防のための抗結核ワクチンです。これが上皮内がんに有効であり、この治療が始まってからは、膀胱全摘をはじめからする必要はなくなりました。
上皮内がんに対するBCG膀胱内注入療法により、80~90%でがんが消失します。実際の治療法は、尿道口(尿の出口)から細くて柔らかいカテーテルを膀胱内まで進め、カテーテルからBCG薬液を膀胱内に注入します。2時間程度、排尿をがまんしていただき、その後排尿してもらいます。膀胱内注入療法の多くは外来通院でできる、安全性の高い治療法です。しかしながら30~50%に膀胱刺激症状(尿が近い、尿が我慢できない、排尿時に痛みがある)が出る場合があります。また、血尿(15~30%)、発熱(20%)、膀胱容量の低下(0.1~1.0%)などの症状がでることもあり、注意が必要です。

→→→→→→ BCG膀胱内注入の説明 PDF

 

②表在性膀胱がんの治療について
標準的治療は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)です。
手術器具

これが手術に使う器具です。 これを尿道から膀胱内に入れます。 
先から電気メスがでてきてがんを 削り取ります。

治療

表在性膀胱がんは通常、開腹手術は必要ありません。内視鏡を使った手術で治すことが出来ます。腰椎麻酔(半身麻酔)下に手術を行い、当日はベッド上安静になりますが、翌日より食事を開始し、歩行も可能です。おおむね1週間の入院となります。しかし、表在性膀胱がんでは治療を受けたあとに50~80%が膀胱内に再発します。また10~20%は浸潤がんに移行します。このような点から、内視鏡的治療の後に膀胱内に抗がん剤やBCG(結核菌)などを入れ、再発予防を行う場合があります。再発予防を行うか否か、どのような再発予防方法を選ぶかは、手術で切除したがん組織を観察し決定します。
表在性膀胱がんでは他臓器への転移をおこすことはまれであり、表在性膀胱がんが原因で死亡することはほとんどありませんが、再発の可能性はありますので再発腫瘍を早期に発見するためにも、手術後は3ヶ月毎の内視鏡検査を行う必要があります。

 

  →→→→→→→ TUR-Btの説明 PDF  T1highの説明 PDF
 

③浸潤性膀胱がんの治療について
A.手術(膀胱全摘除術)について
浸潤性膀胱がんやBCG治療抵抗性の表在がんの標準的治療法は膀胱全摘除術です。

尿路解倍図

男性の場合は膀胱・前立腺を摘除しますが尿道にもがんがあれば尿道も取ります。
女性の場合は膀胱・尿道・子宮(卵巣)・膣の一部を摘除します。
同時に骨盤リンパ節も摘出し、治療とともに微小なリンパ節転移がないか診断もします。
尿を貯める膀胱を摘出しますので、尿路変向術(尿の出口を作成)が必要になります。(次頁)
術後、2~3週後に摘出した標本の病理診断(顕微鏡検査)が出ます。その結果により補助療法が必要な場合もあります。
手術で摘出すれば治療は終わりではありません。浸潤がんの一番の問題は再発、転移です。このため定期受診が非常に重要です。

尿路変向
尿路変更はいくつか存在し、主に禁制型尿路変更(尿をためることができる)と失禁型尿路変更(尿をためることができない)に分かれます。失禁型尿路変更では身体に集尿袋を貼り付けることが必要となります。それぞれ利点、欠点があり、また病状によりすべての方法が選択肢となるとは限りません。

尿管道設術

 

 

回腸導管

自排尿型新膀胱

尿管皮膚ろう

 利 点

ほぼすべての人に適応。

自分の尿道から排尿できる。
集尿袋が不要である。

腸を切らない。
手術時間が短い。

 欠 点

集尿袋を一生つけなければならない。

尿道摘除の必要な人は適応外。女性も適応は慎重。夜間の失禁が問題。

集尿袋をつけ、尿管チューブを挿入し、月に一度交換が必要。

上記にはありませんが、腸でおなかの中に袋を作成し、臍とつなげて袋に尿が貯まると自分で導尿する、自己導尿型尿路変更というのもあります(集尿袋もいらず、見た目には手術の傷しかわからない)が近年はあまり行われていません。

尿路変更
 

→→→→→→ 膀胱全摘除術の説明 PDF 

B. 動注化学放射線療法(膀胱温存療法)
浸潤性膀胱がんに対する標準的な治療は、先に説明した膀胱全摘除術です。しかし、膀胱全摘除術を行うと尿路変更が必ず必要となり、ライフスタイルの変更が必要になることもあり、生活の質(QOL)の低下が心配されます。そのため、最近では症例を選択して膀胱温存療法が試みられることがあります。当科では20年以上前から膀胱温存療法に取り組んできました。当初は1種類の抗がん剤(アドリアシン)と放射線治療の組み合わせで治療を行っていました。この治療での治癒率(がんが完全に消失する割合)は約60%でした。1992年より2種類の抗がん剤(ランダとテラルビシン)と放射線を併用する治療法に変更して行ってきました。これまでに約100症例に対してこの治療を行い、治癒率は約90%でしたが、その後約25%に再発を認め、5年生存率は67%でした。これまでの治療経験からいくつかの問題点が明らかとなりました。
一つめは膀胱温存療法の適応基準が明らかになっていないことです。つまり、治療前に膀胱温存が可能かどうか予測することができないのです。また、一口に膀胱温存療法といってもその方法はまちまちで、定まった治療法がないのも問題点の一つです。当科では抗癌剤の動脈内投与を非選択的に行ってきましたが、この方法は一般的ではなく多くの施設では超選択的動脈内投与を行っています。また、海外では動脈内投与ではなく静脈内投与がなされています。治療中および治療後の副作用(合併症)も大きな問題で、80%以上の人に何らかの副作用が生じ、その対応に苦慮した症例もあります。確かに、膀胱温存療法でがんを克服された方も多くいますが、上に述べたような問題点からどうしても研究的な治療の段階でありエビデンスの獲得には至っていません。また、最大の問題として抗がん剤の動脈内投与に関して保険適応がないため一般診療としては出来ないことになりました。そのため現在はこれまでの方法は中止し、温存を希望される方は大学を紹介することにしています。
 

膀胱温存療法と膀胱全摘除術との比較

 

膀胱温存療法

膀胱全摘除術

 長所

開腹手術をしなくてよい。
がんが治ったあとも、自分自身の膀胱で、排尿ができる。

現在の標準治療である。
顕微鏡でのがんの進行度がわかる(たとえばごく小さなリンパ節転移など)。手術をしてがんを克服したという実感がある。

 短所

手術と比べ治療期間が長い。
抗がん剤や放射線の副作用が現れる可能性がある。

尿路変更が必要となる。
手術の合併症が現れる可能性がある。

 がんの治る確率

当科では5年生存率(5年間がんで亡くならない確率)は約70%。施設によって治る確率はかなり違っています。

多くの施設で(特にアメリカ)進行度毎に成績が報告されている。5年生存率は一般には60~70%です。

起こりうる合併症
★抗がん剤によるもの
骨髄抑制:骨の中(骨髄)で血液の成分(赤血球・白血球・血小板)を作っていますが、抗がん剤によるダメージから血液の成分が作られなくなり、各成分が少なくなります。特に白血球は細菌を殺す役割をしており、そのためこの成分が少なくなると命に関わる一大事となることがあります。十分な注意が必要です。
吐き気などから食事が進まなくなることがあります。
そのほかに脱毛、足のしびれ、などが起こることがあります。

★放射線によるもの
刺激症状:膀胱と直腸に起こりやすく、頻尿や排尿痛、排便回数の増加や違和感が出現することがあります。ひどくなると出血を認めたり、狭窄(細くなる)や潰瘍などを引き起こすこともあります。また、放射線の障害は長期間持続することがあります。
 

④転移のある膀胱がんの治療について
診断時すでに転移のある場合や治療後に転移が出現したときは、手術でがんを取り除くことはできません。このような場合は抗がん剤による治療となります。
 
 

 

膀胱がんで転移をきたしやすい場所は肺、リンパ節、肝臓、骨などです。抗がん剤には①メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの4種類を組み合わせた治療と、②シスプラチンとジェムザールの2種類を組み合わせた治療の2通りがあります。現在は②の治療が主流ですが、この治療を28日ごとに行い、最低2-3コース行います。
一般的に膀胱がんの場合、肺やリンパ節転移は抗がん剤が効きやすく、骨や肝臓は効きにくいとされています。
抗がん剤の治療で効果を認めない場合や、体力的に抗がん剤治療が難しい方には、がんによる症状を和らげる緩和治療、精神的ケアなどを行い、QOL(生活の質)の向上に努めます。

→→→→→→→ GC同意書 PDF
 


         
 
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